多くのレシピでは「炒める」という表現が使われるが、実際にはヘラなどで練り混ぜながら加熱すると言った方がイメージしやすいかもしれない。こうすることにより、溶けたバターの中で小麦粉の粒がバラバラになり、油脂でコーティングされた状態になる。そのため、牛乳を加えたときに全体に散らばりやすく、粒同士がくっつきにくくなるのだ。

さらに、ダマを防ぐのに一番重要なのは、牛乳を加えるときの温度だ。デンプンの糊化に必要なのは、デンプンと水、それから熱。したがって、鍋とホワイトルーが熱い状態で牛乳を加えてしまうと、小麦粉が牛乳の中に散らばる前にこの3つがそろってしまうため、小麦粉の粒同士が糊化しながらくっついてダマになってしまう。

小麦粉のデンプンは58度で糊化を始めるので、鍋とルー、それから牛乳がそれよりも低い温度になるように調節して混ぜ合わせると、デンプンが糊化せずにソースの材料を合わせることができる。温度が下がりすぎるとバターが固まって混ざりにくくなるので、バターが溶けてデンプンが糊化しない40~55度の間になるよう調節しよう。

小麦粉をバターでよく炒めてホワイトルーができたら、フライパンや鍋を一度コンロからおろし、ぬれふきんの上に置いて冷ます。牛乳は55度前後、ホットミルクとして飲めるぐらいの温度に温めておこう。電子レンジの温度設定機能を使うと便利だ。ルーとフライパンが冷めて、触れると温かいくらいの温度になったら、牛乳を加えてのばす。はじめはルーと牛乳の濃度差があって混ざりにくいので、5分の1程度まではごく少量ずつ加えるとうまくいく。

牛乳を加え終わった時点では、まだデンプンが糊化していないので、ソースはサラサラの水っぽい状態だ。これを再び火にかけて温めていくと、60度を過ぎたあたりから徐々にとろみがついてくる。糊化していない小麦粉は、片栗粉のように沈んでしまうので、優しく混ぜながら温める。混ぜずに温めると、底の方がどろっとしたかたまりになってしまう。ふつふつと沸騰してきたら弱火にし、さらに5分ほど煮れば、デンプンが十分に糊化してとろりとなめらかなソースが完成する。

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メイラード反応で香ばしく

小麦粉をよく炒めると、デンプンとタンパク質がメイラード反応を起こす。これはパンや焼き菓子、肉料理が焼けるときのよい風味を作り出している反応で、ソースに甘くて香ばしいにおいを付けてくれる。

温度が上がりすぎるとソースが褐色に色づいてしまうので、ごく弱火でよく混ぜながら炒めるのがポイント。はじめはぼってりとしているのでダマが心配になるかもしれないが、そのまま5~10分程度加熱すると、サラサラと流れるような状態に変わる。そのタイミングで火を止め、ぬれ布巾で冷まそう。

(科学する料理研究家 平松 サリー)

[NIKKEI プラス1 2021年12月18日付]