
菌をやっつけるための加熱で気を付ける点は何か。牛肉の場合、菌が存在するのは主に肉の表面だ。表面をしっかり焼くようにすれば、ステーキもレアで食べられる。
ただし同じ牛肉でも細かい肉を固めた成型肉、調味液を染みこませた加工肉、ひき肉になると、表面に多い菌が内部にまで入り込んでいる可能性がある。しっかりと中まで火を通すようにしたい。とりわけ食中毒への抵抗力が弱い子どもや高齢者がいるときは念入りに加熱しよう。
豚肉や鶏肉では腸内に菌を持っているケースが目立ち、加工の過程で内部に菌が残っている可能性がある。生焼けで食べるのは避けたい。
肉の中心温度が75度以上になるように1分以上加熱すれば、菌は死滅するとされている。ただ分厚い肉を焼き慣れていないと、今どれくらいの温度か分からないだろう。そこで肉の中心温度を測れる料理用温度計を用意するとよい。家で調理するときにも意外に役立つ。デジタル表示であれば温度も確認しやすい。
肉や魚などの食材が余ってしまうケースもあるだろう。ただ保管状態が悪いまま持ち帰ると、菌が増殖して食中毒のリスクが高まる。なるべく使い切るようにしたい。楽しい時間は警戒心が緩みがちになるが、対策をおろそかにせず、安全に楽しもう。
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肉の焼き方「温度」を意識

肉の焼き方の基本も知っておきたい。クーラーボックスから取り出すのは焼く少し前にして、常温で日陰の涼しい場所に置いておく。肉の外側と中心部との温度差が少なくなるため、むらなく火が通る。
牛肉は強火で片面を1分半程度、両面焼く。その後は弱火で好みの焼き具合になるまで加熱していこう。豚肉や鶏肉は中心温度が75度以上になるようにして1分以上加熱するのが基本と紹介したが、80度以上になるとかたくなってしまうので要注意。適温を見極めるためにも、料理用温度計があると便利だ。
(アウトドアライター 牛島 義之)
[NIKKEI プラス1 2022年7月9日付]