2021/11/14

ポリ袋で醸造するので大規模投資は不要。金属製タンクは醸造した後の洗浄作業が大きな手間だが、食品製造用のポリ袋は使い捨てで省力化も図れる。一度の醸造が50~200リットル程度の小規模なクラフトビール会社にはもってこいの製法だ。

冷蔵庫に入れたポリ袋に麦汁などを入れて醸造する

特許などは取得せず、醸造法はオープンにした。「ビール業界は様々な会社がレシピを公開するなど開けた業界だから」と山口さん。そのため同社で学んだ人など、石見式醸造法は日本各地の50社程度に広がっている。

ワインはぶどう、日本酒だと酒米や酒こうじという素材の制約があるが、ビールは麦芽などのほかに副原料として様々な食材が使える。副原料によって味も香りも色も千差万別。「自由な発想で取り組めるところに面白さがある」と語る。

定番シリーズは8種。県西部の石見地方産のシークワーサーや夏みかんを使った「セッションIPA」は、爽やかな香りの中にしっかりした苦みがある。米を加えた「セゾン」はすっきりした味わいが特徴だ。

このほか安納芋やいちじくなどを用いた石見神楽シリーズ5種類や生ビールなど、常時20種類以上用意している。温泉リゾート「風の国」には、本館のほかコテージ、グランピング施設もある。湯上がりの一杯を楽しみにやってくる宿泊客などで週末を中心ににぎわう。

温泉リゾート「風の国」。本館のほかコテージやグランピング施設もある

「大きな施設を持った醸造所だと週に1回程度しか醸造しないところもあるが、うちは年間300日ほど醸造する。だから、まだ始めて6年だが、いろんなノウハウが蓄積できている」と山口さん。業界に革命を起こした島根の小さな醸造所の挑戦は続く。

(松江支局長 鉄村和之)

[日本経済新聞電子版 2021年11月4日付]