日経MJ

「ホワイト」と「スタンダード」、今春ブランド拡張

EC専業のブランドにするにあたり、1シーズンに展開する商品数は同社の別ブランドに比べて絞っている。スマホをスクロールしながら商品を見ることを考えると、商品数が多すぎないほうが選びやすいという考えからだ。

店舗を持たないメリットは、固定費を抑えられることだけではない。「商品の先行予約や再入荷リクエストなどの数で消費者の反応を見ながら追加生産の計画を立てられる」(国府さん)のも利点の一つだ。

だが一方でデメリットもある。やはり、消費者が実物の商品を手に取る機会が少ないことだ。そのため、SNSなどを活用して消費者との接点作りに励む。国府さんは「他ブランドに比べると、SNSのエンゲージメントが想像以上に高くて驚いた」という。

今後は「サンプル品を見てもらえるなど、ブランドに触れてもらうリアルの場を作ることも検討していく」という。

今春からは裾野を広げるため、ブランド内に2つのラインを用意。引き続き東原さんがディレクターを務め、さらにこだわった商品を展開する「ホワイト」と、単品使いできるブラウスやパンツなどをそろえた「スタンダード」だ。

また、洋服に合わせられるアクセサリーの販売も開始。今後は小物などの展開も増やしていく計画だ。国府さんは「『アンクレイヴらしさ』を忘れずにブランドを広げていきたい」と意気込む。

若年層を中心にネット通販で洋服を買うことへの抵抗感は薄れており、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛もその流れを後押しする。最近では、SNSなどをきっかけに洋服を買う動きも定着しつつある。老舗メーカーならではの企画力や生産ノウハウを生かしつつ、新たな顧客を取り込めるか。注目が集まりそうだ。

(長田真美)

[日経MJ 2022年1月28日付]