録音してシェアせよ

もう1つ、覚えておきたいのが権力の本質だ。権力は「集団の目的のために使うことによって得られる」。逆に言うと、個人的な地位の追求や執着のためでは、大きな力を発揮しない。

本書の終盤で、こんなエピソードがある。アメリカ空軍の掲示板に、黒人士官候補生への人種差別的な殴り書きが見つかった。軍の中将を務める人物は、5,500人の学生・教職員の前に立ち、スマートフォンを取り出させた。そして今から伝える自分のメッセージを録音し、シェアして語り合えと言った。「尊厳と敬意をもって人に接することができない者は出て行け」。

この動画は「ジェイ・シルヴェリア(Jay Silveria)」の名で、動画投稿サイト「You Tube」で見ることができる。集団のために個人的リスクを引き受ける姿勢や行動が、権力のもっとも大きな源泉になる、とは著者の主張の柱だ。つまり権力は正しく使えば他者や集団を勇気づけるもの。他者の力になりたい人は、米国のエリート学生だけではないはずだ。

今週の評者 = 安藤奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

スタンフォードの権力のレッスン

著者 : デボラ・グルーンフェルド
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 1,980 円(税込み)

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