薄着の季節「チラ見えNO!」 便利グッズで安心
「見た目は『パンツみたい!』と思ったけど、便利そうだと思って買いました」。都内の会社員の吉池夏実さん(23)が5月中旬にインターネットで購入したのは「胸元ラインカバー」だ。トップスの下にキャミソールを着ているように見えるが、実は胸元に付けているのは小さな三角形の布。ブラジャーの肩ひもに付けると、胸元の開いたトップスを着たときに、胸の谷間や下着のチラリを防ぐグッズだ。
昨年フリーマーケットで購入したというワンピース。「胸のあきが思ったより大きかった。下にもう1枚着るのは暑いし、これで着られる」と満足げだ。
1歳半の娘のいる会社員の戸田幸子さん(34)も「子どもに首もとを引っ張られたり、抱っこしようとかがむときに、気にせずに済む」。
千趣会の「ベルメゾン」ではこの胸元カバー(813円~)を2012年から取り扱い、すでに10万枚売った。1年で数千枚売れればヒットという中で「異例の大ヒット。女性がオフィスでも様々な服装になり、働く30代の購入が多い」。
同様の機能を持ちながら、アクセサリーに見えるものも登場。フェリシモの雑貨カタログ「クラソ」で今春夏に発売した「ちら見えストップネックレス」(2268円)は、一見かわいらしい花のネックレスのよう。
ペンダントトップの花の部分にはクリップが付いており、洋服の胸元部分を挟むことで胸のチラリを防ぐ。ブラジャーの肩ひも部分を覆い、見えても下着に見せない「ブラストラップカバー」(2366円)も人気商品だ。
胸だけでなく、わきも気になるところ。オンワード樫山が「自由区」で今春夏初めて投入したのがわきのチラ見えを防ぐトップス(スカートとセットで3万1212円)だ。腕を上げたときに、トップスと同素材の布が袖口の内側にあてがわれていることで短い袖でもわきの下が見えにくい。
袖ぐりが大きいと腕が細くみえる効果があるが、その分わきは露出しやすくなる。そんな悩みを解決し「複数購入も目立ち、想定を上回る売れ行き」(同社)だ。
「人に見える見えないというよりは、自分自身が落ち着かないので、隙間はふさいでおきたい」(吉池さん)。「何より安心感がある」(戸田さん)。こうしたアイテムを利用する気持ちは、男性の視線を意識してというより、自分のためだ。
若いほど露出に抵抗がなさそうだが、購入者の中心は20~30
代と意外に若い。「30代以下は女性らしいスタイルが苦手」。ファッションジャーナリストの宮田理江さんはこう指摘する。40代以上は「ボディコンも知っているし、ローライズのジーンズブームでも主役だった。セクシーな露出にも抵抗が小さい」。
一方、この20年で職場の服装の自由度が増し、ファストファッションも登場するなど、装いはぐっとカジュアルになった。「そんな環境で育った世代は『女』を感じさせるような着こなしをするのはあざといというイメージがある」。女性同士の視線が気になる。
また「若い世代はおしゃれに関して積極派と無難派の二極化が強まっている」(宮田さん)とも。この数年、襟ぐりの大きくあいたUネックのTシャツや、今夏もおなかが見えるショート丈のトップスが流行している。「無難派はそのブームを見て、かえって『ああいう露出はいやだ』という意識をもつようになっている」という。チラリを埋める女性たち。夏の女性の"すきま"には様々な思いが詰まっている。(井土聡子)
[日経MJ2014年6月16日掲載]
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