2013/6/28
21世紀職業財団の会長も務める岩田喜美枝氏

日本でもクオータ制導入を呼びかける声があるが、経済界には反対の声が多い。米シカゴ大の山口一男教授もまた「日本にはまだ役員候補となる女性が少なすぎる。クオータ制で『結果の平等』を目指すと無理が生じる」として、「見える化」により変化を促すべきだとする。参考となるのが、韓国の取り組みだという。韓国では従業員500人以上の企業に対して、女性雇用比率や管理職比率など現状データの提出を求め、同業種の平均値60%未満の企業に対して改善計画を立てるように指導した。この「積極的雇用改善措置」により、2006年以降は女性管理職比率が毎年約1ポイントずつ上昇している。

資生堂顧問の岩田喜美枝さんもまた、「クオータ制は日本で受け入れられる可能性はほとんどない」とした上で、違う形での「数値目標」策定を提案する。次世代育成支援対策推進法のもと、ある一定規模の企業に対して女性管理職・役員の育成計画づくりを義務付けるものだ。「そうすれば社長管轄のテーマとなり、経営課題として取り組むことになります」

そもそも女性役員の候補がいない

図3 総務省「労働力調査」(2012年)、独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2012」より作成。日本は2012年、その他の国は2010年のデータ。「管理職」の定義は国によって違う。日本は、会社役員、企業の課長相当職以上、管理的公務員を指す

「女性役員1人」という目標は危険だという声も上がる。1人だと、その人が「女性代表」と見られかねない。

理想を言えば「3人以上」だろう。女性役員も3人いれば三者三様、性差のみならず個性による違いが現れる。1人だけが目立ってつぶされる危険もなくなる。しかし今は候補となる人材が払底している。まずは1社に女性役員1人という目標が、最初の一歩としては現実的かもしれない。

資生堂顧問の岩田さん(前出)は今、キリンホールディングス社外監査役、日本航空社外取締役も務める。いずれも役員会では紅一点。「1人だとつぶされかねない」という意見には、自身の経験から反論する。役員会の人数を絞り込んでいる今、多くの企業はお飾りの女性役員を置く余裕などない。「女性役員を入れて、議論を変えたいという経営の意思を感じる。とにかく意見を求められるから、1人でも臆することはない」と言う。

今回の成長戦略に掲げる「女性役員1人」は、執行役員、取締役、社外取締役などのいずれかを指す。男女雇用機会均等法の施行から27年、当初から女性総合職を育ててきた企業ならば「役員適齢期」の女性管理職がいてもおかしくはない。しかし、「生え抜きの女性役員を誕生させたいものの、そのレベルの人材がまだ育っていない」とは、企業からよく聞かれる声だ。日本の女性管理職比率は、現在11.1%。欧米先進国が30%超なのに比べると、まだまだ役員候補となる管理職さえ少ないことが分かる(図3)。

らでぃっしゅぼーや代表取締役社長に就任した井手明子さん。1977年に日本電信電話公社へ入社。2006年からNTTドコモの執行役員

NTTドコモ執行役員で、この6月にグループ内の食材宅配会社らでぃっしゅぼーや社長に就任した井手明子さんは、「ポストが人を育てる」として、後進の女性管理職に次にどんな仕事を任せるか、人事の相談にのる。女性管理職を育てるために座学の研修を重ねても、実務能力は磨かれない。異動を重ねながら、より難度の高い仕事に就ける。人事と上司が連携しながら育成計画を進めることが、女性役員候補を育てていくことにつながる。

「役員候補となるような女性部長はいないのですか」

資生堂の取締役時代、岩田さんは繰り返し現場に問いかけた。役員候補となる部長十数人を選抜して研修を行うにあたり「ほっておくと、研修に呼ばれる女性はゼロになってしまう。女性を複数入れるためには働きかけが必要なのです」。入社時には優秀だった女性でも男性社員に比べると仕事で経験を積む機会が限られたケースが少なくない。長年の積み重ねで開いてしまった「差」は「育成機会の優遇」で埋めるしかない。女性の役員候補を育てるには、経営が意思をもってトップダウンで進めることが不可欠だという。