5製品を徹底比較、無料オフィスでさらにお得
格安ノート購入ガイド(下)
今回、戸田氏が比較検証する格安ノート[注1]5製品は、エプソンダイレクトの「Endeavor NY2200S」、デルの「Inspiron15」、日本エイサーの「Aspire AS5349-F82C」、日本ヒューレット・パッカード(HP)の「HP Pavilion g6-1301 AU」、マウスコンピューターの「LuvBook Fシリーズ LB-F301B」。エプソンダイレクト製品だけ液晶が14型で、搭載OSはWindows(ウィンドウズ)7の32ビット版だ。ほかの4製品は液晶15.6型、搭載OSはウィンドウズ7の64ビット版となっている。
3万円台のスタンダードノートが安い理由は、前回(連載前編)述べたスペックなどの違いで確認できただろう。性能や拡張性を含め、ほとんどの部分で売れ筋のスタンダードノートには劣っているのだ。しかし、安価なノートパソコンだから"使えない"と思うのは間違いだ。用途を絞れば、それなりに満足して使える。
用途を割り切って購入するのがお勧め
インターネットや電子メール利用はもとより、ワープロや表計算もテキスト中心の書類を作るなら、さほど不満を感じないはずだ。さらに、「Gmail(Gメール)」や「Evernote(エバーノート)」をはじめとする、クラウド型のサービスも、普通に利用できる。
逆に、ビデオや写真の編集には向いていない。最近のデジカメは解像度が高いためにファイルサイズも大きく、大量のファイルを保存しておくだけでもHDD(ハードディスクドライブ)容量が足りなくなる。また画像を次々に開いて作業するには重さを感じるだろう。当然だが、ウィンドウズOSやアプリケーションソフトの起動でも、売れ筋モデルに比べると明確に時間がかかる。全体的な性能が劣ることを理解して、適切な用途に使いたいところだ。
お勧めしたいのは、2台目以降の買い足しで、インターネットやメールに用途を割り切って使うことだ。もちろん、コスト重視の仕事用として買うのもいいだろう。売れ筋ノートを買う予算で2台買える。例えば事業所に導入するなら、多少性能が劣っても2人が使えるメリットのほうが大きいだろう。
3万円台のパソコンでも、有名なメーカーの製品なら、すぐに故障して困るようなケースが特別に多いわけではない。故障に関しては、売れ筋モデルとさほど変わらないのだ。サポートもメーカーごとの違いはあるが、製品によって変わることはない。
選択のポイントは価格とキーボードだ
今回は格安ノートを5台取り上げているが、3万6000円台から4万2000円と価格差は5000円ほど(図1~図5)[注2]。決して少なくない金額なので、購入前にはまず予算の見極めが重要だ。ちなみに、HPのPavilion g6だけ4万円台と一番高価だがHDDの容量が大きく、メモリーが4ギガバイトなので妥当な値段だといえる。
前回掲載したベンチマーク結果を見ればわかるように、格安モデル5台の中では性能差がほとんどない。体感でパフォーマンスの差は感じられないだろう。スペックで重要なのは、USB3.0端子の有無だ。末永く使いたいなら、1つはUSB3.0端子を搭載しているモデルを選びたい。
また、毎日使って気になるのが、性能よりもキーボード。打ちづらいキーボードは、大いにストレスになる。残念ながら直販モデルは、自分でキーボードを打ってみることができない。写真やカタログで選ぶ際には、誰もが頻繁に使うEnterキーの右側に、別のキーが配列されていない機種を選びたい。テンキーを搭載しているモデルは、仕事にも使いやすい。ただし、Enterキーとテンキーの間に適切な隙間がないと打ちづらく感じるだろう。
格安ノートは、ソフトやメモリーを増設していくと、上位モデルと価格が変わらないこともある。買ったままで、拡張しないのが賢い使い方だ。また、価格に加えて数千円の送料がかかるケースもあるので、合計額をきちんと確認しておきたい(図6、図7)。
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無料オフィスを導入して満足度アップ
格安ノートの最大の弱点といえば、マイクロソフトの「Microsoft Office(オフィス)」ソフトを搭載しない製品が多いこと。そこで注目したいのが、無料のオフィス互換ソフト。Excel(エクセル)だけでなく、Word(ワード)やPowerPoint(パワーポイント)の文書を閲覧、編集できるから、使わない手はない(図A)。
エクセル・ワード・パワポの閲覧から編集まで無料
お勧めは「LibreOffice(リブレオフィス)」だ。無料オフィスは「OpenOffice(オープンオフィス)」が有名だが、オープンオフィスの開発メンバーが新たな団体を結成し、リリースしたものがリブレオフィス。オープンオフィス最新版と比較しても、PDFに標準対応するなど多機能となっている。
ソフトは図Bのサイトから入手しよう。「…をダウンロード」ボタンをクリックし、最新バージョンのファイルをダウンロード。ダブルクリックしてインストールする。デスクトップ上のショートカットから起動すると、図Cの画面が表示される。
リブレオフィスは、エクセル、ワード、パワーポイント互換だけでなく、図形描画、データベース、数式作成と6種類を含む総合ソフト。試しにエクセル文書をリブレオフィスで開いてみたが、全く問題なく表示された(図D)。リブレオフィスのメニューはマイクロソフトの「オフィス2003」に近い。それほど迷うことなく使用できるはずだ。
しかし、どうしてもマイクロソフト製オフィスがいい場合は、約3万円のパッケージ版を購入しよう。パッケージ版は2台目のパソコンにもインストールできる[注4]。次に購入するパソコンも、オフィスなしの安価版を選び、手持ちのマイクロソフト製オフィスを導入するといい。2台で使うと考えれば、十分元が取れるはずだ(図E)。
【体験記】 量販店では買いづらかった
格安ノートは量販店で普通に買うことができるのか。日経PC21誌の記者が1台購入して検証することにした。
予算3万円を握りしめ、東京・新宿の大手量販店を数店舗回ってみる。入店すると真っ先に勧められるのは8万円程度の国内メーカー製。「3万円ノートはありませんか」と尋ね、やっと発見。3万円ノートは、各店舗1~2台しか展示していない希少品だった。
店舗で最安の3万円ノートを購入
数台の中から、なるべく性能の高いものを選ぶよう勧められる。よくよく話を聞くと、「実は展示品でこの価格になっています」というワケアリの場合もあった。新品にこだわるなら注意が必要だ。
店舗には新製品が並び、つい目移りしてしまう。あと1万円足せば…と気がゆるみそうになる。予算厳守と気持ちを引き締め、結局、HPの「Pavilion g6-1100AU」を3万2800円で購入した(図F)。1世代前の格安ノートだが、現在発売中のモデルと仕様はほぼ同等。在庫処分品で今回購入した店の最安ノートだった。
格安モデルは量販店で販売されていないケースが少なくない(図G)。絶対に実機を手に取り、使い勝手を確認してから購入したいというのでなければ、ネット通販を活用する方がよさそうだ。
(連載終わり)
(ビジネス書作家 戸田覚、ライター 白石ひろあき、日経PC21 田中祥子)
[日経PC21 2012年5月号の記事を基に再構成]
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