手に比べ10倍の洗浄効果も 電動洗顔ブラシの実力
2013年は、「電動洗顔ブラシ」が続々と発売になり、美容業界で話題になっている。電動洗顔ブラシとは、電動歯ブラシと同じ要領で、先端についたブラシが回転や振動し、手洗いよりもさっぱりした洗い上がりが実現するというもの。なかには手洗顔に比べ、10倍の洗浄効果をうたう商品もある。今回は、今年発売になった3ブランドの電動洗顔ブラシを使い比べて、手軽さ・快適さを探った。
欧米では定番 いま美容業界で話題の電動洗顔ブラシとは
肌トラブルが起きると、化粧水や美容液を変えるなど、洗顔後につける基礎化粧品ばかりを見直しがちだ。しかし、じつはベースとなる「洗顔」がもっとも大切だといわれている。「きちんと顔の汚れを落とすこと。それをおろそかにしては、いくら良い美容液を顔に塗ったところで浸透せず、意味をなさないのです」と、さまざまな女性誌の美容ページに執筆し、美容ライターとして15年のキャリアを持つ夏目円さんは言う。
とはいっても、電動洗顔ブラシでゴシゴシ汚れを落とすことも肌に悪いのではないだろうか。そこで、2013年立て続けに発売された「電動洗顔ブラシ」はどのようなものなのか? 実際に自身もいくつか使用したという夏目さんに聞いてみた。
「もともと電動の洗顔ブラシは、2~3年前から欧米で注目され、日本でもいくつか発売されていたものの、爆発的なブームにはなりませんでした。しかし、2013年の年明けに米国生まれの洗顔器『クラリソニック』の進化版『クラリソニック ミア2』が登場し、さらに韓国生まれの『i bling』、電気シェーバーで有名なフィリップスによる『ビザピュア』が立て続けに日本上陸したことで、人気に火がつきました」(夏目さん)
また、フィリップスがビザピュアの発売に踏み切った理由として、日本の美容家電市場が成長傾向にあることも挙げられるようだ。2011年の野村総合研究所による「2013年には日本の美容家電市場が約1500億円に達する見通し」という調査データがある。
「細かな振動によってふわっとした洗い上がりが実現するほか、毛穴の奥の黒ズミまで落としやすいのが魅力です。秋冬は空気が乾燥しやすく、保湿ケアが重要になる時期。ごわごわの肌では、どんなに保湿効果の優れた製品を塗りこんでも、肌に浸透しにくいものです。肌の浸透力を上げるには正しい洗顔で古い角質を落とし、キメ細かな肌に整えておくことが必要。この時期から電動洗顔ブラシを使って、浸透力の高い滑らかな肌を養うとよいでしょう」(夏目さん)
注意点としては「力を込めて肌に押し当てないこと」と言う。肌に軽く当て、小さな円を描きながら動かしていく。毛穴の黒ズミが気になる小鼻には、少し長めに置くとよいそう。電動洗顔ブラシなら「顔全体で1分程度も洗えば十分」らしい。それなら洗面台に立つのがつらい冬場でも気楽に使えそうだ。
次からは、3種類の電動洗顔ブラシを徹底比較していく。
3種類の電動洗顔ブラシを徹底比較
最初に、持ちやすさやブラシの硬さなど、筆者の主観も交えながら解説していこう。まず、スペックは以下のようになっている。
次に、3種類それぞれの利点や使い心地を詳しく解説していく。
超敏感肌でも安心 特許取得技術の音波振動「クラリソニック ミア2」
今回試した3種類のうち、もっとも重量があって見た目もゴツいが、特許取得技術だという音波振動がとても繊細で驚いた。付属されているのは「超敏感肌用」のブラシで、とても柔らかい。繊細な振動×柔らかなブラシの組み合わせで、最初は汚れが落ちないのではないかと心配になったほど。これなら肌乾燥が進んで、肌が敏感になっている時期でも安心だと思う。
クラリソニックの利点は、別売のブラシの豊富さ。付属されている「超敏感肌用」のほかに、「敏感肌用」「普通肌用」「エキストラブラッシュ(超敏感肌よりさらに敏感な肌用)」「毛穴ケア用」の計5種があるため、さまざまな肌の人が使用できること。ブラシを変えれば、洗顔だけでなくボディにも使用できるのは魅力的だ。
また、基本的に洗顔時間は1分。額20秒→鼻10秒→あご10秒→ほほ(片方ずつ)10秒で、計1分になるように設定されており、この秒数ごとにアラームが鳴る。時間を計らなくても部位を切り替えるタイミングがわかるのは、洗顔し過ぎ防止のためにもとても便利。
コストパフォーマンス良し 超極細毛が魅力「i bling」
今回試した3種類のうち、もっとも価格が抑えられている一品がこのi bling。なにより驚くのは、約15万本もぎっしりと詰まっている超極細のマイクロ毛で、最初は「これ、スポンジ?」と思ったほどの密集ぶり。毛はしっかりしていて、何度か使用しても折れたり曲がったりしない。毛穴の奥にすっと入り込む感触を感じるが、なにしろ細いので痛いこともなく、肌あたりは柔らかい。
ほかの2つに比べ、ボディはかなりコンパクトで小ぶり。凝った機能がついているわけではないが、毎分約1万回という細かい振動で、これだけでも十分気持ちよく洗顔することができた。軽いので持ち運びしやすく、旅行や出張時にも便利。
なお、電動洗顔ブラシは泡の上にのせたときに振動ですぐにズレて移動しがちだが、「i bling」は毛が密集しているためか、泡の上にのせても簡単に滑り落ちてしまわないのは利点。いっぽうで、つい「汚れが落ちるように」と肌に押し付けすぎないように、自分で力加減を調節する必要はあるかもしれない。ちなみに、ほかの2つと異なり、ブラシは1種類のみだ(替えブラシあり)。
しっかり洗うならベスト ブラシが回転&上下振動する「ビザピュア」
今回試した3種類のうち、もっとも「しっかり洗えた」という実感を得やすい。とくにブラシは上下に振動しながら、さらに回転するため、マッサージされているような感覚も得られる。洗い上がりのスッキリ度合は抜群だった。とくに汚れや古い角質がたまっていると感じる人や皮脂の多い人は、この「ビザピュア」が満足が得られやすいだろう。なお、2011年のオランダ・フィリップス社調べでは、手洗顔でメイクを落とした場合に比べ、約10倍の洗浄効果があったという。
とはいえ、こちらも決してゴシゴシ洗うのではなく、柔らかいブラシで静かに回転するので、肌当たりは優しい。ただ、ノーマル肌用ブラシは敏感肌の人にとっては、やや硬く感じるかもしれない。その場合は同梱の「敏感肌用(3万2000本の極細毛を使用)」を選ぶといいだろう。また、角質ケア用の「エクスフォリエーションブラシ」も別売になっており、古い角質除去に効果的だそう。
こちらもタイマー機能がついている。20秒ごとに一時停止するので、それにあわせて洗う部位を変えていくと、額→ほほ(片方ずつ)の計1分で洗顔が完了できる設計になっている。ちなみにあくまで主観だが、ボディの細さや長さから、私の手にはビザピュアがいちばん持ちやすかった。ほどよく重いので、肌にのせると少し圧がかかって心地よく感じた。
全体の感想としては、季節ごとに肌質は変化していくので、さまざまな肌質でも使えるクラリソニック ミア2は1台あると便利だと感じた。だが、皮脂が多く古い角質がたまりやすい人は、回転具合からいってビザピュアのほうが満足しやすいだろう。旅行や出張の多い人、そして手軽に試したい人はまずコスパのよいi blingから試してみることをオススメする。
初の電動洗顔ブラシ体験で、化粧水がぐんぐん入る
電動洗顔ブラシでの洗顔を片っ端から試してみた結果、真っ先に思ったのは「毛穴の角栓がごっそり取れるパックとは真逆」ということ。現在も売られているが、角栓ごと引っこ抜く強力なパックでは、確かに先端が黒ずんだ角栓は取れるものの、毛穴が広がってむしろ汚れがたまりやすくなる欠点もある。かなり強行突破な手段だ。
最初は「歯ブラシのようにゴシゴシと汚れを落とすのではないか」と思い込んでいた。けれど、使い心地はまったく違っていた。いずれも「本当にこれで汚れが落ちるの?」と心配になるくらい、かなり細かくて静かな振動。時折、細い毛先が毛穴の奥をかすかにくすぐる感触があるものの、肌当たりはとても優しい。
ぬるま湯で洗い流し、タオルで水分を取ってから、試しに数分放置してみたが、普段よりも肌がつっぱる感覚がない。指の背で肌を撫でると、あまりにツルツルで驚いた。あんなに静かな振動でも、こんなにツルツルになるほど汚れが落ちているとは! なお、眉毛や髪の生え際もブラシを当ててみたら、とてもスッキリした。毛の生え際は汚れがつきやすいもの。毎日、丁寧に洗顔していたつもりでも、手洗顔では落ちにくかったのだと実感した。また、毛穴の黒ズミも日に日に小さくなり、毛穴自体も目立ちにくくなったのは嬉しい発見だった。
もっとも感動したのは、基礎化粧のケアをしたとき。化粧水を肌につけたとき、肌への入り方がまったく違う。ぐんぐん吸い込まれる感覚で、あっという間に化粧水が入っていく。その後の美容液やクリームも通常通りつけていったが、浸透するたびに肌がモチモチに。基礎化粧品の底力を実感した……というか「これまではなんだったんだ?」と、呆気に取られるような感覚。乾燥しやすい秋冬時期、電動洗顔ブラシできちんと洗顔すると、肌に保湿効果のある化粧水や美容液、クリームを塗っても効果が持続しやすいように思える。
これから乾燥の季節。肌に負担をかけず、けれどしっかり汚れを落とすことで、保湿ケアのしやすい滑らかな肌を手に入れたい。
(ライター 富永明子)
[日経トレンディネット2013年11月14日付記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界