大切なのは別れ方 元彼をストーカーにしない方法
マキ:IT会社事務職、34歳。バツイチ。別れた夫が一時期ストーカーになった経験がある。その後、再婚。
ミホ:サービス会社広報、27歳。合コンに精を出してもなかなか成就しなかったが、1年前に念願の彼氏ができた。
ぐっどうぃる博士:恋愛カウンセラー。理学博士(生命科学専攻)。現在は主に恋愛カウンセラーとして活躍。悩める女性の恋の問題が解決するサイト『恋愛ユニバーシティ』主催。
マキ: 私、別れた夫が一時期ストーカーになりました。そもそも元夫が「お前とはもう一緒にいられない」というから別れたのに。離婚後、夫のことを忘れることができなかったのは私のほうだったんです。だから、ときどき食事に誘っていました。でも、彼は私にもう興味がなかった。それが、「私、彼氏ができそう」と言ったとたん、元夫が豹変したんです。
ミホ: どんなふうにですか?
マキ: それまでは「お前は気持ち悪い。今後、お前と付き合うことはない」と言っていたのに、急に「お前との相性が一番よかった。やり直そう」と。「私は、新しい彼ができそうだから、あなたとはやり直せない」と言ったら、元夫は「お前が寝ているときに裸の写真を撮った。それを俺は持っているんだ」と。それを聞いて、元夫のことが気持ち悪くなってしまって。
ぐっどうぃる博士(恋愛カウンセラー、以下博士): 人というのは、価値のあるものでも、それが手に入っている時は価値を感じません。一方、手に入っていたものを突然失うと、その失ったものに対して急に価値を感じるようになり、その結果、態度が豹変するんです。
この心の動きは、恋愛においても同じです。付き合っている彼女の「価値」は、手に入っているときには感じていません。それを突然失うことで「価値のあるものだったんだ」と気付きます。彼女の見た目がとてもきれいだったり、一緒にいて居心地がよかったりと、もともとの価値が高いと、失った瞬間に「めちゃめちゃ価値が高かったんだ」と跳ね上がるんですね。ただし、もともとの価値がそれほど高くなかった場合には、価値の跳ね上がりもそれほど高くはなりません。
ミホ: 彼女が離れたことで「こいつすごくいい女だったんだ」とわかって、急に惜しくなって取り戻したくなるわけですね。
博士: そうです。同時に、手に入っていたものを突然失うと、切羽詰まった不安感に襲われることがよくあります。一日中彼女のことが頭から離れなくなり、「とにかくこの不安な状態から抜け出すには、何とかして彼女を取り戻すしかない」と思うのです。精神的に不安定にもなります。メールを送っても返ってこないことが、不安で仕方なくなったり。そして、相手と何とかつながりたい、相手からの反応がほしいという一心で、何通もメールを送ったり、何度も電話をしたり、突然家に行ってみたりというストーカーのような行動をし始めるのです。
元彼の脅し文句には反応しないのが大事
マキ: 不安から、相手に執着心が生まれるのは理解できるけど、なぜ「裸の写真を持っている」などと、怖いことを言い出すのでしょうか。
博士: 「裸の写真を持っている」というセリフも、彼女を取り戻すためにいろいろなことを言っているうちの一つに過ぎません。彼は「お前のことがやっぱり好きだ」「お前よりかわいい子はいない」など、いろいろなことを言ってきていたはずです。
そんな中で、「裸の写真を持っている」は脅されているようで怖いため、言われている側には強く残るのでしょう。
ミホ: 元彼がストーカーのようになった経験のある人は、怖い思いをしているケースが多いと思います。
博士: それは、元彼の発した怖いセリフに、思わず反応をしているのが原因でしょう。元彼の側に立ってみると、「いくらメールを送っても電話をかけても無視されていたのが、怖い発言をしてみたら反応があった」ということになる。そしてどんどん、彼女の反応を引き出すために怖い発言をするようになるのです。
ミホ: 女性の側は「そういうこと言うの、やめて」と嫌がってるんですよ。
博士: 「やめて」という否定の言葉であっても、元彼にしてみれば「反応があった」「返信があった」ということになります。そして、「怖いことを言えば、相手は反応してくる」「もっと怖いことを言えば、僕の言う通りになるかもしれない」と、その行動をさらに強化していきます。この状態を避けるための第一の方法は、完全にすべて無視することです。相手が何を言ってきても一切の反応をしなければ、そのうち相手は諦めます。あなたが元彼にとって「手に入らないもの」になるからです。
けれど元彼が諦めるまでの間に、怖いメールを送ってきたり、突然家の前にやってきたりといろんなことが起こるかもしれません。「手に入らないもの」になるまでの間に、相手はいろいろなことを試しますから。
第一の方法がどうしてもできない人には、第二の方法があります。これは、相手にガイドラインを示すというやり方です。「私は、裸の写真があると言ってくるような人とは、一切会いたくありません。けれど、あなたがこんなふうに変われば、もう一度、二人の関係を考え直すかもしれません」というものを示すのです。
「あなたのその行動は最悪です」と冷静にメールで伝える
博士: 元彼にとって最も避けたいことは、彼女から一切の縁を切られて二度と会えなくなることです。そのため、「あなたのこの行動は、あなたを嫌いにさせる最悪のものです」ということをまず伝えます。同時に、「これをすれば復縁できるかもしれません」という方向性も示します。これにより相手はどのような努力をすればいいかがわかるため、彼女を脅すような行動は取らなくなるでしょう。
ミホ: 例えば、どんなガイドラインを示せばいいでしょうか?
博士: 相手との縁を完全に断ちたい場合は、相手にとってなかなか越えられないハードルを設定するのがいいでしょう。例えば、年収400万円の相手に対して、「私は結婚を考えられる相手じゃないと付き合えません。あなたの年収が800万円を超えたら、もう一度考えます」と言ってみるのは一案です。「自分には到底無理だ」と思ったら、諦めるしかないという結論になるでしょう。
また、元彼のここが直ったら考え直してもいいと思っていることがあるなら、それを伝えます。浮気性の相手に「あなたが浮気をやめてほかの女性との関係を切り、誠実さを示してくれたら復縁を考えます」と言えば、彼はそのための努力を始めるでしょう。
マキ: 突然、元彼に「今、お前の家の前にいる」と言われたら?
博士: 「私はそういう行動をする人は嫌いです」と怒ったうえで、「こういうことをしてください」というガイドラインをメールで与えるのはさっき話したことと同じです。玄関のドアを開けたり、「駅前のファストフード店でなら、会ってもいい」といったことをする必要はありません。
いずれにしてもストーカー化している相手は、「恋人を取り戻したいけれど、どのような行動を取ればいいかわからない」という状態にいます。だからガイドラインを与えて、彼がするべき行動を伝えるのが有効なんです。
ガイドラインという視点では、「新しい彼ができた」と正直に話すのは危険です。下手をするとそれがガイドラインになってしまうからです。たとえば、「あの男さえいなくなれば、復縁できる」と思った元彼が、新しい彼を特定して、あなたの悪口を吹き込もうとするなどの行動に出ることが考えられるのです。
元彼がストーカー化する原因の多くは、「突然、彼女に別れを告げられた」「突然、連絡が取れなくなった」などです。恋人と別れるときには、だんだんと、彼に尽くすのを止め、連絡の頻度や会う頻度を低くして、フェイドアウトしていくやり方のほうが、お勧めですね。
ミホ: 別れ方って、重要だったんですね。相手の目の前から急にいなくなるようなことは避け、相手を傷つけないようにしながらだんだんと消えていくのが大事って、覚えておきたいと思います。
この人に聞きました
恋愛カウンセラー。理学博士(生命科学専攻)。現在は主に恋愛カウンセラーとして活躍。自身の体験と生命科学的視点を合わせた独自の恋愛メソッドを展開し人気を集めている。悩める女性の恋の問題が解決するサイト『恋愛ユニバーシティ』主催。音声で恋愛を学べるスマートフォンアプリ『ぐっどうぃる博士の音ライブラリー』や携帯公式コンテンツ「恋が叶う99のルール」もある。現在、テレビ、ラジオ、WEB、書籍、雑誌等など多方面で活躍中。また大手企業のマーケティングリサーチや企業のブランディング戦略にも参画。著書に『恋愛マトリックス』(ソフトバンククリエイティブ)、『恋で泣かない女になる61のルール』(講談社)などがある。
(nikkei WOMAN Online編集部)
[nikkei WOMAN Online 2013年6月19日掲載]
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