検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

女性役員誕生の起点は「初期キャリア」にあり

ここが違った!女性が活躍する企業、ダメな企業(3)

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

「202030」という数字を聞いたことがあるだろうか。

これは、2020年までに指導的な立場に占める女性の割合を3割にするという日本政府の目標である。つまり、民間企業であれば、管理職にしめる女性の割合を3割にするということになるのだが、「日経ウーマン企業の女性活用度調査2013報告書」によると、2013年現在の女性管理職比率はまだ8.4%である。前年よりは1.5pt(ポイント)増えているとはいえ、100人管理職がいても女性はまだ8人しかいない状態である。2020年まであと7年。それまでに30%までにもっていくには、なかなかハードルが高い。

はたして女性管理職がなかなか増えないのは、企業側に問題があるのか、それとも女性の意識ゆえんなのか。この連載では、初回に大和証券グループ本社・鈴木茂晴会長のインタビューを紹介してトップコミットメントの重要性を、前回は、企業の女性登用の鍵は男性側の頭の切り替えと腹落ちにあり、そのための仕組みを構築している企業はうまくいくと書いたが、当の女性たちはどのように考えているのか。3回目では、どんな人事施策があれば女性は活躍できるのか、昇進するのか、3人の女性役員のケーススタディからそれを探ってみたい。

その企業の女性の最高役職が何かというのは、日経ウーマンが企業の女性活用をみるときのポイントのひとつだ。また、同時にそれが生え抜きかどうか、社外からのヘッドハンティングかどうかもチェックする。同報告書によると、一番多い女性の最高職位は、「本社部長相当職、関連会社代表取締役」(41.3%)で、ついで「本社課長相当職」(23.5%)で、「役員(生え抜き)」は19.8%、「役員(ヘッドハンティング)」は6.3%となっている。

今回登場する3人の女性役員は、いずれも学校を卒業後、新卒で入社した企業の中で、昇進・昇格をしてきた、ばりばりの生え抜きの女性たちばかりだ。彼女たちに「なぜ自分は昇進できたと思うのか」「女性の登用には何が大事だと思うか」を聞いてみた。

心を揺さぶる強烈な仕事体験がキャリア意識をつくる

日立ソリューションズ執行役員・金融システム事業部事業部長の富永由加里氏(55)は、日立グループの国内企業では初の女性執行役員である。大学卒業後、1981年に日立コンピュータコンサルタント(現・日立ソリューションズ)に入社、SE業務に従事し、94年より就業管理システム「リシテア」の開発に企画段階から携わり、人事系アプリケーションソフトのトップシェアに育てるなど事業拡大に大きな実績を残してきた。

「長く働き続けたいとは思っていましたが、昇進意識はありませんでした。主任時代に課長昇進の打診を受けたときは、当初自分には無理だと断ったほどです。そのとき当時の本部長に呼ばれましてね、『あなたはそれでいいかもしれないが、あなたの部下はそれでいいのか』と諭されました」

当時、富永氏の部下は10数人の男性エンジニアだった。もし自分が昇進しなければ、自分の部下を評価して処遇したり、昇進させることもできない。それで部下は幸せなのかと問われたと富永氏。しかし、自分が課長になれば、主任という今の自分のポストを自分が信頼する部下に与えることができる。そのときに、はじめて昇進・昇格するという意味が実感としてわかったという。

「ですから、自分のためというより自分の部下たちのためにその昇進の話を受けたんです」(富永氏)。

その後、2002年に担当部長、2007年に同社初の女性本部長となり、入社30年目の2011年に執行役員に就任した。

「管理職になると視界が違いますね。見えるものが全然違う。昇進しない限り、誰か他の人の指示で働くことになりますが、必ずしも自分と価値観があう上司ばかりではありません。会社のために、自分のやりたいことを正義感を持ってやり遂げたいのであれば、権限は持つべし、と今は思いますね」

富永氏の昇進は、社内の多くの女性たちに、将来は役員になるという道(キャリアパス)も女性にあるという驚きと気づきを生んだと指摘するのは、同社ダイバーシティ推進センタ長の久永美砂氏。「富永の昇進で、うちの会社、やるなあと思った女性社員は多いと思います。この人事は、当社のチャレンジングや先進性のシンボルだと思います」。

「女性はスペシャリスト志向が強く、ゼネラリスト志向は弱い――女性自身のみならず、経営側もそう思っていたとしたら、昇進・昇格するようなコースに女性は配置されません。つまり将来は部門長になるように育成されないわけですね。私の就任がその知らず知らずにあった縛りを解いたのであれば、うれしいです」(富永氏)。

女性が働き続ける上で大きな壁となるのは出産・育児であるが、富永氏の場合は29歳で長女を出産した。当時育児休業制度もなかったため、産後8週間で職場復帰し、それ以降同居する実母のサポートを受けながら仕事と育児を両立してきた。日本は最初の子どもが生まれるまでに6割の女性が職場を去る。その就業継続の困難さと勤続年数の短さが、管理職増加を阻む大きな要因だが、富永氏が、その道を選択しなかったのは、「若いときに感じた仕事の達成感や充実感があったからではないか」という。

「入社2年目に、大規模な展示会に自分が担当していたCADシステムの試作品を出展することになりました。何日も不眠不休でチームで準備をして出展、展示会が無事に終了したときには、感激してみんなでその場で泣いてしまいました。若いときに心を揺さぶられる強烈な体験があるから、両立も乗り越えてこられたと思います。でも、もしそのとき、淡々とこなすような仕事しか与えられなかったら、そういう思いは育たないでしょう。早い段階での仕事の与え方が、女性のキャリア意識に影響を与えるのではないでしょうか」

地域型から初の執行役員誕生に、若き日のジョブローテーションあり

東京海上日動火災保険では、この6月に地域型社員から初めて執行役員が誕生した。旅行業営業部長の吉田正子氏(52)である。同社は、社員を全国型と地域型の2つに区分しているが、地域型社員は本人の同意なしに住居の転居を伴う転勤のない社員のことである。1980年に一般職として入社した吉田氏は、当時事務職としては珍しく多くのジョブローテーションを重ねた。事務を皮切りに、営業サポート、事務職インストラクター、営業、人事管理部門など配置転換で、さまざまな業務や役割をにない、力を身につけていった。06年担当課長、09年支社長、11年旅行業営業部長と昇進、ついに、入社33年目で、執行役員に抜擢された。吉田氏の役員昇進は、地域型社員であっても、実力があれば経営層まで昇進できるという社の方針を示す格好のモデルとなった。

「入社当時は寿退社が普通で、長く勤務するというイメージはありませんでしたので、私も5年間くらいは頑張ろうと思っていました(笑)。それまでは、信頼される仕事をしたいと。当然、役員になるとは思ってもいませんでした。内示を受けたときは、まったくの青天の霹靂でした」と吉田氏。

同社には、地域型社員を対象としたユニークな人事制度が多い。女性社員をサポートする体制をつくり、事務から営業へと役割転換を進め、女性社員のキャリア意識を醸成する数多くの研修やセミナーなどを実施してきた。自ら手を挙げ、会社が認めれば、勤務エリアを変更して異動できる「JOBリクエスト(Iターン・Uターン異動)」という制度もある。Iターン異動は、結婚や親・配偶者の転居に伴い、転居エリアにポストがあれば勤務エリアを変更でき、Uターン異動は、一定期間ほかのエリアで勤務し、キャリアを積んでまたもとのエリアに戻ることができる。現在2つの制度あわせて450人近い利用実績があり、Uターンには、シンガポール、米国、インドに赴任している女性社員もいるという。地域型社員が全国型社員のように様々なエリアでこれまでとは違う仕事を経験することで、もとのポストに戻ったときの成長は驚くべきものがあるそうだ。

これらの制度設計を手がけたのが、当時人事企画部にいた吉田氏を中心とした女性活躍のための組織「女性の元気度アップチーム」だった。

「当時は女性の退職も多かったので、まず働き続けられる制度が必要で、女性社員を対象とした調査を通じて、女性が活躍するためには、キャリア意識の醸成や支援の仕組みをつくることが不可欠だと思いました。また、女性は長く1つの職務やエリアに配属されがちでしたが、自分自身は、20代、30代のときに、数年ごとのジョブローテーションでいろいろな拠点でさまざまな職務を任され、都度、業務や環境に戸惑いつつも、仕事の幅と視野がとても広がりました。それがよい経験で自分の強みになり、自信になりました。ですから、地域型社員でありながらジョブローテーションができるような仕組みをつくりたかったのです」

営業を行う地域型の女性社員の数は2008年度の120人程度から、2012年度は1350人程度と約11倍程度も増加、女性管理職の数も、2004年度の8人から2013年度には145人と約18倍となり、女性活躍の場の拡大が収益に直結するようになっている。

役員内示のときは「吉田さんらしくやって」と言われたことがうれしかったと吉田氏。

「男性のやり方を踏襲するのでもなく、真似するのでもなく、地域型社員としての経験も生かし、自分らしい視点・方法で経営に参画すればいいと、背中を押された気がしました。勉強しながら新たな世界へチャレンジし、後進の育成を支援していきたいと思っています」

30歳の壁に絶妙な仕事のアサイン、それがキャリアの扉を開いた

味の素の野坂千秋氏(52)は2011年6月に執行役員に就任した、同社初の女性役員である。現在、食品研究所技術開発センター長として、90人の部下を率いて、連結売上高の60%をしめる同社の食品事業の商品開発の、おいしさを実現する技術開発を担当している。

野坂氏は83年に入社。研究職として一貫して、調味料や加工食品などの開発を手がけてきたが、30歳の頃が最初の転機だったという。

「研究所にずっと勤務していたのですが、いつ頃からか閉塞感を感じるようになってしまって、このまま研究所にいても、誰に向かって仕事をしているのか見えないと悶々としていたんですね。そういう状態を当時の上司が察してくれて、研究所から私を出してくれたんです」。

研究所から支社の営業サポートをする技術支援部門へ長期出張を命じられて、初めて顧客の声を直接聞く機会を得られた。当時、外食産業向けの商品開発の立ち上げが当該部門のテーマとなっており、顧客である厨房調理の現場の抱える課題を探すのが野坂氏のミッションだった。はじめてレストランを回り、シェフたちから話を聞く。

「ホワイトソースなど洋食の基本でいい商品を提供できないメーカーはダメと直接言われ、眼からうろこでした」。

プロの目にもかなう品質の商品が求められていることを知った野坂氏は、研究所に戻り、シェフの技を製造技術に置き換えることを自分の研究テーマとし、開発プロセスを構築。そのとき生まれた「匠の技」の解析に基づく商品開発、おいしさの本質を極める考え方は、今も受け継がれている。30歳で自分の研究テーマを発見し、30代でそれを極め、39歳で課長職に昇格。05年には、上海の現地法人の総経理(社長)となり、同社で女性初の海外法人トップとなった。その際はじめて経営に携わり、100人の中国人スタッフを率いた。「経営視点の重要性を痛感しました」。その6年後、51歳で執行役員に就任した。

「当社には、個人の多様性を重んじる文化と、ひとりひとりの能力と適性を見て育成するという制度があります。女性の登用やダイバーシティに特別な数値目標を掲げてはいませんが、男女の区別なくその人にあった仕事を与えて能力を開発するというマネジメントをしていると思います。だから、私自身が最初の壁を感じた30歳のときに、そこを突破できるように、上司が取りはからってくれた。そのことが今の自分の出発点になったと思っています」

野坂氏が最後に指摘したのは、ミッションである。

「会社の目指していることと、おいしいものを届けたい、お客さまに役に立つものをつくっていきたいという自分の思いが一致していたことも大きいですね。会社のミッションが共有できたから頑張ってこれたというのはあります。当社のグローバル化は必須。『R&D』が成長のドライバーと経営も語っています。また消費者は、食品の商品開発に、実際に調理を担っている人の視点・観点を求めています。その双方の期待にこたえるように、女性の力も生かして、今後もおいしくて健康な商品を開発していきたいですね」

*    *   *   *

技術職、事務職、研究職と初職は違えど、3人は期せずして、30歳までの初期キャリアの段階での、アサインや仕事経験、配置転換等がその後のキャリア意識に影響を与えたと語っている。女性管理職の育成というと、その前段階の管理職候補者層を対象に施策をうつことが多いものの、見逃されがちだが、もっと前段階の若手女性向けの施策も同じように重要なのかもしれない。

(日経ウーマン発行人 麓幸子)

[参考1] 「企業の女性活用度調査2013報告書」では、「管理職登用度」「ワークライフバランス度」「女性活用度」「男女均等度」の4つの視点、全64項目のアンケート結果を収録。ランキング企業20社の先駆的な人事施策の詳細や企業の成長につながる効果的な女性活用策を掲載している。http://wol.nikkeibp.co.jp/article/info/20130321/148601/ また、日経BP社・日経BPヒット総合研究所は、経営幹部や管理職向けに女性活用についての課題を抽出、サポートする「女性が活躍する組織づくり講座」を開催する。 http://www.nikkeibpm.co.jp/semi/div-ken/

日経ウーマン企業の女性活用度調査2013報告書

著者:日経ウーマン
出版:日経BP社
価格:52,500円(税込み)

日経 WOMAN (ウーマン) 2013年8月号 [雑誌]


発行:日経BP社
価格:550円(税込み)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_