仮面ライダー×スーパー戦隊 ヒーロービジネス最前線
日経エンタテインメント!
2011年、東映は計5本のヒーロー映画を公開し、興行収入は約60億円を記録。テレビ放映中のライダー&戦隊シリーズも好評で、玩具を中心とした関連商品の売り上げも高水準を保っている。両シリーズが好調な理由を、東映の白倉伸一郎プロデューサーは「現在のライダーは、お父さんと子どもが、一緒になって楽しむ"二世代型"のスタイルが確立しているから」と語る。
現在放映中の『仮面ライダーフォーゼ』を例にとると、メインターゲットは3~7歳児。この子どもたちの親は『仮面ライダーBLACK』(1987年)を幼いころに見ていた世代が多い。つまり、親が子と共に番組を見る・関連商品を買うことに抵抗が少ないのだ。
だが、今後は"二世代型"のマーケティングの端境期がくると白倉氏は分析している。テレビシリーズは『仮面ライダーBLACK RX』(1989年放送終了)以降、11年間放送されていなかった期間があるためだ。
それを打開する施策の一つが、過去のライダーを現行作品に登場させる手法だった。「『仮面ライダーディケイド』(2009年)から新旧のライダーを登場させ、(ライダーの)カタログ化戦略を始めています。全ライダーの認知度アップが目的です」(白倉氏、以下同)。新たな命を吹き込まれた過去のライダーは商品化もされ、世代を超えてファンをつかんでいる。
さらに、近年は作品の見せ方も変えている。「ストーリーは単純で明るい方向に舵(かじ)を切っています。変化よりもパターン化することで、親子そろって愛着を持ってもらうことを考えています」。
一方、スーパー戦隊シリーズにはテレビ放映の空白期間がない。すべての世代に抜群の認知度を誇っているのが強みだ。「(戦隊は)"5色のヒーローが巨大ロボットに乗って戦う"という基本フォーマットが世の中に浸透し、まさに"文化"としての定着を見せている」。基本フォーマットは輸出され、北米などにおいても海外版戦隊『パワーレンジャー』シリーズが高い支持を集め、世代や人種を超えた人気だ。
テレビシリーズの新作『特命戦隊ゴーバスターズ』では、「ロボット戦などで新しい描写(質感のアップや戦闘シーンのリアリティー追求など)に挑戦している」という。長寿の人気シリーズだからこそ、新規スタッフの投入やマンネリ感を打破するチャレンジが可能であり、必要なのだという。
両シリーズの激突の狙いは
ファン獲得のアプローチが異なるライダーとスーパー戦隊。その両作品が本格的に対決する映画『スーパーヒーロー大戦』が現在公開中だ。この作品は、ライダーと戦隊の同時上映(夏)、新旧ライダーの競作(12月)、新旧戦隊の競作(1月)に続く、春のゴールデンウイーク興行を定番シリーズ化させる役割を担っている。
さらに「仮面ライダーとスーパー戦隊の2つをぶつけることで、違いをハッキリとさせる」狙いもある。似ていると思われがちな両シリーズの違いや美点が作品の中で浮き彫りになることで、それぞれの進むべき方向性が明確になり、ブランド力の強化につながる。新たな相乗効果に期待しているのだ。
(ライター 岡本智年、宮崎敦司、徳重耕一郎)
[日経エンタテインメント!2012年4月号の記事を基に再構成]
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