全体として、小説は文庫で買うという読者の志向が定着してきたと感じます。コンスタントに30万部は売れるとされる東野圭吾さんは、総合には1作もランクインしていません。しかし文庫ではトップ10に4作も入っています。

文庫に対する作家のスタンスも変わりつつありますよね。7位『あの頃の誰か』は、単行本未収録の短編を収めた「文庫オリジナル」。15位・18位の『おまえさん』は宮部みゆきさんの人気シリーズの新作を、単行本と文庫で同時発売したものです。読者の志向や作家のスタンスの変化に、出版社側も、雑誌掲載→単行本→文庫で出す三毛作スタイルを、変えざるを得なくなってきています。

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【マンガ編 アニメ化かマンガ賞受賞が大ヒットのカギ】

1位『ONE PIECE』を筆頭に、20作中13作品が少年向けと少年マンガは相変わらず強い。

なかでも4月のアニメ放送で大ブレイクしたのが、5位『青の祓魔師(エクソシスト)』。アニメ放送前は6巻までの累計発行部数が120万部だったのが、7巻までの累計が700万部発行にまで伸びた。9月に発売した7巻の初版は100万部を超え、『ジャンプSQ.』連載作で初ミリオン超えの記録を作った。

オリコン調べ(oricon.co.jp)。売上部数は、集計期間(2010年12月27日~2011年11月6日)内の推定。同タイトルがランクインした場合、期間内に最も売れた巻数の数字をとって順位付けした。「2011年オリコン年間ランキング」の集計期間とは異なる
若きプロ棋士が、もがきながら成長していく。既刊6巻
祓魔師を目指し修行をする兄弟たちを描く。既刊7巻

6位『進撃の巨人』、7位『聖☆おにいさん』、11位『3月のライオン』、13位『テルマエ・ロマエ』と、10巻以下で映像化もされていないのにランクインしている作品は、すべて2009年以降に「このマンガがすごい!オトコ編」1位か、「マンガ大賞」を獲得しているもの。11年の「このマンガがすごい!」1位に輝いた『進撃の巨人』は、本作がデビュー作ながら5巻までの累計発行部数が560万部を突破するメガヒットに。マンガ大賞を射止めた『3月のライオン』は、受賞前から作家にファンがいる人気作ではあったものの、さらに飛躍した。

アニメ化で原作の新たなファンを掘り起こすか、「マンガ賞」受賞でお墨付きをもらうか。大ヒットの登竜門となっている。

永江 朗 (ながえ・あきら)氏
1958年生まれ。洋書輸入販売会社に勤務後、フリーライターに。出版業界事情に詳しく、関連著書多数。早稲田大学文学学術院の客員教授を務める。

(構成 日経エンタテインメント!編集部)

[日経エンタテインメント!2012年1月号の記事を基に再構成]