ディレクター、調整役へ…変わる「管理職」
「2020年までに指導的立場に占める女性比率を30%にする」――これは日本政府が掲げる女性活用に関する目標です。従業員規模100人以上の企業に占める女性管理職比率は2012年時点で6.9%に過ぎず、多くの会社で女性管理職を養成することが急務となっています。
「会社から管理職登用の打診を受けているが、どうしたらいいか迷っている」――こんなご相談を受けることも最近は増えてきました。その場合は、私は「まずはやってみては?」とアドバイスしています。
女性が活躍しているイメージを持ちにくい業種の会社もありますし、女性の先輩管理職がいない中、自分が先陣を切って挑戦することに躊躇する気持ちもよく分かります。
私は女性は管理職に向いていると思います。共感性が高く、他者をモチベートするのが上手。以前は、男性以上に働く「モーレツタイプ」の女性管理職が多かったのですが、最近は自然体で仕事を楽しむ30代の女性管理職も増えてきたように感じます。
打診を受けたら勇気を持って新しい形を作って
そもそも「管理職」の存在自体が今後5年、10年で大きく変わっていくはずです。例えば、私が関わっている「人事」の領域は非常に外注化が進んでいる職種の一つです。採用、面接、研修……社内の人事部社員が担当するよりも、外部の専門人材や専門会社を委託することで質を高めコストを抑えるケースが増えています。
企業の基幹となる業務を支えるITサービスも充実してきていますね。例えば、マーケティングは経営判断を左右する重要なセクションの一つですが、売上データを入力しておくことで販売傾向を分析してくれるクラウドサービスなどもあります。
こうなってくると企業には外部人材やサービスを活用しながら限られたリソースをうまく使って業務を遂行することが求められます。管理職の役割も「部下を管理・指導する」というよりも、どちらかというと外部も含めた"調整役""ディレクター"のような役割になっていくのではないかと予測されます。組織のあり方も「ヒエラルキー型」から「フラット型」になっていくはずです。コミュニケーションスキルの高い女性には有利ですよね。「管理職になってみないか?」と周囲から言われたら、ぜひ将来を見据えて積極的に手を上げて「フラット型」の組織を作っていってほしいですね。 これまでとは違う仕組みを作るチャンスです。
管理職を経験していれば転職市場での市場価値も高まります。これからの時代、一社で一生を過ごす人のほうがむしろ少数派。会社に忠誠心を尽くすことも大事ですが、他の会社に行ってもやっていけるように、今の会社でより多くのことを経験し身に付けるような視点が重要です。
この人に聞きました
1968年生まれ。株式会社キャリエーラ代表/キャリアカウンセラー。カメラメーカー勤務後、大手総合人材サービス企業にて、女性を対象とした転職支援チームを立ち上げ、数多くの転職を支援した後に独立。のべ1万3000人以上の女性向けキャリアカウンセリングを行う一方、数多くの企業でダイバーシティ研修、女性管理職研修などを担当。著書に『「あなたには、ずっといてほしい」と会社で言われるために、いますぐ始める45のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。
(ライター 田中美和)
[nikkei WOMAN Online2014年3月12日付記事を基に再構成]
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