戦略的に自分のキャリアを捉える目を持とう

「とにかく今は働くしかない」――研修やキャリアカウンセリングを通じて多くの20代、30代女性と接していますが、このような心境になっている方が多いのではないでしょうか。共働き世帯のほうが、専業主婦世帯数を上回り一般的な形として定着しつつありますし、シングルで暮らすならなおのこと働く必要はあります。ただ、「働き続けるとしたら、どういう形がいいのだろう？」と考えた時に皆さん迷路に入り込んでしまうようです。

「家庭との両立がしやすそう」という観点から一般事務職を選ぶ女性は少なくありませんが、どうしても途中から業務に物足りなさを感じてしまいがちです。

一方で、総合職を選ぶと業務量も多く、転勤もあるなどしてプライベートライフとのバランスが取りにくい面があります。

しかし、「働き方」に対する「迷い」は20代前半にはあまり見られません。「さとり世代」と言われる彼女たちは、多くを望まず、ある意味、「割り切って」一般職か総合職かを選んでいます。「総合職として働く」と決めたら全国転勤・海外転勤もいとわず、当然ながら将来の「管理職」というキャリアパスもしっかり見据えています。

むしろ「迷い」に直面しているのは20代後半から30代のアラサー世代の女性たちですね。この世代の女性たちは出産や育児などライフステージの変化も多いため、より迷い、悩みに直面することになります。

総合職における「転勤」は日本ならではの慣習ですが、女性が家庭生活と両立する上では非常に悩ましい仕組みです。海外ではエグゼクティブ層の転勤は珍しいことではありませんが、一般社員においてここまで定期的な転勤があるのは日本独特と言えます。日本の場合は、能力がいくらあっても「転勤できない」となると、昇進が難しくなります。女性がせっかく積み上げたキャリアを活かすためにも、地域別の採用をより取り入れるなど柔軟性を持たせることが求められます。同様に、出産しても短時間勤務制度や在宅ワークなど働き方にバリエーションがあれば、女性は働き続けやすいように感じています。

昨年はメディアでも「育休3年」が話題になりましたね。長年、転職やキャリア相談に関わってきた経験から考えると、3年もブランクが空いてしまったら、それ以前と同様に働くのは難しいと思います。既に女性の「3年育休」を導入している企業もありますが、制度を設けるだけではなく、キャリアが遅れないようにする仕組みも同時にないと……。

3年の育休を取得したものの、戻ってきてからなかなか業務に追いつけず苦労している女性や、昇進スピードが大幅に遅れ仕事に対するモチベーションが大きく下がってしまう女性がいることは非常に残念なことです。また、女性の側にも「制度があるから使う」というだけではなく、戦略的に自分のキャリアを捉える目が必要とされます。自分はどのようなキャリアを歩みたいと考えていて、そのために今の会社ではどのような経験を積みたいのか、その中で出産・育児などのライフイベントをどう組み込んでいくか――キャリアを中長期的な視点から考えていきましょう。

この人に聞きました

（ライター　田中美和）

［nikkei WOMAN Online2014年3月5日付記事を基に再構成］