映像化されやすい小説とは

「特殊な職業など、知らない世界を見せてくれる原作は注目されやすい」と分析するのは、エンタテインメント小説に詳しい書評家・大森望氏。13位の高殿円(たかどのまどか)「トッカン」は特別国税徴収官を、三浦しをんの「舟を編む」は辞書編集者を描き、大ヒットした。

さらに大森氏は「民放の1クールは約10回。その枠に合わせるために、連作短編集が使われがち」とも考察する。連作からなるドラマには、個性的な主人公が1話完結で謎を解く形式が多い。「ガリレオ」(東野圭吾)や「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉)がよい例だ。ドラマ側のニーズに合わせて、作家がシリーズ作の短編を描き足すケースも出てきている。

「新しいのは、今夏のドラマ『半沢直樹』と『名もなき毒』が、長編小説2作を足して1ドラマにしたこと。『半沢~』では、主人公や主要キャストは固定で、中盤で大阪から東京へ舞台を移した。原作1作の内容を引き延ばすより、2作を足した方が物語の厚みも増して面白くなるでしょう」(大森氏)

池井戸潤原作「空飛ぶタイヤ」、相場英雄原作「震える牛」などを成功させた、WOWOWのプロデューサー・青木泰憲氏も、「分量」に言及した。「多くの長編小説は、ドラマの6~8話で描くのに適した内容だと思う。WOWOWの視聴者は映画のように集中して見てくれるので、長編を5話程度に凝縮させて濃密にしています」(青木氏)。

映像が人気作家に後押し

相場英雄原作の連続テレビドラマ「血の轍」。2014年1月19日からWOWOWで放送開始

青木氏はさらに「まだあまり映像化されたことがない作家を探すようにしている」と、独自の観点を示した。

「ベストセラー作家の作品はクオリティーも高いが、どの局も目を向ける。地上波との差別化を常に考えています」と明かす。青木氏は2012年6月、知る人ぞ知る作家だった相場英雄の小説「震える牛」を連ドラとして放送した。スポンサーへの配慮で民放では扱いにくい「食品偽装」という題材を、硬派に描いたことで話題に。原作の発行部数は、累計28万部を超えた。

「次は相場さんの警察小説『血の轍』を、2014年1月から放送する(1月19日放送開始)。出版社はドラマに合わせて、放送開始前に文庫化してくれました。『震える牛』の熱が、視聴者にも原作を売ってくれた書店員さんにもまだ残っている。間を置かずに同じ作家の2作目を作ることで、映像と小説のどちらにも盛り上がりが作れると思っています」(青木氏)

映像化のヒットが、埋もれていた作家、小説に光を当てる傾向は今後も強まっていくだろう。

(ライター 土田みき、平山ゆりの)

[日経エンタテインメント! 2013年12月号の記事を基に再構成]

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