人気継続率52%、「10年売れる」音楽アーティスト
日経エンタテインメント!
今回、2003年、または2004年にアルバムがオリコン年間トップ100入りしたアーティストのその後の活躍を検証した。直近5年間の2009年から2013年までの間にリリースしたオリジナルアルバムが、すべてオリコン週間チャートトップ10入りしていればヒットを「継続」。活動を休止したり、1作でもトップ10入りを逃していれば「中断」と分けた。
ヒットの継続率は全93組中48組の52%。男女別で見ると男性は50組のうち32組で64%。一方、女性は43組のうち、16組の37%と大きく下がる。これはMINMIはじめ出産などでリリースが途切れてしまうケースがあるのと、女性アーティストへの支持が、2006年にデビューしたAKB48はじめアイドルグループへと分散しているためだろう。
キャリアが長ければ「ベスト盤」で人気つなぐ
ヒットを継続するアーティストの直前10年間の活動を見ると、デビュー時期とキャリアにより、リリース戦略は異なることが分かる。
デビューから20年以上のキャリアを持つ80年代以前デビュー組は、2003~2004年の時点で既に厳しい競争を勝ち抜いてきたアーティストばかり。13組中11組と、活動休止などの特別な理由がない限りヒットを維持している。
この世代は、2008年に20周年、2013年に25周年のベスト盤をリリースしたB'zのように、区切りごとにベスト盤をリリースし、存在感をしっかりアピールすることが多い。
また、夏の代名詞と言えるTUBEのように、決まったシーズンにアルバムを定番商品としてリリースするケースもある。
国内の音楽ソフト市場規模は、6075億円を記録した1998年がピーク。この時代に積極的にCDをリリースしていた90年代デビュー組は、37アーティスト中6割半の24組がヒットを継続中。根強いファンを持つ。アニソン、アイドル、「ニコ動」発ボカロ(ボーカロイド=音声合成技術を使用した歌)など、コアファンが分散している現在では生まれづらい、誰もが口ずさめる1曲を持っているのも強みだ。
そんな、スピッツやMr.Childrenといった人気の安定したこの世代は、短期間の休止を挟んだり、数年に1度のアルバムリリースなどマイペースに活動中。間隔を空けても、その存在を忘れられることはなく、むしろファンの飢餓感をあおり、新作は常に話題性を持って受け入れられる。
2000年代デビュー組は多作を貫きヒット継続
一方、2003~2004年の時点ではデビュー5年以内だった2000年代デビュー組は、43アーティスト中13組、ヒット継続率は約3割にとどまる。この世代のアーティストは、音楽配信や無料動画など、音楽の聴き方が多様化し、短期間で消耗される時代に合わせて、常に話題作りを心がけ、短期間でのアルバムリリースを続けている。
トップを走るのは、2000年デビューの倖田來未、2001年にJ Soul Brothersから改名したEXILEら。彼らは、デビュー以来、ほぼ毎年アルバムをリリースし、トップ10内にランクインを続けている。そろそろ90年代デビュー組のように、あえて間隔を空けたリリースに移行する日も近いのかもしれない。
(日経エンタテインメント! 伊藤哲郎)
[日経エンタテインメント! 2014年4月号の記事を基に再構成]
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