夫が変わる、上司が変わる 女と男の会話術
お悩み1 グチをこぼしたいだけなのに解決策を出されてゲンナリ
【賢い話し方】 「グチなんだけど」と初めに断ってから話す
「スーパーが混んでて大変だった」と話したら、男性から「混む時間に行ったからだろ。もっと早い時間に行けば?」と解決策を出されてゲンナリした覚えはない? そうしたとき、女性が求めるような、「大変だったね」というねぎらいの声はない。
その理由を、ひめのともみクリニックの姫野友美院長は、「女性の脳は他者と共感したがる"共感脳"なのに対し、男性は、問題を解決したがる"解決脳"だから」と説明する。
はるか昔の狩猟時代、男性は狩りを担っていて、失敗が続くと生命の危機にさらされた。それが「何が原因か」「どうすれば失敗しないか」を考える習性につながったのかもしれない。それで「男性は単なるグチにも、原因を見つけ解決策を求められていると思いがち」という。
グチを言うときは「グチなんだけど」と初めに断ってから話すといい。男性は"解決不要"と判断し、聞き流してくれる。
逆に大事な相談は、「『相談があるんだけど』と言えば、真剣に聞いてもらえる」(姫野院長)。
お悩み2 テレビを見ている時、お風呂に入るか聞いても生返事ばかり
【賢い話し方】 「今入る? 後で入る?」と質問を二者択一に
テレビを見ているときや趣味に没頭しているときの男性に、「お風呂入る?」などと質問を投げかけても、「あぁ」「うーん」と曖昧な言葉しか返ってこない。これはなぜだろうか。
「女性はテレビを見ながら洗濯物を畳み、そのうえ誰かと話をするなど、複数のことを同時進行でこなせる"マルチモード"脳を持つ。だが、男性はテレビを見ていたらテレビに集中する"ワンモード"脳にできている」と姫野院長。
そのため、この場合は男性が答えやすいように「お風呂は今入る? 後で入る?」と、二者択一の質問をするといい。
女性からすれば、「いちいち丁寧に聞かないとダメなの?」と面倒に思うかもしれない。だが、「コミュニケーションというのは、自分の伝えたいことが相手に伝わらないと意味がない。相手が分かる言葉、分かる質問を相手に合わせて使おう」と姫野院長。男性は目の前のことに没頭しやすいんだと割り切って、質問には一言添えて具体的に聞いてみよう。
お悩み3 何度注意しても靴下を脱ぎっぱなしに。もう、いい加減にして!
【賢い話し方】 「どうしたら片付けてくれる?」と聞き、解決策を言わせる
何度注意しても困ったことを繰り返す男性。姫野院長は、「それは本人が困っていないから直らない」とズバリ!
さらに、片付けない、時間にルーズなど、直してほしい習慣を注意し続けると逆効果になりかねないともいう。「男性はイニシアチブをとりたい性で、人からとやかく言われるのを嫌う」(姫野院長)からだ。
まずは「どうしたら片付けてくれる?」あるいは「いい片付け方法はないかしら?」と聞く。そして、片付けないと物をなくしたり、部屋が狭くなったりして結局時間と労力の無駄になるなど、デメリットがあることを自覚してもらおう。
このとき、「私はどう手伝ったらいい?」と聞いて男性から解決策を言わせるのがポイント。「一貫して男性に決めさせることが重要」と姫野院長。
それでも変わらなければ?
「脱ぎ捨てる場所はたいてい同じはず。そこにカゴを置いておけば……靴下はカゴの中に落下するだけ。部屋が散らからずスッキリ!」と姫野院長。
お悩み4 女性の部下に仕事を任せない上司。企画も流されてばかり
【賢い話し方】 「どちらがいいと思いますか?」と相手の意見を引き出そう
企画や提案をするとき、男性のイニシアチブ欲をくすぐるコツがある。「企画を考えたんですけど、実は迷っておりまして。AとBのどちらがいいと思いますか?」などと、相手から具体的な意見やアドバイスを引き出す質問をすることだ。
「上司は、自分に選択肢が与えられたと思って、書類に目を止める可能性が高くなる。『こんなんじゃダメだ。もっと考えろ』と言われたら、『はい、考えます』と答えておき、『ここがダメですか? ではC案、D案も考えてみましたがどうでしょう?』と、さらに二者択一の質問を重ねる。ケンカ腰ではなく、相手の懐に入る気持ちを持って」(姫野院長)。
この会話術が優れているのは、イニシアチブを男性に握らせつつも、選択肢の中で判断を仰ぐため、無理難題をいわれたりしないところ。「具体的な質問を武器にできれば、実はイニシアチブは自分に移り、相手の術中にはまらずに、自分のペースを取り戻しやすい。説教の多い上司にも有効だ」という。
お悩み5 夫からプレゼントをもらっても、家計からの出費だと思うと喜べない
【賢い話し方】 「ありがとう」と素直に喜んであげて!
結婚後も、誕生日やクリスマスにプレゼントを贈るなんて、夫婦の仲むつまじさがうかがえるエピソードだ。だが、実際には「家計からの出費かと思うと喜べない」など妻として不安がよぎることもあるだろう。「女性は現実的で、男性はとてもロマンチスト」と姫野院長はいう。「そもそも恋愛中のドキドキ感はドーパミンという脳内神経伝達物質が分泌されていて、夫婦になれば、ほのぼのとした幸せを感じるセロトニンの分泌が優位になっていく。だが、プレゼントなどで喜ばせようとする男性はまだドーパミン分泌状態が続いているということ。気持ちをむげにし続けると、夫は妻を喜ばせようとしなくなり、愛情や性欲がなえて、セックスレスにもなりかねない」と姫野院長は忠告する。
夫婦でも素直に「ありがとう!」と感謝することが大切だ。
同様に、外食に誘ってもらって「冷蔵庫の余り物でいいじゃん」と言ってしまうのも、喜ばせようとしている夫をがっかりさせてしまうので注意を。
お悩み6 心配しても、なかなか病院に行きたがらない
【賢い話し方】 本人が行きたくなるように仕向けよう
「男性は自分の弱みを人に見せたくない性。病院に行って何か異常が見つかったとき、逆に悩みが大きくなる。さらに人からいろいろ指図されるのも好きではない。それは医師に対しても同様に働く」と姫野院長。病院嫌いな男性の考えを変えてもらうには「体調が良くなったら、旅行に行こう」などと、ポジティブなイメージをさせるのがお薦めだ。
お悩み7 貯金が苦手な夫。どうして将来に備えられないの?
【賢い話し方】 女性の方が月経など体調が不安定で将来に備えるのが得意!
「男性は体調(内的環境)の変化がなく、1カ月後、1年後も今と同じように働けるだろうと考える。そのため、衣食住(外的環境)が不安定であっても気にならない。それに対して、女性の体は月経周期があり常にアップダウンするから、外的環境を充実させることで安心する」と姫野院長。将来の備えは女性が得意と割り切って、家計管理は女性がした方が良さそうだ。
姫野友美さん
心療内科医。ひめのともみクリニック(東京都品川区)院長。東京医科歯科大学医学部卒業。ビジネスマン、ビジネスウーマンのカウンセリングを多く行い、テレビ、ラジオなどでも活躍。近著『成功する人は食べるものが違う!』(KKベストセラーズ)。
(ライター 茅島奈緒深、日経ヘルス 菅原由依子)
[日経ヘルス2013年3月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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