楽しいノンフィクション「エンタメノンフ」って知っていますか日経エンタテインメント!

エンタメノンフという言葉を知っていますか。正しくは「エンタテインメント・ノンフィクション」。作家の高野秀行さんが提唱している新ジャンルで、人とは違う視点で見た物事を面白く工夫して書いているノンフィクションを指します。近年、様々なメディアで取り上げられることが増え、文芸界で存在感を強めています。この新分野の注目作を、高野さんに10冊選んで紹介してもらいました。
高野秀行(たかの・ひでゆき) 1966年生まれ、東京都出身。早稲田大学探検部時代に書いた『幻獣ムベンべを追え』でデビュー。『巨流アマゾンを遡れ』『怪獣記』ほか著作多数。『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞。(写真:大塚 俊)

高野 まず最初に挙げたいのは宮田珠己(みやたたまき)さんの『晴れた日は巨大仏を見に』。巨大仏は昔から各地に普通にあるものなのに、彼が面白く取り上げたことで、すごく変な物なんだとみんなが気づきました。日常の新しい見え方を提示して、笑える読み物としてのレベルも高い。本人は「エッセーを書いてるだけでルポルタージュじゃない」と謙遜していますが、彼こそエンタメノンフの代表作家でしょう。

内澤旬子(うちざわじゅんこ)さんの『飼い喰い』も素晴らしい。ご本人が豚を飼って実際に食べるまでを記録したドキュメントです。彼女は天然でおかしい人(笑)。何の得もしないけど、私自身が納得したいのだ! という、取材対象へのねじまがった行動力と執念は、大いに見習いたいです(笑)。『飼い喰い』は内澤さんの「と畜場に送られる前の家畜がどのように生きているのかを知りたい」というまじめな欲求が突き抜けていて、本当に面白い。内澤さんも、物事の見方を変える何かを提示してくれる作家です。

高橋秀実さんの『ご先祖様はどちら様』も笑える傑作。この作品で高橋さんは小林秀雄賞を受けられています。エンタメノンフも文壇で出世したなぁと、ひそかにうれしいです(笑)。

「エンタメノンフ」の提唱者である高野秀行さんが選んだ、読んでハズレなしの面白本 ※ 円グラフは、購読者の男女比(全国696店舗のTSUTAYA BOOKS、蔦屋書店での購入データに基づく)を示している。
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