パパの子育て、鍵はチームとの戦術理解
職場を生き抜く「マリーシア」(2)
前回、職場のオフサイドラインについて、周囲のパパたちの意見を聞きながら考えてきました。子育てを理由にどこまでスケジュールを変更していいのかどうか、休んでいいのかどうか、相手(職場)の様子を見ながら悩む点が、果敢に裏のスペースを狙うFW選手と似ているというわけです。
密なコミュニケーションを欠かさず、子育ての「戦術プラン」を共有
新米パパたちと子育ての話をしていく過程で、職場のオフサイドラインの見極めよりも重要なのは、実は身内(チームメイト)の意思疎通と共通の戦術理解なのではないかと思うようになりました。つまり、妻や両親、義父、義母、保育園の先生などと、どううまく連係していくか。
僕自身のまだ短い子育て生活を振り返ってみても、こちらのほうが考えを巡らせている時間が長いです。誰とのコミュニケーションが多いかは、チーム編成によるところが大きいですね。実家が遠い方は、保育園の先生やシッターさんでしょうし、ご近所さんや、友人夫婦なんていう方もいると思います。僕の場合は、両親と義父、義母です。
細かく、頻繁にコミュニケーション
僕と妻、娘(1歳2カ月)が住む家は、妻の実家から徒歩圏内、僕の実家からもクルマで20分くらいのところにあります。ありますというか、子どもが産まれるタイミングで、頼る気満々で引っ越しました。
4人全員が仕事をしていますが、それでも頼れる人が近くにたくさんいるという、夢のメンバー構成です。パパ(およびママ)をFWに例えるなら、スタープレイヤーのMF陣が後ろに構えているといえます。これは心強い。
わが家は、月1回の戦術ミーティングを基に、1カ月分の保育園送迎計画を練って共有。妻の実家、僕の実家にも、娘の服やおむつなどを備え、合宿(単なるお泊まりです)もできる状態に整えています。
4人のスタープレイヤーが優しく見守ってくれて、とても協力的だというのが大きいのですが、我ながらこれはうまく回っていまして、3つの家を行き来している娘は、体調を崩すこともなくご機嫌です。たまに、僕や妻よりも"ばあば"を選んでしがみついています。
ここまでくるには、かなり細かくて密なコミュニケーションをしたと思います。保育園に通い出したのは4月からですが、その前から、かなりの頻度で実家に遊びにいき、こうしたいという戦術プランを話してきました。
義母と同居するAさん(弁護士、30代前半、子ども・1歳、妻・フルタイム)は、協力関係を築くために、家事を頑張ったり、誕生日などの贈り物も欠かさず、外食時にはお会計を持つようにしているといいます。
僕やAさんは、ありがたいことにこれでうまくいっていますが、戦術の共有にとても苦労しているパパがいました。Mさん(コンサルティング会社マネージャー、30代前半、子ども・1歳、妻・フルタイム)は、自身の母親との連係に非常に苦心したようです。
ときにはぶつかり合わなくてはならない……
「うちの子どもが初孫にあたるのですが、『自分は子育て経験者だ』という妙な自信の下、昔のおぼろげな記憶をベースに現在の子育て事情にマッチしないことをしてしまうことが多い」というのです。
例えば、
・ 大人が口をつけたものを子どもに与えようとする(ミュータンス菌の知識がない)
・ 月齢に合わない食べ物を食べさせようとする(何歳のときにどんなものを食べるかという知識が混濁している)
・ 妻への遠慮もあるのか中途半端な関与で、いざというときに手を引いてしまう(ちょっと体調が悪いと面倒を見てくれない)
などとのこと。
こうした問題は丁寧に説明をしているようですが、「母は何でもかんでも自分が絶対正しいと思っている人」。なかなか解決しないようです。
「息子が産まれてすぐに、上から目線の突拍子もないメールを妻に送りつけて紛糾したことがありました。私からすると『あぁ、またか』という内容でも、妻からするとかなり重くて、深夜1時に妻から泣きつかれて明け方まで鎮火作業……。我が親ながらさすがに頭に来てガンガン雷を落としたので、その後はだいぶマシになりました」
ときにはチームメイトと激しくぶつかり合う、強い心を持たなければならないのかもしれません……。
サッカーに例えて子育ての話を書くというお題に、最初は「無理があるよなあ」と思っていたのですが、なんだかけっこうはまっている気がしてきました。
サッカーだけではなく、組織運営とかマネジメントの話にも近くなってきたような。いずれにせよ、パパママだけでなく、多くの人が関わるチームプレーであるということははっきりしてきました。
ソウ・エクスペリエンス 制作チーム。1981年東京生まれ。2004年に新卒で出版社に入社。雑誌やWEBサイトの編集部で、お金や子育て、女性の働き方など幅広いテーマを扱う。2012年に、体験ギフトを手がけるソウ・エクスペリエンスに入社。カタログの編集・制作や体験コンテンツの開拓などを担当。現在、出産祝いや親子向けの新商品を企画中。 https://www.sowxp.co.jp
[日経DUAL2014年6月25日掲載記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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