毎年10万人が介護離職、求められるケアハラ対応
イクメンプロジェクト委員 渥美由喜
仕事と家庭の両立を認めないハラスメントを総称して、著者は「ファミリーハラスメント(ファミハラ)」と呼んでいる。ファミハラは、制度が充実する一方で、職場の風土が追い付いていかない「制度と風土のギャップ」から生じている。
妊娠中の女性社員に対する嫌がらせや、育児休業取得を阻む上司など、ファミハラは様々。そこに最近加わったのが「ケアハラスメント(ケアハラ)」、介護責任を負う社員に対するハラスメントだ。
介護を打ち明けると「管理職の椅子は降りろ」と説教され
Bさん(50歳代の男性)は、親が要介護状態になり、「仕事との両立で不安をおぼえている」と、親しい同期社員に飲み会で打ち明けたところ、あっという間に噂が社内に広がった。途中で話に尾ひれをつけられ、「あいつは親の介護で仕事が手につかないそうだ」「管理職を辞めたいと言っている」とどんどん話が大げさになっていった。
若くして管理職に抜擢されたBさんに昇進昇格で抜かれていた先輩たちの中には、もともと快く思っていなかった者もかなりいた。Bさんを呼び出して、「親御さんのことは気の毒だが、いずれ仕事にしわ寄せがいくのは確実だから、会社の利益を考えればいったん管理職の椅子は降りるべきではないか」と説教する者もあったという。
最終的に、人事総務部門から呼び出され、「君があまり残業しないのは、親御さんの介護のためという噂が立っている。真偽のほどはいざ知らず、そういう噂が立つと夜遅くまで残業している部下に対して、示しがつかないから、残業しなくてもいい部署に異動してはどうか」と打診を受けた。
猛反発して拒否したところ、しばらくして企業グループ内子会社に突然、異動させられた。Bさんは嘆息まじりに話す。「私ぐらいの年齢になると、サラリーマンの出世マラソンも最終コーナーなので、みんなうの目たかの目です。介護をきっかけに、足をすくわれるぐらいなら、社内で打ち明けなければよかった」