靴づくりを通じ、インドネシアの伝統工芸を世界に
リアンナ・グナワン氏
「ウーマンズ・イニシアチブ・フォーラム」基調講演
インドネシアの伝統生地を使った靴を販売する「ラ・スピーナ・コレクションズ」を起業したのは、勤めていた会社で産休をとったことがきっかけだった。子育てで忙しく、ショッピングに行くことが難しい。そこでインターネットで最新のブランドを調べて、似たデザインの靴を自分で作り始めた。
最初は自分で履くために作っていたが、作った靴の写真をネットに投稿すると、友人らから売ってほしいというリクエストがきた。
ビジネスチャンスがあると感じて販売を始めた。当時はインドネシアでフェイスブック(FB)がはやり始めた頃で、すぐに専用のFBページを立ち上げた。パソコンと靴さえあれば事業を始められたのは幸運。趣味で始まった靴の販売に、情熱を感じるようになっていった。
本格的に事業を始めることを決め、一目見ただけでインドネシアのものだとわかる商品を作れないかと考えた。インドネシアの靴産業は衰退しているが、熟練の靴職人はいる。靴作りを伝統工芸の復興につなげるというミッションがある、と考えた。
現在取り扱っている商品は昔ながらの靴づくりの手法を取り入れ、手作りだ。インドネシアの生地「バティック」を使っている。
起業した後も具体的な事業計画は作っておらず、会社運営はやりながら学んだ。当初は人を雇うお金もなかったので、事務作業も営業もマーケティングも自分でやった。全てがチャレンジだった。
事業が軌道に乗った後は、靴職人を見つけるのが新たな課題となった。靴産業は衰退しており、今の若者の中で靴職人になることに憧れる人はほとんどいない。インドネシアの村を巡り、学校を退学した子どもを見つけて、職人にならないかとスカウトして回ったこともあった。
女性起業家の場合、会社のことだけでなく、家庭で良き母であることも求められる。幸いにも夫の支援を受けており、家庭を離れても罪悪感を感じることはない。女性起業家の成功の秘訣は、いかにして家族を巻き込めるかにかかっていると思う。
新しいことを始めるときにはリスクがつきものだ。私はリスクを取ることを選んだ。ラッキーなことに成功できたが、どんな人でも情熱を持ち続ければ夢を達成できると思っている。今後は、国境を越えて事業を展開し、インドネシアの伝統工芸を世界に伝えていきたい。
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