ソニーを頂点にしたピラミッド状の価格体系

インドの家電流通の仕組みは「全国規模の家電量販店、地域ごとに強い販売網を持つ家電量販店のほか、さらに各社の専売店や複数ブランドを扱う零細の家電専門店などが様々に入り交じる複雑な構造」(ソニーインディア)だという。

筆者が滞在しているのはインド最大の経済都市ムンバイ。外国人として零細店の実態を調査するには言語などのハンディがあるため、全国に展開する家電量販店「クロマ」、地域の家電量販店「ビジェイ・セールス」、ソニーの専売店など実売価格が把握しやすいムンバイ市内の計5カ所で実地調査することにした。

早速、各店舗のテレビ売り場に出向いてみる。

家電量販店「ビジェイ・セールス」の店内(インド・ムンバイ市内)

どの店も薄型テレビは携帯電話、パソコンなどとともによく目立つ場所に展示しているのが分かる。品ぞろえが手厚いのはやはり40~42インチと32インチ。店員が客に勧めるモデルも40~42インチか32インチのどちらかが多いようだ。

5カ所で各機種の実売価格を調ベてみて驚いた。

3社の売れ筋商品の実売価格が、示し合わせたかのようにすべて同じなのだ。1ルピー(約1.4円)の違いすらない。

たとえば3D機能付きの40~42インチモデル。

ソニーでは「KDL42W800A」(42インチ)、サムスンでは「40F6400」(40インチ)、LGでは「42LA6200」(42インチ)が売り場で競合しているが、メーカーの希望小売価格(MRP)はそれぞれ8万2900ルピー、8万1500ルピー、7万9000ルピー。そこから割り引いた実売価格は7万9900ルピー、7万7500ルピー、7万5000ルピー。希望小売価格からの値引き率は4~5%程度で実売価格はどの店もまったく同じだった。

値引き率は4~5%、「3強」の価格差は3~4%

32インチだと3社の価格が比較できる競合モデルはソニーが「KDL32W600A」、サムスンが「32F5100」、LGが「32LN5400」。希望小売価格はそれぞれ3万9900ルピー、3万7900ルピー、3万7000ルピー。そこから割り引いた実売価格は3万7900ルピー、3万6500ルピー、3万5000ルピー。希望小売価格からの値引き率は4~5%程度。やはり実売価格はどの店もまったく同じだ。

「ブランド力はソニーが最強。薄型テレビの各機種でソニーを頂点にしたピラミッド状の価格体系が形成されている。3強の中で品質なら客はソニーかサムスンを選ぶし、安さならLGを選ぶだろうね。この価格体系は全国どこでもそれほど変わらないはずだよ」。家電量販店「ビジェイ・セールス」のテレビ売り場担当のブペンドラさんはこう話す。

家電量販店「クロマ」の店内(インド・ムンバイ市内)

3社の価格差はほとんどの機種で3~4%程度。

もちろん一時的な安売りキャンペーンや個別の対面販売での値引き、ネット通販業者の安売りなどがまったくないわけではないが、家電量販店の売り場ではブランド力を背景に「価格差の秩序」が形成されているようだ。

これらの実売価格は店同士の競争の結果の均衡価格とも言えるが、「インドでは小売業の力がまだ弱いので、3強を中心に家電メーカーがかなり価格支配力を握っている」(ブペンドラさん)という事情もあるらしい。

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