泥酔や長居…新型立ち飲み、オレ流マナーに困った立ちっぱなし、貧血で倒れる人も

立ったまま楽しむフランス料理店やワイン居酒屋が増え、「気軽でおしゃれ」と女性や若者に人気を集めている。ただ、混雑する店内で凝った料理を食べる難しさや長時間立ちっぱなしという環境もあり、周囲の客が困惑するふるまいも目立ってきた。立ち飲み・立ち食い店の最新事情とは。

客同士の近さに戸惑う

「高級フランス料理を1人で食べに行くのは気が引けるけど、立ち食いなら気軽」。平日午後4時の開店と同時に「俺のフレンチ・イタリアンAOYAMA」(東京都港区)を訪れた東京都渋谷区の女性大学教員(54)は笑顔で話す。同店は俺の(東京都中央区)が運営する立ち食い業態。予約なしで入店でき、高級食材を使った料理が低価格で食べられることで人気だ。

駅ガード下にある狭い立ち食い焼肉店は女性の人気を集める(東京都千代田区の六花界)

ブランド店が集まる地域とあって、高いヒールの靴やおしゃれな服装の女性客が多い。ところが時間がたつにつれて女性たちは、体の重心を右へ左へと頻繁に変えたり、テーブルにもたれかかったりと姿勢が崩れはじめる。立ち食い店は初めてという渋谷区の女子大学生、藤井文乃さん(21)は「ハイヒールを履いてきてしまい脚が疲れた。できれば座りたい……」と本音を漏らす。

初心者にとって客同士の距離の近さは戸惑いの原因になる。大学生の4人連れは、「グラスを持った手が隣の人に当たって、ジュースをかけて服を汚してしまった」「後ろの人の足を踏んだ」と苦笑い。「次からぶつからないようにテーブルに寄って食べる」と反省する。

トラブルを防ぐため同店では「食べやすさを念頭に工夫を重ねている」(総支配人の橋本健太郎さん)。テーブルは手を置きやすい1メートル強の高さで、脚を休ませるための「脚かけ」やコートやかばんを置くスペースを設けてあり、両手が使いやすい。客の飲食を邪魔しないように料理を運ぶ導線を計算して、テーブルを配置。ナイフやフォークに加えて箸も用意する。

とはいえ、店側が予期せぬ事態は発生する。たとえば、客が立ち続けていることで体調が悪くなるケース。食べている途中に貧血で倒れる人がいるそうだ。

人気店では行列が常。テーブルに案内されるまでに長時間待ち、それから飲食して計3~4時間立ちっぱなしになることもある。「常連さんではヒールが低い靴に履き替える人、足マットを持参してはだしで食べる人もいる」(同)

話題の店で、食べきれないほどの料理を頼む客は嫌がられる。全員が限定の特別メニューを注文しては残すというグループ客もいて、「少しは譲ってほしい」との声も聞こえてくる。

「いきなり泣き出したり、携帯電話で話し出したりするのは困る」と話すのは、銀座の立ち飲みバー「ロックフィッシュ」(東京都中央区)の店主、間口一就さんだ。「立ち飲みはカジュアルスタイルで飲めるのが利点。ただ客の一体感があるからこそ、雰囲気を壊さないように気を使う必要がある」と指摘する。カジュアルだからといって周囲から浮いてしまうような言動や服装はタブーだ。

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