ミラノマダムに学ぶ 40代女性、冬の着こなし術
スタイリスト・清水久美子さんがセミナー
「お節理論」で40代のおしゃれを演出
若い頃とは体形が変わり、お気に入りのブランドが以前ほど似合わなくなってくる40代。何に気をつけたらよいのか。清水さんが提案するユニークな考え方が正月のお節料理に例えた「お節理論」だ。二段のお節では、一の重に紅白かまぼこ、だて巻きなど、二の重にはお煮しめなどが収められる。
「甘く華やかな一の重が20代、30代の女らしさとするならば、40代の第一印象ははそれまでのキャリアや人生経験がにじみ出る、いわば、お煮しめが入った二の重。そのうえで、一の重のかわいらしさをちらりと見せるテクニックを身につけてほしい」
「目指すべきなのは流行に流され過ぎず、奥行きのある女らしいファッション」。お手本として挙げるのが、女らしさの演出方法を知っているミラノマダムたちだ。セミナーでは参加者にスナップ写真を見せながら、ポイントを解説した。
"脚影タイツ"がエレガント
最初に取り上げたのは、すらりと伸びた脚が美しい女性【1】。タイツは冬場の定番だが、選び方を間違うとカジュアルに見えてしまうこともある。きちんとした職場にはふさわしくない網タイツなどは論外。「彼女がはいている、美しい陰影ができる"脚影タイツ"がエレガントです」。無難なのは黒っぽい色だが、店頭では色表示で選ばず、「必ずサンプルに握った手を入れて、陰影や光沢、透け感を確認する。色はグレーと茶が混じったような黒に近い色がいいでしょう」
続いては襟の形に注目してみよう。【2】のコートでは大きめの立ち襟が「顔を小さめに見せる効果があります」。【3】のコートは隙間がある襟ぐりによって「和服の抜き襟同様、女らしさが演出される」という。冬場は肌を覆うことがほとんどだが、袖を少し短めにして手首を見せたり、襟元を開けて首をのぞかせたりするだけで、"女っぷり"が上がるのだそう。
40代になったらベストシルエットを意識
【4】【5】の2人のマダムのかっこよさはどこからくるのか。「サイズに尽きます」。パンツの幅、肩、ウエスト。いずれも2人の体形にぴったりと合っている。「40代になったら、改めて自分にとってのベストシルエットとは何かを意識してください」。自分自身を知る上で大事なことは全身が映る姿見で毎日、チェックすること。清水さんはその際、裸足ではなく、靴を履いて全身のバランスを見ることも忘れないそうだ。「浴用の足マットを1つ用意しておくと便利ですよ」
自らを「お直しマニア」と呼ぶ清水さんによれば、「着なくなった服は実は、サイズが合っていないからということが多い」。時にはとことん、直してみる。「すそとウエストだけでなくパンツの幅、ジャケットの肩や袖丈を直すと発見があるものです」
1つの色をグラデーションで組み合わせる
【6】【7】の女性のスタイルに共通するのが「ワントーン」。小物に至るまで同系色でまとめる、40代におすすめのコーディネートだ。「売り場で、明るいピンクや赤などのストールを『差し色になります』と盛んにすすめてくることがありますが、ちょっと待って。1つの色をグラデーション(濃淡)で組み合わせる方が洗練された印象を与えます」。その際、【6】のように異素材のアイテムを組み合わせたり、【7】のように肌色に近いベージュ系でまとめたりすると「知的でセクシーなイメージが出せます」。
小物使いにも一工夫してみよう。まずは苦手だという人が多いベルト【8】だ。ルールはパンツやコートについている、ベルトループにとらわれないこと。「もっともきれいに見える位置にベルトをする。ウエストを自分で作るんです」。写真の女性のように、重ね着したニットの上に、無造作にベルトをするのがおしゃれだ。「あれこれそろえなくても、明るい茶と焦げ茶の2本があれば万能です」
「揺れる」が女性らしさのキーワード
いまや真夏でも登場回数の多いストールは、マフラーとともに冬場の必須アイテム。清水さんが提案する「巻物」の鉄則は「揺らすこと」。「女性らしさのキーワード。それが『揺れる』です。揺れているものは女性の表情に女っぽさを出します。男性の"狩猟本能"もくすぐるのです」。だからきっちりと畳んで巻いたりせずに、ふんわりとまとう【9】。ロングネックレス【10】も同様だ。ゆらゆらとするくらい長いものをつけるのが効果的。
「最後に蔵出しテクニックを」と紹介したのが「肩掛け」【11】だ。ジャケットでもコートでもそでを通さず、ふわりと羽織ってみる。「レストランに入る時にこれをすると周囲の視線を集めることができます」
セミナーの後半ではイタリアの人気ダウンコートブランド「ヘルノ」の新作を使い、大きな立ち襟による小顔効果や、短めの袖丈でかわいらしさを演出するコーディネートなどを実演した。清水さんは「ミラノマダムのように、女性はいくつになってもセクシーさや女らしさを磨くことを忘れないでほしい。自分に本当に似合うものを知り、使い捨てではなくて長く愛せるものを身につけてこそ、エレガントな女性といえるのではないでしょうか」と話している。
(構成 生活情報部次長 松本和佳)
[11月12日の日経ウーマノミクス プロジェクト「清水久美子のファッションセミナー」の内容を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。