●ちなみに――「我が社がきっかけ」 複数の会社が起源を主張

バレンタインデーの販売額は増加傾向。対象は男性だけでなく、女性の友人にも広がってきている

2月14日はバレンタインデー。もともとはローマ帝国時代のキリスト教の司祭、聖ウァレンティヌスが殉教した日とされる。士気の低下を防ぐため結婚を禁じられていた兵士を保護したり、結婚させたりしたことが皇帝の怒りに触れ、処刑された日だという。

日本でこの日が女性から男性にチョコレートを贈る日として定着したのはなぜか。その起源を巡っては洋菓子店の「モロゾフ説」や「メリーチョコレート説」、百貨店の「伊勢丹説」、「森永製菓説」など諸説あり、はっきりしない。

まずはモロゾフ説。設立翌年の1932年のカタログには、すでにバレンタインデー専用の商品を掲載していたという。また1936年には英字新聞にバレンタインチョコレートの広告を掲載したとの記録も残っている。このことから同社は今年をバレンタインデー開始から80周年と位置づけ、ホームページなどでアピールしている。

メリーチョコレート説はどうか。1958年1月、メリーチョコレートカムパニーの当時の社員にパリ在住の知人から「ヨーロッパではバレンタインデーに男女が花やカード、チョコレートを贈り合う風習がある」と記された絵はがきが届いたという。これをきっかけに同年2月、伊勢丹新宿店でバレンタインセールを実施した。ただ当時はバレンタインデー自体の知名度が低く、売り上げは合計で170円だったそうだ。このときの反省から翌年にはハート形のチョコレートを用意。「年に1度、女性から男性へ愛の告白を」というキャッチコピーも奏功し、現在のバレンタインデーの基礎になったと指摘している。

「当社の積極的な広告活動がバレンタインデーの存在を日本中に知らしめた」と主張するのは、森永製菓。1960年に同社が新聞や週刊誌などに積極的に広告を掲載したことや、高級腕時計があたるキャンペーンなどを実施した成果と強調する。同社がその後、実施したバレンタインデーの知名度調査によると、キャンペーン実施前と比べて大幅に上昇したという。

このほかにも様々な企業がバレンタインデーの起源を主張しているが、いずれにせよ各社のこうした努力が実って現在のようなチョコレートを贈る風習が定着したこと自体は間違いないようだ。

バレンタインデーシーズンのチョコレートの販売額も増加傾向にあるようだ。チョコレート製造会社などで作る日本チョコレート・ココア協会(東京・港)は、現在の国内のバレンタインデーシーズンの販売額は600億円程度に達していると推計する。最近では女性から男性に贈る「本命チョコ」や「義理チョコ」に限らず、女性同士が贈り合う「友チョコ」といった新しい風習も定着し始めている。また「インターネット通販などで都市部の有名店のチョコレートを取り寄せたりして楽しんでいる」(同協会)ことなども背景にあるようだ。

●記者のひとこと――今年は「逆チョコ」、渡す側になろうかな!?

「チョコレートって、こんなに高いんだ」。試食会用の買い出しで百貨店を訪れた際、勉強がてらチョコレート専門店をのぞいて驚いた。2個入りのボンボンショコラが約1000円、4個入りだと1500円……。「今週の3つ星スイーツ」の担当になって、それなりの数の洋菓子や和菓子を購入してきたが、ここまで高価だと感じたのは初めてだ。

そういえば妻が毎年くれるチョコレートも、それなりに高級感のあるものだったような気がする。小さなチョコレートと甘く見て、無造作に食べていた自分を思わず反省。最近はバレンタインデーに男性から女性へ贈る「逆チョコ」も増えていると聞く。今年はもらうだけでなく、渡す側にも回ってみようかと思った。(藤井良憲)

●「日経スイーツ選定委員会」とは

専門委員と日経記者で構成。専門委員は豊富な経験に基づいた通らしい視点で、記者はビジネスパーソンとしての素直な視点で評価。まず、専門委員の意見を参考に書類に基づく第1次審査を実施し、10商品を候補に選定。次に、厳選された10商品を実際に全員で食べ比べ、専門委員の意見を中心に合議制で「3つ星」「2つ星」「1つ星」を決める。

●専門委員の横顔(五十音順)

下井美奈子さん

1973年生まれ。実家の母が菓子教室講師ということから、子どもの頃からスイーツの食べ歩きや菓子作りを行う。一般企業を退職した後、パリの料理学校「リッツ・エスコフィエ」で料理・製菓の資格取得。またパリの製菓料理学校「ル・コルドン・ブルー」「ルノートル」で学び、2年間のロサンゼルス在住中にも各国の製菓・料理を習得。情報サイト「オールアバウト」では立ち上げの2001年から、スイーツガイドを担当。多数のメディアで洋菓子情報を紹介するほか、商品開発、レシピ提供を行うスイーツコーディネーターも務める。共著に「TOKYO美食パラダイス」など。

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。お菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心としたお菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べるお菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。