一般職、自分らしく道開く 家庭・育児と両立考え
女子就活模様(下)
学生の8割が就職希望という白百合女子大学(東京・調布)。授業がない日も、就活生がキャリア支援課に集う。
ある学生は「総合職として、旅行や教育業界でバリバリ働きたい」と話す。もっとも、これは少数派。「就活の最初の段階では一般職を希望する学生の方が多い」(キャリア支援課の木村喜昭課長)という。
相談員との面談にきていた一般職志望の3年生は「多くの総合職には転勤がある。結婚や出産を考えたら、一般職の方が仕事を長く続けやすい」と考える。
今春、希望通り大手金融機関の一般職に就職する4年生の学生は「総合職は考えなかった。地域に特化して、接客の仕事がしたかった」と話す。
「派遣社員や契約社員も全く考えなかった。長期雇用が保障される正社員で窓口業務ができるのは一般職だった」。地域限定の正社員として働きたい学生に、一般職は魅力的な職種に映る。
津田実紀さん(23)は昨年4月、丸紅に一般職として入社した。食品の企画開発に興味があったが「結婚も出産もしたいと思うと、転勤が多い仕事は難しい」と考えて一般職にした。
丸紅は2000年に中断した一般職採用を08年に再開した。一般職に任せていた業務を派遣社員などに移したら「ノウハウの継承が難しくなった」(人事部)。毎年20~50人の採用に対し、女性ばかり3000人近い応募があるほど人気だ。
ただ最近の一般職の仕事は様変わりしている。顧客とのやり取りや海外出張もこなし、総合職と見分けが付かない人も多い。「業務に区分はない。違いは転勤と管理職登用がないことくらい」(人事部)
一般職をステップと考える女性もいる。吉原えりかさん(23)は総合職の志望が破れた時、「一般職でもやりがいのある仕事ができるよ」という先輩の言葉を思い出して一般職に応募、昨春採用された。出張も残業もこなすが「総合職は一般職にはない仕事の責任を負っている」。丸紅には総合職へのコース転換制度がある。「3年目までに挑戦したい。海外駐在もしたいし、給料の差もある」という。
同じ一般職でも、位置付けは十人十色だ。
IHI経営企画部の小出佳奈さん(24)は入社4年目の一般職。幹部2人の秘書業務に加え、管理業務を担う。短期大学出身で、最初から志望は一般職だけ。「サポート役の方が、私らしく働ける」。同社東京本社の一般職採用は年5~10人。公募はしない。採用実績のある都内の短大数校に求人票を出し、各学校の推薦者を対象に選考する。
金融機関も新たな職種別採用を始めている。
第一生命保険は10年度から総合職、一般職という分類をやめ、グローバル職とエリア職の採用に切り替えた。仕事内容も昇進などの条件も同じ。異なるのは転勤の有無だけだ。今年4月入社予定のグローバル職は91人、うち女性は8人。エリア職の67人は全て女性だ。
新制度1年目にエリア職で入社した渡辺真菜さん(26)は昨夏、米国再保険会社の海外研修に応募、参加した。リスクマネジメントのあり方など、現在の業務を超え、幅広い知識を学んだ。
三井住友銀行も08年、一般職を「BC(ビジネスキャリア)職」に変更。職種を転換しなくても管理職に就けるようにし、事務などに限られていた仕事の範囲も広げた。
仕事の差が小さいのに、なぜ職種別採用が必要なのか。05年から転勤の有無でコースを分けて採用している三菱UFJ信託銀行は「入り口で働き方の選択肢を見せる方が、学生が選びやすいから」(人事部)という。
ニッセイ基礎研究所の松浦民恵主任研究員の調査によると、一般職などコース別雇用管理制度を多くの大企業が導入したのは、男女雇用機会均等法が施行された1986年以降。そして今も一般職のほとんどを女性が占め、依然ニーズはある。
しかし、松浦さんは働き続けたいと考える学生が一般職を選ぶことについて「キャリアの上限がある仕組みで、40~50代までモチベーションを維持できるか考えるべき」と指摘する。
一般職は多様化し、総合職と両方を志望する学生もいる。その日常業務に、一見違いを感じさせない企業も多い。ただ、民間企業の就活ではなぜ事実上女性だけが働き方の選択を迫られるのか。均等法施行から28年。進路決定に揺れる学生の姿は、なお均等から遠い、働き方の現状を映し出しているのかもしれない。
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