トレンディエンジェル、自虐ネタで引っ張りだこ
昨年12月に「M-1グランプリ2015」で優勝したトレンディエンジェルが露出を増やしている。メガネにちょうネクタイ、半ズボン姿のたかし(左)に対して、スーツ姿のキザな斎藤(右)が自らの薄毛を最大限に生かしたボケを次々に畳みかけるのが特徴。時事ネタやヒット曲、トレンドワードなどもふんだんに盛り込み、スピード感あふれる漫才で観客の心をつかんでいる。
M-1では準決勝敗退から視聴者投票で敗者復活し、優勝を決めた。「敗者復活だったので、当たって砕けろの気持ちでやったのがよかった」と2人は声をそろえる。
優勝後はCM出演をはじめ、企業や映画のPRイベントなどに引っ張りだこ。もともと「エンタの神様」(日テレ系)のハゲラップや、歌うま芸人(斎藤)で知られていたが、その勢いに加速がかかった。たかしは現在の忙しさについて、「自分の実力以上に仕事が舞い込んでくるんで、ちょっと多いなと」と謙遜しながら笑う。
結成は05年4月。吉本総合芸能学院(NSC)で元営業マンの斎藤と高校卒業後に同級生同士で入学したたかしが出会い、たかしが斎藤を誘う形でコンビを組んだ。「アメトーーク!」(テレ朝系)で"オリラジ同期芸人"として取り上げられたように、事務所の同期ではオリエンタルラジオ、はんにゃ、フルーツポンチなどが次々にブレークしていった。そんな同期に対して、斎藤は「あいつらがいたからM-1を獲ったぞ、追いついたぞっていう思いがあります」と明かす。
「はやり物が好きだし、それしかできない」(斎藤)、「10年前とやってることは同じ」(たかし)と語る漫才で頂点を極めた。課題は「トーク」だ。斎藤は「ライブとテレビでは"間(ま)"が違う。編集でなんとか面白くしてもらっている感じ」と語り、たかしも「一人ひとり細かくコメントを求められるテレビは、ライブよりゆっくりしたテンポ。それになかなか慣れない」と同調する。
めまぐるしく環境が変化する中、4月からは全国ツアーというコンビにとって初の試みも。その内容は、「歌が7割」と斎藤。となると歌わないたかしの出番は……?
「踊るか盛り上げるか裏にいるか。僕はジャニーズになりたいんですけど、こいつはお笑いがやりたい。写真を撮る時に方向性の違いが如実に出ます」(斎藤)。言われっぱなしのたかしは「お笑いの斎藤さんは仮の姿」と、相方の立ち位置を一言で説明してくれた。
実際、ライブでは斎藤に対してキャーという声援も上がる。"薄毛なのにナルシスティックなキャラ"という珍しいタイプの芸能人として、どこまで活躍の場を広げるのか。そのとき相方はどのような立ち位置にいるのか。アイドルのように会場を沸かせる薄毛の漫才師、ちょっと見てみたいではないか。
(「日経エンタテインメント!」4月号の記事を再構成。敬称略、文・遠藤敏文、写真・中村嘉昭)
[日経MJ2016年4月8日付]
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