オネエキャラとハーフ系がテレビ界で重宝される理由
日経エンタテインメント!
日本と外国、女性と男性 2つの視点を持つから強い
バラエティーやCMなど、テレビ界でハーフ系タレントとオネエキャラが引っ張りだこだ。ハーフ系タレントは、ベッキーのような番組MC系や、トークで持ち味を発揮しているホラン千秋、モデル出身でバラエティーでも活躍するマギー、女優活動に磨きをかけるトリンドル玲奈ほか、全方位で新しい人材が生まれている。
対するオネエキャラでは、8本のレギュラー番組を持ち、CM契約も7本というマツコ・デラックスの功績が大きい。IVANやGENKINGのように、テレビでオネエキャラを告白するケースも増えた。
小中学校でも2つの国籍を持つ子どもは珍しくなくなり、ジェンダーをめぐる理解も広がりつつある現代社会が反映されていることがあるが、「ハーフ枠」「オネエ枠」なる言葉も登場するほど重宝がられているのはなぜか。
『天才!志村どうぶつ園』や『幸せ!ボンビーガール』の総合演出を務める日本テレビの清水星人氏は「心に2つの視点があること」を彼らの共通の魅力として挙げる。ハーフ系の場合、両親の国籍が異なることで、生まれながらに2つの文化に挟まれて育つ。そのため、「当たり前のことを当たり前だと思わなかったり、多面的なものの見方や考え方ができる人が多いと思います」と分析する。
『志村どうぶつ園』の1コーナー「日本犬の里」では、3人のハーフ系タレントが出演しているが、最初からそうしようと決めていたわけではなかった。「古来からいる日本犬のかわいさや、日本の原風景を再発見しようというのがテーマで、それを伝えるのに誰がふさわしいか。オーディションでいろいろな方とお話ししていくなかで、日本以外にもうひとつのアイデンティティーがある人がいいんじゃないかと感じたんです。実際に彼らは、普通すぎて僕らが気付かないような何気ないところにも日本の良さを見出してくれています」
自分にないものに引かれる
一方のオネエキャラの場合は、女性と男性のいいところを持ち合わせている。「言うべきことはズバリと言うけれど、きちんとフォローがありますよね。また、例えば自分の作品を世に出したいとき、男性は"評価は後からついてくればいいんだ"という人が多いですが、女性だと"見て見て"と意思表示する。その両方が備わっていて、アピールしながらも引き際を心得ている、そのバランス感覚は絶妙です」
『幸せ!ボンビーガール』に出演している植松晃士とは、清水氏がかつて手がけた『おネエ★MANS!』(2006~2009年)からの付き合いであり、トークはもちろん、収録後にもらす鋭い意見に助けられることもあるという。「VTRの作りなどで男の目線に偏ったときなど、『20代の女の子はああいう見方しないよ』とか、うまくこちらに伝えてくれます」
芸能人の私生活をネタにするバラエティーが増え、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの普及で一般の人との距離感も近くなり、タレントの内面を重視する視聴者が増えた。「人となりに関心が集まるなかで、自分にはない深みを持つ人に引かれるのは自然な流れなんだろうと思います」
2つの要素を兼ね備えたハイブリッドなキャラはどちらもタレントとして武器になり、今後もテレビ界で求められていきそうだ。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2015年12月号の記事を再構成]
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