ビジネスリュックの定番「ノース・フェイス」に迫る
アウトドアブランドのリュックの主力は、やはり登山用のバックパック。しかし最近は多くのアウトドアブランドがPC収納付きのビジネスリュックを発売している。なかでもこの分野に力を注いでいるのが「ザ・ノース・フェイス」だ。
2012年春に登場した「シャトル」シリーズは、マイナーチェンジを繰り返しながら現在も発売されている人気シリーズ。ラップトップPCとタブレットが同時に入る蛇腹式の専用コンパートメントのほか、電源コードやモバイルルーターなどの電子機器を収納するオーガナイザーを備える。
アップル向けバッグがきっかけ
それ以前に、ザ・ノース・フェイスには、アップル製品の収納に最適化された「バイト」シリーズがあり、2010年から1年半、アップルストアで販売されたことでブレイク。「バイトを作ったおかけで、アウトドアブランドに接点のない人たちにも、ザ・ノース・フェイスというブランドが広く認知されるきっかけになった」と、ゴールドウイン 事業総括本部 ザ・ノース・フェイス事業部 ハードグッズグループ マネージャーの狩野茂氏は話す。
「バイト」の成功を受け、アップル以外の機器にも対応するシャトルシリーズを開発。トレッキング用バックパック作りで培った技術を投入し、PCやタブレットを収納して快適に背負えるタウンユース向けリュックが完成した。実はもともとトラベル用のリュックとして打ち出したものだが、収納性の高さに加え、長方形でシンプルなデザインであることからビジネス向けリュックの定番商品になっている。「東日本大震災やスマートフォンの普及をきっかけに、両手が自由になるリュックの需要が高まった。ビジネスシーンでもリュックは一般的になり、スマホが操作しやすいこともあって支持されている」(狩野氏)
アウトドアブランドはバックパック作りのプロフェッショナル。重さを感じさせない設計で背負い心地は快適。さらにラップトップPCなどデジタルデバイスを整理して収納できるので、ビジネス向けリュックとして申し分ない。機能が充実しているにも関わらず、人気のビジネスバッグブランドやファッションブランドに比べて価格が安いのも大きな魅力だ。
トレランパックから着想を得た背面収納
シャトルデイパックをもう少し詳しく見てみよう。2016年春夏の最新モデルは従来より開口部が大きくなり、またバッグが自立するように設計されて使い勝手が向上している。
ボディの素材も一般的なビジネスバッグに使われる重厚な1680Dナイロンから、軽量な1050Dナイロンに変更。薄くなったが、インビスタ社のコーデュラバリスティックナイロンを使っているため、強度は増しているという。ショルダーハーネスに関しても、強度を確保しながら薄くして上品に。「薄くすることでよりフラットな見え方になるように、シンプルなデザインを目指した」(狩野氏)。
フロント中央にあるポケットのファスナーも見えないように設置し、バッグの縫い目も極力目立たなくすることで、スーツにも合うミニマルなデザインに仕上げている。ブランドロゴを黒一色に変更したことからも、シンプルさを追求していることがうかがえる。旧作とサイズはほぼ同じだが、見え方としては薄く軽くなり、よりタウンユースしやすくなっている。
もちろん背負い心地にもこだわり、背面にクッションパッド、肩に当たる面には吸汗速乾のエアメッシュを搭載するなど快適性はキープ。
コンパートメントは2層式で、背面側にラップトップPCとタブレットを同時に収納でき、前面側が大容量のメインコンパートメントになっている。それぞれが独立した構造のため、PCを取り出すときは背面側のコンパートメントを開けるだけでいいので、ほかの荷物をかき分けたり取り出したりする必要がない。今では当たり前になっている構造だが、これはトレイルランニング用パックから着想を得たもので、ザ・ノース・フェイスが先駆けといえる。
山中を駆け抜けてタイムを競うトレイルランニングに用いられる小ぶりなパックには、ハイドレーション(ランナーの水分補給用のタンク)を入れるスリーブが付いている。レース中、このハイドレーションに水を補給する際はバッグ内の荷物を出さなければならなかったため、時間を非常にロスしていた。そこでハイドレーションの部屋を独立して設けることで、素早い補給を可能にした。このハイドレーション収納の考え方から、シャトルシリーズなどに見られるPC用の独立コンパートメントが生まれたという。
(ライター 津田昌宏)
[日経トレンディネット 2016年3月22日付の記事を再構成]
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