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抜きんでた発想の妙 「公方様のお通り抜け」

第7回日経小説大賞座談会特集

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NIKKEI STYLE

第7回日経小説大賞(日本経済新聞社・日本経済新聞出版社共催)の授賞式が2月26日、東京・日経ホールで開催、一般公開された。贈呈式に続く座談会では、「公方様のお通り抜け」で受賞した西山ガラシャ氏と、選考委員の辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の3氏、また歴代の受賞者である長野慶太氏、芦崎笙氏、紺野仲右ヱ門氏(信吾氏・真美子氏)が、受賞作や小説の執筆をめぐって話し合った。(司会は編集委員 宮川匡司)

選考理由

司会 ペンネームは細川ガラシャから取ったのですか。

西山ガラシャ氏 はい、細川ガラシャの名前から借りてきました。クリスタルグラスのような音の響きが気に入って付けたんです。受賞後、多くの人から「大胆すぎる」「ふざけている」と突っ込み続けられて段々気恥ずかしくなってきたんですけれども、受賞を引き寄せたラッキーネームなので、今は開き直ってこの名前でいこうと思います。

司会 選考委員の皆さんは、受賞作を選んだ理由は何だったのでしょうか。

伊集院静氏 今、新人の方が応募してくる時代小説は、パターン化されたものが多い。こういう時代小説が良い小説だろうという思い込みがあって、逆に面白味をなくしている。その中で受賞作は発想が少し違っていた。普通で考えると、将軍と、たかだか屋敷の庭に出入りする御用聞きに接点が起こるわけがないのに、リアリティーを越してうまくストーリーを作っている。そこが抜きんでていた。

辻原登氏 文章のリズムがすごくいい。ややこしい比喩を使ったりしないで、出来事をきっちりと順を追って書いていく。しがない農民がケチな奉行を「やりましょうよ、やりましょうよ」とせっつきながら、どんどん夢を膨らませていく。夢の膨らみと、それを現実にしていく、このテンポがいいんです。うまくかみ合っている。

司会 高樹さんは若干の留保があったようですね。

高樹のぶ子氏 ええ、今の話を聞いても、男は甘いなあと(笑)。やはり女性がこういう話を書くときのある種の甘さがある。「男はごまかせても、女はなかなかごまかせないよ」みたいなところがちょっとありました。私はもうひとつ何でガラシャなのよという気持ちもあった。細川ガラシャのキャラクターに吸い寄せられたのですか。

西山氏 いいえ、もう思いつきで、音だけで。

高樹氏 音……。

伊集院氏 名前はいいですよ。伊集院静でも伊集院光でも同じですから(笑)。私も随分ペンネームのことは言われた。それを超えるものを書けばいいんだけど、ガラシャだと結構かかるのかな。

司会 受賞作の設定はいかがでしたか。

辻原氏 松平定信が寛政の改革を押し進めた倹約の時代に家斉という将軍が屋敷にやってくることにして、百姓と奉行がコンビでいろんな仕掛けを作り、庭を造っていく。そういう設定はすごく面白い。かつリアル。

伊集院氏 面白いのが一番。当時、将軍の学ぶ書物に中国の漢詩があり、そこには必ず中国の風景が出てくる。それを具体的に想像しようとすると、ミニチュアの庭がいる。東海道五十三次の宿場町のミニチュアで作って楽しむことがはやっていた。

司会 受賞作の舞台で早稲田大学の近くに今も残る箱根山もその一つですね。

伊集院氏 そういうことも含めて早稲田のあの辺りに作るという発想は面白かった。面白いのが一番だよ。難しいのはダメ。みんな毎日働いて、疲れてから本を読むんだから、役に立つか、面白くなきゃだめ。色々意見はあるでしょうけどね、純文学系の人には。

司会 面白いという事でいえば、受賞作は主人公たちが将軍を楽しませようという発想。今はやりの言葉を使うと「おもてなし」の文学です。

辻原氏 小学館の「日本国語大辞典」によると、「もてなし」とは「人に対して、自分の望む結果が得られるようにしむけること」とある。何のためにおもてなしをするかというと、もうけてやろうとか、こっちへ仕向けてやろうと思うから。それがもてなすということになるんです。

高樹氏 この小説の主人公は何をもくろんでるの?

辻原氏 お金もうけ。

高樹氏 分かりやすい。主人公はもうかったの?

西山氏 もうかっています。

辻原氏 そこがいいんです。まさにおもてなしの心(笑)。それを権力者に対してやっているからいいんです。

高樹氏 権力構造を意識して書いてはいないのですか?

西山氏 意識しなかったですね。御用聞きが殿様と直接しゃべって庭を案内するのは、ちょっと変かなとは思いましたけれども。

伊集院氏 それはちょっとどころじゃない、相当変だよ。

歴代受賞者と

司会 この辺で過去3年間の受賞者をお呼びしたいと思います。皆さん、受賞後はどのように過ごされていましたか。

長野慶太氏 おかげさまで受賞の後、2作、本を出させていただきました。3作目に取りかかっておりますけれども、いただいた賞は、私にとって本当に大きな励ましになっています。

芦崎笙氏 2年前に受賞いたしまして、その後、私も2作ほど小説を出させていただいております。受賞したときは財務省におりましたが、昨年から関東信越国税局長を務めております。非常に硬いというか、生真面目な組織でございます。第2作では、かなりエッチな情景を書いたりしているもんですから、そういう小説を書く人間が組織のトップに来るというのは、決して歓迎はされていないなという感じであります。

司会 昨年の受賞者紺野仲右ヱ門氏は、ご夫婦による共作です。

紺野信吾氏 紺野仲右ヱ門の夫です。これは、この間、出たばかりの本、「携帯乳児」です。携帯乳児というのは、女性の受刑者が刑務所で産んで、ちょっとの間育てる新生児、乳児のことを指しています。その携帯乳児にたどり着くための小説で、生命の「生」と男女の「性」を書きました。

司会 それぞれ苦労されていることはありますか。

紺野真美子氏 一度デビューしたら、自分の足で立たないと、先に進む小説は書けないというのがあって、この1年、どこか緊張した感じで小説に向かってきたように思います。

司会 選考委員の方々のご感想は。

伊集院氏 ちょっと暗いね(笑)。小説家になったからものすごく楽しいことがあったということを、嘘でも言ってもらわないと。小説を書く人がいなくなっちゃう。

高樹氏 2作、3作と作品を出していっていることは、私たちが最初に希望したことなんです。最終的に直木賞か何かを取って、盤石の形になってほしい。

辻原氏 とにかく良い本をどんどん読むしかないと思うんです。出来のいい小説を何度も、あるいはたくさん読むことでしか、小説を書く力はついていかない。これからもどんどん書けというよりも、どんどん読んでほしいと思います。

司会 書き続けるためには何が必要でしょう。

高樹氏 キーワードは「欲望」じゃないかと思うんです。どこかで満足しちゃったら、そこで止まっちゃうような気がするから、果てしなく欲望を持ち続けてほしいと思います。

伊集院氏 欲望は大事だと思いますよ。辻原さんが言った読むということも非常に大事。書く、読む、書く、読むを繰り返す。

西山氏 よく読んでいるとは言えないので、読み、書き、読み、書きで頑張りたいと思います。

高樹氏 でも、よく調べていらっしゃるよね。

西山氏 よく図書館や美術館、博物館の図録を見ています。小説を書こうという目で読んでいると、ここが使いたい、あそこが使いたいと感じます。

高樹氏 調べてこういうことを書きたいと思ったとき、裏も想像してほしい。意地悪な目でそれを見直してみる。その分だけ小説に厚みが出る。西山さんはすごくいい人なのよ。だけど文学の上では嫌な女になって世界を見直してほしい。

司会 高樹さんはいい人と思っていたんですが、実は嫌な女なんですね。

高樹氏 そんなの当たり前でしょう。

司会 では西山さんもぜひ、嫌な女に。

西山氏 目指したいと思います。

   ◇   ◇

「公方様のお通り抜け」で受賞、西山ガラシャ氏「調べて書いて、今後も地道に」

このたび日経小説大賞をいただきまして、大変光栄に思います。10代の頃から小説の断片のようなものを書いており、6年くらい前から時代小説に取り組み始めました。歴史から題材をとるには、書く時間以上に調べる時間も必要で、調べて書いて、調べて書いての繰り返しで書いてきました。

受賞作の「公方様のお通り抜け」もまた、調べて書いての繰り返しででき上がった小説でございます。今回、幸運にも日経小説大賞をいただきましたが、受賞したからといって急に小説を書く能力がアップするわけでもなく、これまでどおりコツコツと地道に書いていくしか方法がございません。

これまで以上に真摯に、登場人物や文章に向き合いながら、精進していきたいと思っております。どうかこれからも末永く見守ってくださいますよう、よろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。

   ◇   ◇

第8回日経小説大賞、来月受け付け開始

◇応募資格 日本語による自作未発表作品。新人に限らない。二重投稿は失格(他の文学賞で公表された最終候補作も応募不可)。
◇枚数・応募方法 400字詰め原稿用紙300枚から400枚程度。1200字以内の内容要約文と題名、枚数、氏名(筆名の場合は本名も)、住所、電話番号(メールアドレス)、生年月日、現職、略歴を明記した別紙を必ず添付してください。ワープロ原稿の場合、A4判用紙に縦書きで印刷し400字詰め換算の枚数を明記のこと。原稿用紙もしくは印刷用紙での郵送に限ります。
◇応募受付・締切 2016年4月1日受け付け、6月30日締切(当日消印有効)。
◇宛先 〒100-0004 東京都千代田区大手町2-2-1 日本経済新聞出版社「日経小説大賞」係。
◇発表 2016年12月の日本経済新聞朝刊。同年10月に最終候補作を発表します。
◇賞金 500万円。受賞作は単行本化。
◇注意事項 応募作品は返却しません。選考に関する問い合わせには応じられません。受賞作の出版権、映像化権などの二次的権利はすべて日本経済新聞社と日本経済新聞出版社に帰属します。

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