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「ごみ箱前の渋滞」が生んだ針なしステープラー

コクヨ 「ハリナックス」シリーズ

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NIKKEI STYLE

日経デザイン

コクヨが2009年12月に発売した針を使わず紙をとめるステープラー「ハリナックス」は、その後もシリーズ商品を拡充し、トータルで累計販売台数700万台(2015年4月末時点)に達するヒット商品となった。だが実は、針を使わず紙をとめる技術そのものは100年程前にすでに存在していた。いわば「枯れた技術」だ。

ハリナックスの開発陣はその枯れた技術にさらに工夫を加え、機能やサイズを改良。針なしステープラーを一気に普及させることに成功した。たゆまぬカイゼンこそ日本のモノづくりの真骨頂であることを象徴する商品だ。

ごみ箱前の人だかりにヒント

ハリナックスの開発者、ステーショナリー事業本部クリエイティブプロダクツ事業部クリエイティブ戦略部の青井宏和・商品企画革新グループ課長が針のないステープラーという商品企画を思い付いたきっかけの1つは、オフィスのごみ箱だったという。

ごみ箱やシュレッダーの前に、人が何人も滞留していた。理由を尋ねると、ごみの分別や裁断のためにステープラーの針を外しているという。自分自身、ネクタイにステープラーの針をひっかけてほつれさせてしまったこともあり、青井課長は針のないステープラーが出来ないか、と思いついたと言うのだ。針がなければ、異物混入や誤飲といったリスクも減り、ごみの分別も楽になるなど、さまざまなメリットがある。

「メリットがすぐにたくさん思い浮かぶのは良い企画」と考える青井課長は、すぐに知的財産の担当者に特許関連の情報収集を依頼し、さらに自らも針を使わずに紙をとめる方法について思案をめぐらせた。

「刃で切り込みを入れ、そこに紙の"舌"を折って差し込んで、とめる」というハリナックスと同じ仕組みが、すでに約100年前の特許として存在することが分かったのは、そのときだ。「この技術は使える。改善の余地が十分ある」。それは開発者としての青井課長の勘だった。

小さなボディーに10件以上の特許

針なしステープラーは100年前から存在したのにもかかわらず、一部の特殊な用途を除いて広く普及しなかったのはなぜなのか。「サイズが大きく、とじる力も弱い」という弱点があったからだ。

その弱点を解消するために、青井課長は、基本となる「刃と、とじる機構」そのものに目を付けた。いわば心臓部だが、「100年もたつのに、ほとんど進化していなかった」ことから、逆に改善の余地あり、と見たのだ。結果的に、この心臓部を改良することでとじられる枚数を増やしたことが、ハリナックスの大ヒットの原動力となった。

その仕組みはこうだ。当初、紙の"舌"を通す穴は「I」形だった。青井課長は、これを「H」形にしようと考えた。この穴は紙の"舌"が2つ折りの状態で通るところなので、Iだと穴の幅が狭すぎ、"舌"が厚すぎると通らなかったり、穴が裂けたりする。一方、H形の穴は観音開きのように幅が広くなるので、より多くの"舌"を通せる。しかも穴をスムーズに通るので、より小さな力でとじることができるというわけだ。

ところが、このH形には1つ、難問があった。I形に比べて刃の形状が複雑になることだ。当初は2枚の刃を重ねてH形刃にすることも検討したが、製造コストがかかる。青井課長は、これを1枚の金属板から特殊な加工なしに簡単に作れる方法も考案した。

H形刃を使ったステープラ―とそのH形刃の製造方法は、2014年に「全国発明表彰」の「発明賞」を受賞することになる。ちなみに、ハリナックスシリーズ全体で取得済み特許は、「刃及び綴じ機(特許第5152232号)」など10件以上に及ぶ。

顧客の声に応え続ける

こうして誕生した2009年12月発売の「ハリナックス(2穴タイプ)」は折からのエコロジーに対する社会の関心の高まりもあって話題となり、2010年7月発売の小型タイプ「ハリナックス(ハンディ4枚)」も大ヒット商品となった。だが、ここで終わらないのが日本のメーカーだ。その後もユーザーの声を積極的に反映させ、次々に改善を加えた新製品を作り続けている。

2011年5月の「ハリナックス(ハンディ8枚)」は、紙の"舌"の先端を矢印型に変更し、ひっかかって抜けにくい構造を採用。とじ枚数を従来の2倍の8枚に倍増させた。2012年には手のひらサイズのコンパクトタイプも投入。2013年にはハンディタイプで10枚とじを可能にした。

2014年10月に発売した「ハリナックスプレス」は、ユーザーの「書類に穴を開けたくない」というニーズを受けて、コア部分から新開発した最新モデルだ。従来の「穴を開けて……」という機構に執着することなく、顧客の声に素直に応える。しかも高いレベルで。そんな姿勢も日本のモノづくり企業の持ち味だろう。

(日経デザイン 花澤裕二)

[日経デザイン2016年1月号の記事を再構成]

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