「窮屈な時代こそ、笑える映画を」 山田洋次さん
「虹をつかむ男 南国奮斗篇」(1997年)以来19年ぶりの喜劇「家族はつらいよ」(3月12日公開)を監督した。
「いつだって喜劇を作りたいと思っている。観客が大笑いしてくれる映画は夢だよ。お客さんだってそういう映画を見たいんじゃないかな。でもできない。日本映画もアメリカ映画もテレビドラマも文学もみな深刻になってしまった」
「社会の奥にメスを入れる映画も大事だけど、作り方としては楽なんだ。ふっと一息ついたら、滑稽な人間たちがいて、思わず笑って、人間性を回復していく。そういう映画の方がはるかに難しい」
「窮屈で不安と危機感に満ちた時代だからこそ、笑える映画を作らないといけない。緊張をあおるのではなくて、ユーモアを交えながら話し合おうじゃないかと。でもそれがなかなかできない」
「楽天的になるのは難しい時代だ。でも楽天的でないと喜劇はできない。喜劇とは、くだらないジョークでなくて、人間ってなんて愚かなんだろうと思ってつい笑ってしまうもの。それを作るには人間をちゃんとわかってないといけない」
小津安二郎にささげた「東京家族」(2013年)の主要キャストが再集結。長年連れ添った妻(吉行和子)から突然に離婚届を突きつけられて慌てる夫(橋爪功)とその息子・娘夫婦たちの騒動を描く。
「うちも危ないわ、というお客さんの反応がうれしい。家族が一度シャッフルすることで、人間関係が洗われる。今の時代はコンクリートで護岸した川のよう。淀(よど)みや堰(せき)がないから魚もトンボもいない。淀みや激しい流れがあってこそ、人間関係が練られていくし、人間は賢くなれる。芸術もそういう時にいいものがでてくる」
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