学ぶ、楽しむ…料亭の新しい使い方

料亭といえば高級で格式が高く、いちげんさんはお断り。企業の商談や政治家の密談など、特定の人たちが利用する場とイメージしがちですが、バブル崩壊を境に料亭のあり方も様変わりしています。
例えば東京・赤坂にはかつて100軒の料亭がありましたが、その多くは廃業し、現在は5軒を残すのみ。最盛期には300人以上いた赤坂花柳界の芸者衆も22人になりました。そんな中で、個人の食事会や宴席での利用が増えつつある料亭もあります。
「一休.com」などのウェブサイトから予約でき、平日昼間や休日には手ごろな価格のメニューを提供するなど個人客の受け入れにも力を入れている料亭「浅田」。こちらでは数年前から個人の利用が増えはじめ、現在は15%ほどに達しました(赤坂浅田)。女性だけの「女子会」での利用も少なくないそうです。
建築、しつらえ、料理、もてなし……日本文化の粋が凝集した場
よく、「料亭」と「割烹(かっぽう)」の違いは何かと聞かれることがあります。料亭も割烹も同じ料理屋を示す言葉ですが、料亭は単に料理を提供するだけでなく、芸妓(げいこ)による接待など、客をもてなす場として独自の文化が形成されている点が特徴です。
都会の喧騒(けんそう)の中にあっても、一歩足を踏み入れればそこは別世界。数寄屋造りなどの純和風建築や庭園、部屋の調度品など空間のしつらえ、器や料理、きめ細やかな心遣いなど、日本文化の粋が凝集した場といえます。
約束の時間、料亭の暖簾の向こうにはじっと客の訪れを待つ、和服の女性の姿があります。玄関には打ち水、香もたかれ、季節を先取りした花や飾りつけとともに迎えてくれます。部屋は個室、隣り合う部屋でもできるだけ他の客と顔を合わせないような配慮がされています。
気軽に利用できるランチから女子会、商談にも
老舗の料亭であれば、その由緒を知るのも楽しみの一つ。今回訪れた料亭「浅田」は創業350余年。始祖は1659年に加賀藩より中荷物御用を命じられた初代浅田屋伊兵衛です。約200年間「江戸三度(月に三度江戸と金沢間を往復する加賀藩御用飛脚)」を務めた浅田屋の歴史は、山本一力さんの小説「かんじき飛脚」にも描かれています。
「赤坂浅田」の開業は1971年。今年45周年を迎えました。赤坂のほか、青山や名古屋にもお店があります。赤坂にはカジュアルなカウンター席、青山にはテーブル個室もあります。お昼は五段重のお弁当(6000円)や昼会席(7000円~)と手ごろなメニューがあり、女子会やランチミーティングなどに使えそう。加賀会席料理(1万6000円~)も想像よりずっとリーズナブルです。個室の利用には平日夕食時のみ別途室料がかかります。掘りごたつ式の部屋もあり、お年寄りや子どもがいても安心です(※料金はいずれも税・サービス料別)。
作法や接待マナーも料亭で学ぶ

料亭を使う際、作法が不安という人もいることでしょう。浅田では年数回、不定期で「日本料理の接待マナー講座」を開催しています。実際に食事をいただきながら美しい作法を身につけられる上に、接待の予約、会計、見送りまで、接待する側とされる側の両面からマナーを学ぶことができます。特に、接待を設定することの多い秘書の方に人気だとか。
接待で料亭を利用する際のポイントを教えていただきました。予約の際は、お客様が苦手なものなどを事前に伝えておきます。当日、接待する側は30分ほど早くお店に入って、料亭の担当者とその日の流れや飲み物のセレクト、お客様がお帰りになる際の車の手配などについて打ち合わせておけばよりスムーズです。
料亭は芸者衆を呼んで唄や踊りを楽しむことができる場で、外国人のお客様には特に喜ばれるそうです。お座敷でなくてもその伎芸を間近に見られる機会はあります。例えば赤坂で年に一度開催される「赤坂をどり」の公演。2016年は3月20日、21日の両日、赤坂ACTシアターで開催されます。今回は浅草芸妓も特別に出演が予定されており、一層華やかな舞台になりそうです。
合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演やコンサルティング、調査研究などを行う。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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