「おそ松さん」女性にヒット 六つ子成長、ギャグコメ
おなじみキャラが活躍、豪華声優陣…SNSで話題
「おそ松さん」は2015年10月から深夜帯にテレビ東京系で放送されている。マンガ家・赤塚不二夫の生誕80周年記念作品で、六つ子のリーダー的存在のおそ松(声・櫻井孝宏)、格好つけのカラ松(中村悠一)、女の子に弱いチョロ松(神谷浩史)、マイペースな一松(福山潤)、明るくバカな十四松(小野大輔)、甘え上手なトド松(入野自由)が主人公のギャグアニメだ。
豪華声優陣をフックに、交流サイト(SNS)などを中心に第1回の放送直後から注目の的となった同作品。多彩なギャグやメタ(物語に現実の出来事を入れる表現方法)を盛り込んだハイテンションな作風と、六つ子の愛らしいビジュアルが人気爆発の理由だ。
DVD、ブルーレイの予約も好調で、人気キャラクターのイヤミをメーンボーカルに据えたエンディング曲「SIX SAME FACES~今夜は最高!!!!!!~」はオリコンの週間チャートで3位を記録。役柄の名義で発売されるキャラクターソング(キャラソン)としては出荷枚数10万枚超と破格のセールスを打ち立てた。六つ子が表紙のアニメ誌も完売・増刷が決定するなど、各方面に明るい話題を振りまいている。
原作は六つ子を中心に、イヤミやトト子、チビ太などの個性豊かな面々が日常のなかで繰り広げるドタバタギャグコメディーだ。その魅力はそのまま、原作では小学生で見た目も性格も区別のなかった六つ子たちが、今回は20代前半のそれぞれ個性を持った若者に成長している。その成長ぶりこそが成功のカギとなった。
「この大胆な変更は、藤田陽一監督の"ギャグや笑いは時代のもの。昭和40年代と平成の今ではツールも違う。時代に合わせて作らないといけない"という考えが基本になっている」。作品を制作するスタジオぴえろ(東京都三鷹市)のプロデューサー、富永禎彦さんは話す。
「前作までは夕方の放送でしたが、今回は深夜。キャラクターが成長することでお酒が飲めたり、行動範囲が広がったり、表現の幅が広がるだろうと。その上で、過去のアニメ化で掘り切れていなかったのが、六つ子に個性を持たせることだったんです」(富永さん)
キャラクター設定は藤田監督とシリーズ構成の松原秀さんが中心となって行い、櫻井さんら人気声優たちの声が加わることによって完成したという。「藤田さんは"笑い"のアニメで実績を残しており、ぴったりだと思いました。松原さんは普段の仕事がお笑い中心のお笑いのプロ」(同)。
もう一つ苦労したのは絵柄だった。「キャラクターデザインの浅野直之さんは、今どきのアニメ絵と違い柔らかいタッチが特徴。ベースの表情や姿勢の違いなど、細かいニュアンスを描き分けていただきました」
初回からネタを詰め込み、作品の知名度は一気に加速。
「松原さんは取材などで監督のことを"サービスおじさん"って言っていましたが(笑)、どうやってお客さんに喜んでもらうかを第一に考えて作っています。基本的にこちらからダメ出しをすることはないです」
どんどん広がる「おそ松さん」ワールド。今後も要注目だ。
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「おそ松さん」には六つ子以外にも、原作「おそ松くん」でおなじみのキャラクターがポップに登場する。
7話ではデカパン&ダヨーン(写真上左)が気ままな2人旅に出かけ、4話ではトト子がアイドルを目指す(同上右)。もちろん、イヤミの「シェー!」ポーズも健在だ(同下左)。
また、六つ子を20代の大人に設定することで、舞台装置の自由度も拡大。新アニメではチビ太が経営する屋台で彼らがぐだぐだと飲む場面なども出てくる。
(日経エンタテインメント!3月号の記事を再構成。文・山内涼子)
[日本経済新聞夕刊2016年2月20日付]
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