子どもからお年寄りまで 人気の長編マンガ、ベスト10
昨年は「あぶさん」、「あさりちゃん」(ともに小学館)など何十年もの間、人々を楽しませてきたマンガが相次いで終了した。世の中には、世代を超えて長く愛されるマンガが数多くある。そこで単行本50巻以上を刊行している作品から、年代を問わずに楽しめるお薦め作品と上位5作品についてはその中で特にイチ押しの巻を専門家に選んでもらった。
海賊たちの熱いドラマに感動
登場人物たちが抱えている心情や生い立ち、背景までが丁寧に描かれ、年代を問わず読者をひき付ける。様々な伏線も張り巡らされているので、単行本でまとめて読み進めると、思わずうならされることも多い。「強い者も弱い者も、登場人物全員が自分の哲学を持っているところがすごい」(遠藤佐知子さん)、「世代を超え、人生に希望を与えてくれる貴重な名作」(竹内一郎さん)(1)尾田栄一郎(2)集英社(3)76巻、以下続刊
イチオシの一巻
<その1>59巻=主人公が兄と慕う人物・エースが短い生涯を終える名場面。「60巻に進むか、1巻から読み返すか」(浜田潤さん)
<その2>23巻=主人公の海賊仲間らと友情を育んだとある国の王女ビビとの別れ。
ライバルの存在が人を育てる
イチオシの一巻
<その1>1巻=「主人公が師の言葉で自分という存在の大切さに気づく場面に感涙」(八重田幸子さん)
<その2>43巻=主人公のライバル、サスケとその兄の愛憎。
血族に仇なす宿命の敵迫る
イチオシの一巻
第6部「ストーンオーシャン」17巻(累計80巻)=「すべてのジョジョシリーズをつなぐ、まさにエポックな巻」(薗部真一さん)
大人に戻るため 謎の組織追う
イチオシの一巻
1巻=突然、小学生の姿にされる主人公。「すべての謎はここから始まった」(北原明佳さん)という事件の幕開け。
アニメとひと味違う魅力
イチオシの一巻
6巻=未来の世界に戻るドラえもんに、のび太が自立した姿を見せようと奮闘する。「涙なしには読めない」(渡辺淳子さん)
警察官だが自らの娯楽や趣味に没頭する下町育ちの主人公の両津勘吉(りょうさん)のバイタリティーが全編にみなぎる。掲載当時の社会情勢や流行、情報技術などが作中に盛り込まれ「約40年間の各時代を象徴する話があり、異世代間の相互理解にもつながる」(田中時彦さん)。(1)秋本治(2)集英社(3)193巻、以下続刊
日常的な食材で作るおいしい料理で周囲を幸せにする主人公たちを描く。料理専門書も顔負けのレシピを目当てにした読者も多い。「家族の幸せが人類の幸せと感じさせる」(小野耕世さん)(1)うえやまとち(2)講談社(3)130巻、以下続刊(4)(C)うえやまとち/講談社
孤高のスナイパーの活躍を描く。「ハードボイルドの代名詞」(遠藤さん)、「地理や政経の社会科授業で一番役に立つ」(橋本さん)。(1)さいとう・たかを(2)リイド社(3)175巻、以下続刊(4)(C)さいとう・たかを/リイド社刊
幼稚園児から成長し米大リーグで活躍、日本球界に戻る主人公を描く。「現実に近い野球漫画」(栗山典久さん)(1)満田拓也(2)小学館(3)78巻(4)(C)満田拓也/小学館
「大人になって必ず役に立つ」(浜田さん)大河歴史マンガ。(1)横山光輝(2)潮出版社(3)60巻(4)(C)光プロ/潮出版社
表の見方 数字は選者の評価を点数に換算した。(1)著者名(2)出版社名(3)刊行中の単行本巻数(原則)(4)写真のコピーライツ表記
緻密な伏線 飽きさせず
推薦された総作品約50を雑誌掲載が始まった時期別に分類すると、1990年代が4割近く占め、最も多かった。1位の「ONE PIECE」、2位「NARUTO」なども90年代組だ。長編の魅力の一つは緻密に張られた伏線。「『ONE PIECE』がヒットし、飽きられることなく長く読まれることを想定した作品が増えた」と宝島社の薗部真一さんはいう。
近年はマンガ単行本を電子書籍にする動きも増え「50巻を超す作品でも置き場所を気にせず集められるようになった」(薗部さん)ことも長編人気を支える。
一方、少女マンガは連載期間が長くても刊行数が少なく、今回の「50巻以上」の選定基準に満たないケースが多かった。50年以上も描かれた「小さな恋のものがたり」(学研パブリッシング)も第43集だった。
マンガは子どもが読む印象が強いかもしれない。だが普遍的なメッセージや社会性を備えたもの、作品と読者がともに成長するようなものも多い。世代を超えた共通の話題の一つとしていかが。
◇ ◇ ◇
調査の方法 単行本で50巻以上の作品(複数名で刊行していても同じシリーズなら全て累計)から、世代を問わず楽しめるお薦めを原則10以上、専門家に順位付けして選んでもらった。選者は以下の通り(敬称略、原則五十音順)
▽小野耕世(評論家・日本マンガ学会会長)▽遠藤佐知子(リブロ池袋本店)▽北原明佳(TSUTAYA BOOK部)▽栗山典久(まんが王国・土佐推進協議会事務局長)▽薗部真一(宝島社「このマンガがすごい!」編集部)▽竹内一郎(劇作家・宝塚大学東京メディア・コンテンツ学部長)▽田中時彦(北九州市漫画ミュージアム館長)▽橋本博(熊本マンガミュージアムプロジェクト代表)▽浜田潤(漫画全巻ドットコム)▽平山舞(八重洲ブックセンター本店)▽福士真人(立川まんがぱーく館長)▽八重田幸子(丸善丸の内本店)▽山内康裕(マンガナイト代表)▽山本愛子(有隣堂店売事業部)▽吉浪寛子(紀伊国屋書店新宿本店)▽渡辺淳子(楽天ブックス)
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