変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

 異業種の会社同士が女性活躍研修を共同で開く例が目立ってきた。各社の若手女性社員らが一堂に会し、悩みや活躍ぶりを共有する。女性活躍推進が叫ばれるものの、自社内での事例は限られる。社外女性とのネットワークが広がると互いに刺激になり、個々のキャリア意識の向上につながっている。
東京海上日動火災保険やみずほフィナンシャルグループ、日立製作所など6社が合同で開いたフォーラム。各社の若手女性がキャリアの悩みを分かち合った(東京・千代田区)

東京海上日動火災保険やみずほフィナンシャルグループ、日立製作所など6社が合同で開いたフォーラム。各社の若手女性がキャリアの悩みを分かち合った(東京・千代田区)

「最近女性の先輩が結構管理職に昇進してますね」「ウチの会社にはキャリアと子育てを両立している女性はいないなぁ」。5~6人の女性がグループとなり、身を乗り出して語り合う。それぞれの勤務先は別々。他の会社の状況はどうなのか。興味津々の様子だ。

10月上旬に東京海上日動火災保険やみずほフィナンシャルグループ、丸紅など6社が東京都内で異業種ネットワーキングフォーラムを開いた。各社から20代後半~30代前半の女性社員約120人が参加した。企業や業種の枠を超え、同世代同士で悩みや本音を語り合い、この先のキャリアについて視野を広げる狙いだ。

「社内にいないタイプの女性の話は刺激になる」と参加者の一人、東京海上日動火災保険金融営業推進部の池ノ谷麻悠子さん(31)は話す。同じグループに転職経験者がいた。「自分の強みをアピールしてキャリアは自分で築かなきゃ」。そんな一言が胸に響いた。2007年の入社で支店の営業を7年経験し、昨年今の部署に移った。特に希望したわけではなく、どの部署でどんな仕事がしたいかを今まで考えていなかった。そろそろ管理職昇格が見えてくる年代だ。「将来どうなりたいのか。主体的に考えなければ」

参加した企業の思いは様々だ。丸紅は14年から女性活躍推進に取り組む。これから積極的に管理職に登用していく考えだ。ただ総合職出身の女性管理職は10人に満たず、若手が手本とすべき存在は社内だと限られる。人事部ダイバーシティ・マネジメント課長の許斐理恵さんは「他社の良い手本を知るきっかけをつくりたかった」と説明する。

オリックスや第一生命保険、花王、AIGグループなど8社・グループは14年8月に「女性マネージャー異業種勉強会」をつくった。管理職に昇進して間もない女性たちが参加する。各社の女性役員らが講師となり「組織や部下を動かすコツ」「ネットワークの広げ方」などを指導する。

きっかけは各社の女性役員らが「自分たちの経験をフィードバックして後継女性を育てたい」と意気投合したこと。オリックス執行役の山科裕子さんは「女性管理職は各社増えているものの、女性役員となると数えるほど。管理職になったばかりの女性を刺激して役員候補者の裾野を少しでも広げたい」と話す。

オリックスの岡田恵美子さん(42)は今春営業部門のチーム長に就いた。男性や年上の部下を束ねていけるのか悩んでいた。職場は男性ばかり。悩みを共有できる女性がいなかった。そんなとき異業種勉強会に参加して勇気を得た。「女性管理職の悩みは共通。工夫しながら乗り切っている。他社の参加者の話を聞いて、自分も克服できると思えるようになった」

労働力人口の減少を受けて企業は女性活躍推進に舵(かじ)を切っている。今年女性活躍推進法が成立し、来年4月からは従業員300人超の企業は行動計画の立案・提出が義務付けられる。ただほとんどの企業はまだ過渡期だ。女性活躍推進のノウハウが社内に蓄積されておらず、社外との異業種交流はそれを補う狙いがある。

損害保険ジャパン日本興亜やJCB、NTT東日本、イオングループなど12社は11月に「仕事と子育ての両立を目指す女性向け座談会」を共同開催した。就学前の子どもを持つ女性ら約120人が各社から集まり、働きながらどうやって子育てしているのか、両立の知恵を共有した。

損害保険ジャパン日本興亜は社内でも両立セミナーを開いている。ただ社内セミナーでは会社の子育て支援制度の活用術などに話題が集約してしまう。だが実際に子育てとキャリアを両立するには、夫の協力を得る方法や短時間で効率的に働く工夫など会社の制度によらず個人で補える部分が大きい。「他社のワーキングマザーと話すと、自然と個人的な工夫に話題が広がり、社内セミナーとは別のノウハウを参加者は学べる」(人事部)

キャリアへの不安、女性は男性の2倍超

家庭や子育てなどで責任も負う女性は男性より将来のキャリア不安が大きい。21世紀職業財団(東京都)の「若手女性社員の育成とマネジメントに関する調査研究」(2014年11月~15年1月実施)は子どもを育てながら仕事を続けることに不安を感じるかを若手社員に尋ねた。女性の58%が不安は「ある」と回答。男性の2倍以上に上る。

調査を担当した事業開発部の山谷真名さんは「不安を高める要因は自分がこれから歩むキャリアの道筋がイメージできないこと。出産・子育てをしながらキャリアを積む女性はまだ少数。どう働いていけばよいのか。参考にできる女性が身近にいない」と指摘する。

同財団は勤務先が異なる若手女性らが交流する「女性のためのエンパワーメント21世紀塾」を主催。約100社からおよそ200人が参加する。「仕事も家庭も完璧にこなすスーパーウーマンは参考にしづらい。必要なのは自分と照らし合わせられる等身大の手本。企業の枠を超えれば手本となりそうな女性を見つける確率が上がる」と話す。

(女性面編集長 石塚由紀夫)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック