エンタメ!

エンタウオッチング

稼いだのはどれ? ハリウッド映画赤字・黒字ランキング 日経エンタテインメント!

2015/10/26

単位:100万ドル。※全米興収、製作費は映画情報サイト「IMDB.com」「Boxofficemojo.com」より

コストパフォーマンスの良い映画作りのセオリーとはどんなものか。2010~15年夏にかけて公開されたハリウッド映画の全米興行収入から製作費を引き、「製作費を大きく上回って全米で興収をあげている=黒字」「全米での興収が製作費を大きく下回っている=赤字」ということを示す「赤字・黒字ランキング」を作成。コスパの悪かった映画と良かった映画を比較、コスパの良い映画作りのセオリーを引き出した。

赤字ランキング1位は『ジョン・カーター』。エドガー・ライス・バローズのSF小説『火星のプリンセス』の映画化だ。この小説は『火星』シリーズ1作目で全11作続いており、シリーズ化を狙っていた。だから製作費に2億5000万ドルを投入したわけだが、興収は7300万ドル止まりだった。

■あの大スターでも大赤字

実は赤字ランキングでトップ10の大半を占めるのが製作費に1億7500万ドル以上を費やしたアクション大作だ。「シリーズ化を狙うアクション大作は巨額の製作費を投入するため、興収が伸び悩むと赤字が巨額になりやすい」といえる。ハズブロのボードゲームを基にした2位『バトルシップ』、人気ゲームを題材にした7位『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』、アメコミ原作を映画化した9位『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.』、13位『グリーン・ランタン』もこのパターンだ。

不思議な現象で惑星バルスームに迷い込んだジョン・カーターは、重力の異なる惑星で超人的な力を発揮する(C) Everett Collection/アフロ
ハワイの太平洋上で軍事演習を行っていた世界各国の艦隊の前にエイリアンの母船が出現。DVD発売中/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン(C) 2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED Artwork (C) 2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

赤字ランキングには人気スターの主演作もいくつか入っている。ジョニー・デップの『ローン・レンジャー』『ダーク・シャドウ』、トム・クルーズの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、ウィル・スミスの『アフター・アース』がそうだ。「人気スターの主演作=大ヒットが見込めそうなので、巨額の製作費を投入」するが、興収が伸び悩むと赤字になりやすい。

日本の忠臣蔵を題材にしたアドベンチャー。キアヌ・リーブスふんする異端の男カイが大石たちを助ける。DVD発売中/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン(C)2013 Universal City Studios Productions LLLP.
戦士トントと、兄を殺された検事ジョン。ジョンはマスクをして素顔を隠し、トントと強大な敵に立ち向かう(C)Photofest/アフロ

単位:100万ドル。※全米興収、製作費は映画情報サイト「IMDB.com」「Boxofficemojo.com」より

一方、黒字ランキング1位は『ジュラシック・ワールド』。製作費に1億5000万ドルかかっているものの、巨額の興収をあげたおかげで黒字トップとなった。

2位は『アベンジャーズ』。アメコミヒーロー映画で勢いのあるマーベル作品は、『アイアンマン3』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』がトップ10入り、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が18位となっている。マーベル作品の特徴は製作費が巨額なことで、『アベンジャーズ』2作と『アイアンマン3』が2億ドル以上、『ガーディアンズ~』が1億7000万ドル。「巨額の製作費をかけて、大きな興収をあげる」戦略だが、「並みのヒットでは物足りない」ことにもつながる。他のマーベル作品がトップ20内に入っていない結果がハードルの高さを物語っている。

逆に、やや抑えめの製作費でシリーズ3作全てが黒字トップ10入りを果たしたのが『ハンガー・ゲーム』だ。マーベル作品をはじめアクション映画は特殊効果のCG作成にお金がかかるため製作費がふくらみがちだが、『ハンガー・ゲーム』シリーズの製作費は7800万~1億3000万ドルだ。『ハンガー・ゲーム』同様、ヤングアダルト小説の映画化『トワイライト・サーガ』シリーズも黒字傾向で、3作目『エクリプス/トワイライト・サーガ』が7位、最終章2作が14、15位に入っている。

恐竜のテーマパークの研究者はリピーターを増やすため、巨大な新種を生み出すが、飼育場所から脱走。全国劇場公開中/東宝東和(C) 2015 Universal Pictures
アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクが集結。ロキが率いる宇宙からの侵略者に立ち向かう。TM &(C)2012Marvel & Subs.

■イーストウッドは節約上手

抑えめの製作費は『アメリカン・スナイパー』にもあてはまり、トップ10の中では最も製作費が低い。クリント・イーストウッド監督は製作費を抑える撮影方法を重視することで知られる。当初、同作はスティーブン・スピルバーグ監督が興味を示した。アメリカ軍とイラク軍、両方の視点から戦闘を描くことを主張し、製作費が1億ドルを超えそうだった。映画会社側では「製作費1億ドルでは赤字になるかもしれない」とスピルバーグ監督を断念。代わりにイーストウッド監督に白羽の矢を立てた。彼はアメリカ軍の視点からのみ戦闘を描くことで製作費を抑えた。

男女が繰り広げる殺し合いのゲーム「ハンガー・ゲーム」に出場する少女カットニスのサバイバルを描く。DVD発売中/KADOKAWA・角川書店。TM &(C)2012 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
イラク戦争で敵を160人も射殺し、米軍内では英雄視された「伝説のスナイパー」の自伝を映画化。ブルーレイ&DVDセット発売中/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

コメディ映画は、アクション映画に比べると低い製作費で作れるため、ヒットすれば黒字になりやすい。12位『ハングオーバー! ! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』、17位『テッド』は興収が2億ドル台とずば抜けたメガヒットではないが、低予算のため黒字となった。

(ライター 相良智弘)

[日経エンタテインメント! 2015年10月号の記事を基に再構成]

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL