台湾エンタメにブームの予感 旅・食人気で存在感増す
8月14日、音楽、映画やドラマなど台湾の最新文化を紹介する「TAIWANDERFUL(台ワンダフル)」が東京都内で開かれた。台湾文化部が主催するイベントで、トークショーや展示、シンガー・ソングライターのクラウド・ルーら台湾アーティストのライブを開催。2回目の今回は、昨年より2割多い約1200人が詰めかけた。
企画制作にあたったスペースシャワーネットワーク事業開発推進本部の川崎英和氏は「来場者は20~30代の女性を中心に幅広い。台湾カルチャーへの関心の高まりを実感した」と話す。ライブに出演したルーら3組は翌日から千葉市で開かれた音楽フェス「サマーソニック2015」にも参加した。
8月末には、アジア全域で高い知名度と動員数を誇る台湾の人気バンドMayday(五月天)が、台湾出身グループとして初めて日本武道館で単独公演。ほかにも宇宙人(Cosmos People)やSTAYCOOLなどのバンドが積極的に来日するなど、台湾の音楽が着実に浸透してきた。
背景にあるのが旅行やグルメでの台湾人気だ。日本から台湾への2014年の訪問者数は前年比15%増の163万4790人(台湾観光局調べ)。韓国、中国、タイなどが軒並み前年割れだったのと対照的に数字が伸びた。
日本旅行業協会の「2015年夏休み海外旅行人気ランキング」ではハワイに次いで2位。新旧が混在する街並み、高級中華料理からB級グルメまでそろう食の充実など、旅行者をひきつける魅力は多い。スタジオジブリ作品「千と千尋の神隠し」の舞台を思わせる九份など、台湾各地にも目が向けられている。
こうしたブームでカルチャー分野への関心も高まってきた。台湾の音楽の多くは歌詞も旋律もストレートで情緒的な世界観があり、ロックであってもほっこりとした気持ちになれる。風土そのものを表したかのような「優しさ」「温かさ」「懐かしさ」というキーワードは、エンターテインメントにも当てはまる。
台湾映画「KANO~1931 海の向こうの甲子園~」が台湾と日本でヒットしたのも話題だ。日本統治下の1931年に台湾代表として甲子園に出場し、決勝進出した嘉義農林学校野球部(KANO)の実話が基で、台湾では昨年公開。興行収入が1億台湾ドルを超えれば大ヒットといわれるところ、公開2カ月で3億台湾ドル(約10億円)を超えた。日本でも今年1月に台湾映画として最大規模となる100館以上で上映された。
日本との間で俳優の行き来も盛んになっている。KANOには野球部監督役の永瀬正敏やその妻役の坂井真紀らが出演。日本のドラマ「金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件」(14年)には台湾の新旧アイドル、ウーズンとリウ・イーハオ(RYU)が競演。同年の日本映画「ルパン三世」には、01年にアジアで大ヒットした「流星花園~花より男子~」の出演者F4としてブレイクしたジェリー・イェンが出演した。長澤まさみ、平岡祐太、福山雅治らも最近、台湾ドラマに出演している。
ドラマのDVDも発売が相次ぐ。NBCユニバーサルは今年は年間3作品を発売。日本でも人気のスター、マイク・ハーがダメ御曹司にふんする「とん□だロマンス」、Maydayが主題歌を担当した音楽業界もの「キミをプロデュース~Miracle Love Beat~」、視聴率が1%を超えれば大ヒットという台湾ドラマで最高視聴率2.03%を記録したラブコメディー「恋する、おひとり様」だ。
「恋する~」は台湾の女性の間で人気が高まっている"ぽかぽか男子"を取り上げた作品。太陽のように性格が温かく、甘い笑顔を持つ男性像のことで、台湾ドラマの最新のテイストが楽しめる。
(「日経エンタテインメント!」10月号の記事を再構成、文/長谷川あや)
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