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高齢者の交流組織、老人クラブが地域の支え手になろうと模索している。趣味やスポーツの活動に加え、買い物支援や見守りなど地域支援の取り組みを強めている。元気なシニア層の増加を背景にクラブの名称から「老人」を外し、「若返り」を図る動きも活発になってきた。クラブの対象となる60歳以上の人口は右肩上がりで増えているが、逆に会員は減る一方。地域貢献に活路を見いだし、存在感を高めようとしている。

会員にショッピングセンターで買い物をしてもらい、自宅まで届ける(神戸市)

会員にショッピングセンターで買い物をしてもらい、自宅まで届ける(神戸市)

金曜日の午前9時半、神戸市の老人クラブ、青葉クラブ会長の久保三男さん(73)は車で、同市北区の自宅を出発する。5~6人のクラブの会員宅を回って乗せ、10時前にショッピングセンターに着く。2時間程度、買い物をしてもらい、それぞれの自宅まで送り届ける。

クラブの会員66人のうち、10人程度が買い物支援を利用している。車での送迎は久保さんを含めた3人のボランティアが担当する。ボランティアには神戸市老人クラブ連合会から謝礼金が出る仕組みだ。

支援を始めたのは「買い物に不自由している会員の手助けをする」(久保さん)ためだ。会員が住む青葉台地区は1972年に新興団地として開発され、現在は約470戸。高齢化が進み、一人暮らしの人が増えている。クラブの会員の平均年齢は80歳を超える。

「会員は買い物リストをつくって迎えの車を待っている。ショッピングセンターでの買い物を楽しみにしている」(久保さん)という。支援回数は、開始した2011年度の約700回から14年度は約1000回に増えた。

「電球を取り換えてくれないかしら」。愛知県阿久比町の老人クラブ、宮津山田達者会には会員からこんな依頼が舞い込む。約30人の会員による「お助けマン」というチームを組織、会員の日常生活を無償で手助けしている。

最も依頼が多いのは隔月ごとにやっている包丁などの刃物研ぎで、「1回に40~50丁はやる」(大熊文夫会長、77)。たんすなど室内の重い物の移動や水道の水漏れ修理などにも随時、対応する。クラブには、阿久比町に近い東海市にある大手製鉄会社の工場に勤務していた人が多く、「機械の修理などの技術を活用してもらっている」(大熊さん)。

お助けマンが出向く先は会員宅に限らない。「近くの保育園からの『戸の開け閉めができなくなったので来てほしい』といった依頼に応じている」(大熊さん)といい、最近は地域貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

東京都八王子市の老人クラブ、絹一・シニアズは、友愛活動と呼ばれる地域の助け合いに力を入れている。10人の会員が友愛チームをつくり、メンバーが一人暮らしや寝たきりの約20人の会員の自宅を定期的に訪問。話し相手になったり、健康状態を確認したりする。会員が住む絹ケ丘1丁目地区は1960年代後半から開発が進んだ住宅地だ。「会員が孤立しないようクラブで支える」と会長の平林五六さん(73)は話す。

同クラブは「役員がそれぞれ毎年1人、新規会員を増やそう」(平林さん)と積極的に勧誘活動をする。カラオケやグラウンド・ゴルフなど約20あるサークル活動が活発なことも魅力となって、この4年間で会員数を70人から100人に増やした。

老人クラブの活動を活発にするには60代の会員を増やすなど「若返り」も必要。宮津山田達者会は60代の地元自治会の役員に対して、クラブへ入会してほしいと勧誘している。今年に入って「65歳くらいの3~4人が入会した」(大熊さん)という。

若い会員が入会する妨げになっているとされる「老人」という文言を外す動きも広がっている。山形県老人クラブ連合会は7月から、愛称をきららクラブ山形にした。4月には栃木県老人クラブ連合会が同じく栃木いきいきクラブにした。

すでに老人の名を使っていない絹一・シニアズは「若い人を含め、より幅広い層に入ってもらおう」(平林さん)と来春、クラブ名を絹一・フレンドに変更する。

老人クラブは原則として60歳以上が対象で、市区町村、都道府県、政令指定都市、全国にそれぞれ連合会がある。老人福祉法により、自治体が活動費の一部を助成する。

会員の減少は深刻だ。厚生労働省によると、全国の老人クラブの数と会員数は1997年度末の約13万4千クラブ(約887万人)をピークに減少し、2013年度末は約10万8千クラブ(約627万人)にまで減った。

高齢化が進んでおり、老人クラブの全国組織、全国老人クラブ連合会が昨年、全国約3600のクラブを調査したところ、会員のうち70歳未満の占める比率は14.8%と前々回調査(03年度)に比べて7ポイント下がった。

こうしたなか、連合会が着目しているのが今春の介護保険制度改正だ。「要支援」に認定されている高齢者への介護予防サービスの一部が、15年度から3年間の移行期間を経て、市町村ごとの「介護予防・日常生活支援総合事業」となる。老人クラブの取り組みと重なる部分が多く、連合会は「介護予防・生活支援サービスの担い手として、行政や住民・関係者と協働しよう」と地域のクラブに呼びかけている。

連合会は14年度から会員100万人増強運動を展開しており、地域支援活動をより強化することで、会員数の増加につなげたい考えだ。

(大橋正也)

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