中学受験 うちの子は別学向き? 共学向き?

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中学受験ライターの越南小町さんが、学校選びについて取材。最近の傾向としては共学人気が高まりつつも、男女別学の「御三家」は相変わらず高倍率です。共学、別学それぞれのメリット・デメリットと選び方のポイントを、安田教育研究所の安田理先生にお聞きしました。

偏差値で選ぶと、合格後に無理が生じることも

一般的に、「中学受験をするかしないか」は小学3年生に進級するころに考え始める家庭が多いと思います。中学受験は、子どもがまだ小さいぶん、親の期待も大きく、また親が主体となって進めていくため、どうしても高望みをしてしまう傾向があります。

しかし、例えば偏差値だけで学校を選んでしまうと、入学後、通学に1時間以上もかかって学校と家を往復するだけで疲れてしまったり、学校の雰囲気になじめなかったりと無理が生じてしまう場合があります。そうならないために、わが子に合った学校選びがとても重要になります。

進学校、大学付属校、宗教校など、各学校にはそれぞれの特徴がありますが、それとは別に考えなければならないのが、別学か共学か、というポイントです。別学とはいわゆる女子校、男子校を指します。親自身が女子校・男子校出身であれば、学校生活の様子も分かると思いますが、共学校出身の方には、なかなかイメージしにくいかもしれませんね。

現在、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の私立中学校294校のうち、女子校は103校、男子校は46校あります。首都圏においては、全体の約半分が別学と言えますが、近年は共学校に人気が集まり、埼玉県では私立中学校29校のうち女子校3校、男子校3校、千葉県では私立中学校25校のうち、女子校3校、男子校は0校と、県によっては別学校は限られています。

一方で、大学進学の実績の高さや伝統校としての魅力から、「男子御三家」と呼ばれる開成、麻布、武蔵、「女子御三家」と言われる桜蔭、女子学院、雙葉をはじめとするいわゆる難関校は、今も根強い人気を集め、毎年高倍率の競争が繰り広げられています。

では、なぜこうした難関校は別学が多いのでしょうか? 別学にはどんな魅力があるのか、安田教育研究所の安田理先生に聞いてみました。

思春期の男女の特質を考慮した、学習・生活指導が魅力

安田先生はこう話します。

「男女御三家をはじめとする難関校に別学が多いのには、その歴史の長さが影響しています。明治から大正時代に創設された多くの私学は、男子だけの学校、女子だけの学校としてスタートしたからです。当時は、男子には『男らしさ』を、女子には『女らしさ』を求める教育が行われてきました。しかし、今は『らしさ』より、男子・女子の身体的・精神的成長を活かした学習・生活指導を行っていることが、別学の魅力と言えるでしょう」

安田教育研究所・安田理先生(撮影 稲垣純也)

では、まず学習面における別学のメリットを聞いてみましょう。

「別学の学習面におけるメリットは、男子・女子それぞれの特質を考慮した授業の進め方ができることです。中学生の男子と女子には、精神的・身体的な成長のスピードに差があります。また、物事に対する考え方や取り組み方にも違いがあるのです」

「例えば、理科の実験をするとします。実験道具が目の前に並べてあれば、好奇心旺盛な男子はすぐに手を動かしたくなるものです。けれども、女子はきちんと説明を聞いてからでなければ触ろうとはしません。こうした取り組み方一つをとっても、男子と女子には違いがあります」

「また、一般的に男子は空間的認知能力が優れており、図解で覚えることを得意としますが、女子の場合は耳から覚えることのほうが得意なため、丁寧な説明が必要となります。つまり、学習のアプローチの仕方からして違うのです。別学では、こうしたことを考慮して授業が行われているため、より理解を深めやすいという良さがあります。また、学校によっては、一般的に女子が苦手とする物理などの科目や、男子が苦手とする古典などの科目をそれぞれ多めに指導するなど、授業時間の調整もしてくれます」

異性を気にせず伸び伸び、性別役割分担も必要なし

また、思春期ならではの良さとしては、異性を気にせずに伸び伸びと過ごせるというメリットもあるようです。例えば、男子(または女子)がいると、恥ずかしくて授業で先生に質問ができないけれど、同性だけならしやすい、異性がいないから勉強に集中しやすいなど、学習環境においてもその利点が多く挙げられます。

さらに、安田先生は「生活面でも良さがある」と話します。

「別学では、女子だから、男子だからという役割分担はありません。共学だったら男子が担当する力仕事も、女子校では自分達でやらなければなりません。生徒会長も、学級委員も、クラブの部長も、トップはすべて女子。中高6年間で、こうしたリーダーの経験、人任せにしないでどんなことにもチャレンジする経験があるのと無いのとでは、社会に出てからも違いが出てきます。例えば、会社でコピー機の紙が詰まってしまったとき、男性に頼るのは共学校出身の女子だそうです。女子校出身の女子は、人に頼らず、まずは自分で何とかしようとする人が多いそうです(笑)」

かつての別学のイメージはどこへ? ひ弱な男子と進学実績を伸ばす女子

一方で、「近年は、おとなしい子が男子校を選ぶ傾向にある」と安田先生は話します。

「かつて、男子校には『男らしさ』、女子校には『女らしさ』が求められていましたが、今はどちらも『進学実績』で学校を選ぶ家庭が増えています。また、男子校を選ぶ理由として、12歳ごろだとどうしても女子のほうが精神年齢は高く、一緒にいると主導権を握られてしまうので、そのことを嫌って女子のいない男子校を選ぶケースもあります。そのため昔とは違って、女子がいることが負担にならない積極的な男子が共学校へ進み、女子を苦手とする、おとなしめの男子が男子校を選ぶ傾向にあります」

「このように、近年の男子校はソフトなイメージに変わってきているので、一昔前の『いかにも男子校』という先入観は持たないほうがよいでしょう。近年の男子校は、『男らしさ』の育成よりも、大学進学指導に力を入れるなどの『面倒見の良さ』が人気のポイントと言ってもいいかもしれません」

同じことは女子校にも当てはまります。

「近ごろは、女子も進学実績重視で学校を選ぶ傾向にあります。子育て世代のママ達が中高生だったころ、いわゆる『お嬢様学校』として人気が高かった伝統校は、今は概して低迷の傾向にあり、近年、進学実績を伸ばしている吉祥女子(武蔵野市)、鴎友学園女子(世田谷区)、豊島岡女子(豊島区)などに人気が集まっています」

「しかし、これらの学校も長年にわたって進学校であったわけではありません。例えば豊島岡女子は、元は裁縫学校からスタートした女学校でした。その名残として、毎朝5分間の『運針』があります。近年の女子校は、創設時の理念を受け継ぎつつも、今の時代に合った女子教育を行うという流れになっています」

こうして、女子校も男子校も時代のニーズに合った形へと変化しているようです。

少子化で生き残りを懸ける大学付属中学校

しかし、中学受験全体から見ると、近年は共学校に人気が集まってきています。その背景の一つとして「大学付属中学の共学化が挙げられる」と安田先生は話します。

もともと大学付属校は、大学受験をせずに併設大学へ行けるという理由で、一定の人気がありましたが、2000年ごろから大学付属中学の共学化が相次ぎ、さらに人気を集めるようになりました。近年、話題になった共学化の例としては、2007年に法政大学中学高等学校(三鷹市)、2008年に明治大学付属明治(調布市)が、校地移転と共に男子校から共学校へ変わったことなどが挙げられます。

こうした背景に、実は「少子化が影響している」と安田先生は話します。

「近年、少子化が加速し、多くの大学では生徒確保に苦戦しています。また、少子化で大学に入りやすくなっている一方で、学力レベルの低下も危惧されています。こうした中、早稲田、慶應、MARCH(明治、青学、立教、中央、法政)などの大学では、早い段階から優秀な子を確保しておきたいという思いがあり、付属校の充実を図っています。特に近年は女子の進学率が高まり、優秀な女子を確保したいという動きが出ており、男子校から共学化する付属校が増えているのです」

こうして人気の大学付属校が相次いで共学化されたことで、男子校・女子校の数が減少し、共学校の人気が高まっていきました。しかし、10代の男子と女子とでは成長のスピードに差があること、物事の考え方や取り組み方が違うことなどから、別学の良さは捨てられません。そこで、近年注目されているのが、併学という学び方です。

いいとこどりの「併学」とは

併学とは、同じ学校の中で、男子と女子が別々に授業を受け、部活動や学校行事だけ一緒に行う学校のことです。学習面や生活面の指導は、男子・女子それぞれの特質を考慮し、男子校・女子校と同じスタイルで行うけれど、それ以外は共学校同様に男女一緒に行うといった双方の良さを取り入れており、いわゆる「いいとこどり」が人気を集めています。

東京都では國學院大學久我山(杉並区)、神奈川県では桐蔭学園(横浜市)と桐光学園(川崎市)がそれに該当します。私学全体から見れば少数派ではありますが、かえつ有明(江東区)が近年授業を別学にするなどの動きがあります。

別学、共学、そして併学。それぞれにメリット・デメリットがあると思います。さらに、進学校で受験があるか、大学付属校で受験が無いか、宗教的な教育があるか、無いかなども学校選びの基準となります。これら全体を考え、わが子にぴったりな学校選ぶのは、実はとても難しいことです。しかし、そこに不一致が生じてしまうと、入学後、つらい思いをしてしまうのはお子さんです。そうならないためには、まずはたくさんの学校を親子で見ることが大事だと思います。

中学受験はさせたいけれど、どんな学校があるのか分からないという方は、まずは一度にたくさんの学校に出会える合同説明会に参加してみましょう。合同説明会には、男子校フェアや女子校フェアなどもあり、一度に複数の別学校を見比べることができます。

越南小町(えつなん・こまち)
フリーライター。1971年、東京生まれ。子どもの誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、保育園専門誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材・執筆。3年前に子どもの中学受験を経験したものの、併設高校が無いため、現在、再び高校受験生の母として奮闘中。

[日経DUAL 2015年4月30日付記事を基に再構成]