こまめな目のケアで全身の不調も防げる

日頃よく感じる不調として、「目の疲れ」をあげる人は多い。仕事で長時間パソコン作業をしたり、移動中やオフ時間もスマホを見たりする生活で「目が疲れても仕方ない」と思いがちだが、放っておくと深刻な不調を引き起こすことも。
「1~2晩よく眠ればたいてい回復する、かすみ目や充血は“疲れ目”の症状。しかし疲れ目を放置すると、目を動かす筋肉の硬直が全身の筋肉に伝わり、血行不良による肩コリや頭痛、吐き気のほか、軽い鬱症状にまで進行するケースもあります」。こう話すのは、吉祥寺森岡眼科院長の森岡清史さん。目の疲れを引き金にして起こるさまざまな不調を眼精疲労という。「目の疲れが原因かもしれない」と思う症状があれば、まずは眼精疲労に対応した病院で診断を受けること。眼精疲労であれば、目の筋肉の緊張を取る治療を受けることで症状が改善するという。
深刻な不調を引き起こさないためにも、日頃から目の疲れをケアする習慣をつけておくことが大切だ。「目薬を差すのもいいですが、目の筋肉を動かしたり、休ませたりするのが有効。気づいたときに遠近を交互に見る、休憩のときに1分間目を閉じるなど、ちょっとしたことで疲労は回復します」。次のプログラムも参考に、目の疲れをためない生活を意識しよう。
眼精疲労は目の疲れを原因にした不調だ。目を酷使し続けるとピントを合わせる役割の毛様体筋がこわばり、眼球を動かす外眼筋も硬直。全身の筋肉が固まり頭痛、吐き気などの症状のほか、深刻なドライアイになることも。
疲れ目:目に軽い症状が出て、1~2晩ぐっすり眠ると回復
眼精疲労:全身に深刻な症状が出て、簡単には回復しない
こんな治療法で症状が回復
「眼精疲労を治すには、目の毛様体筋や外眼筋の緊張と疲労を取ることが必要です」。森岡さんのクリニックでは、以下のような治療を行っている。
・洗眼・点眼:目の汚れを洗い、ビタミンB12配合の目薬などを差す
・ホットアイパック:首の下と目を温め、血行を促進
・マッサージ・ツボ押し:目の周り、首、鎖骨などの筋肉をほぐす
・低周波治療:こめかみに低周波の振動を与え、目の奥を温める
気づいたときにほんの少し目を休めれば、疲れ目が解消。1日の流れに沿って、すぐできる習慣を紹介します。
●朝起きたら→太陽光を浴びる
良質な睡眠が目の疲れを回復する。起床後1時間以内に窓を開けて太陽光を浴び、体内時計をリセット
●駅まで歩くときは→時折、空を見上げる
歩くときは目線が下へ行きがちだが、信号待ちの間など時折空を見上げると、目の筋肉が鍛えられる
●通勤電車では→数駅分は広告や景色を見る
電車内ではスマホや本ばかり見ず、数駅分は中吊り広告を見る、外を眺めるなど遠くに焦点を合わせて
●パソコン作業中は→10分に1回、遠くを見る
近くの画面を見続けることが目の疲れの大きな要因。10分に1回、遠くを見て目の筋肉をストレッチ
●トイレに行ったら→1分間、目を閉じる
まぶたを閉じるだけで目の筋肉がゆるむので、トイレに入ったときに1分間閉じて、目を休めよう
●休憩時間には→ホットパックで目を温める
市販のホットパックなどを目の上にのせ、血流を促して目の周りの筋肉をほぐすと疲れが取れる
●家でテレビを見るときは→20分に1回、席を立つ
テレビをじっと見続けないよう、20分に1回は立ち上がり散らかったものを戻すなどカラダを動かそう
●お風呂では→目の周りを1分間たたく
湯船につかっている間、目の周りを1分間、軽く指でたたくだけで、血行が促進されて疲れが和らぐ
●夜、スマホを見るなら→必要最低限にして翌朝にチェック
夜のスマホの光は深い眠りを妨げ、目に疲れが残る原因に。必要最低限にして、翌朝にチェックするようにしよう
この人に聞きました
吉祥寺森岡眼科院長。浜松医科大学医学部卒業後、東京大学大学院修了。勤務医を経て吉祥寺森岡眼科を開院。08年には院内に眼精疲労治療室を設け、数少ない眼精疲労の専門医として治療に当たる。著書は『眼精疲労はまかせなさい!』(現代書林)
(日経WOMAN 藤川明日香)
[日経WOMAN2015年3月号の記事を基に再構成]