年中無休の職場だけど… 増える「ママナース」

2015/1/19

職場の知恵

看護職場は、365日24時間休みが許されない過酷な環境。夜間勤務も多く子育てしながら働くのは難しいとされてきた。だが、最近は緊急性の高い患者を処置するため特に多忙な急性期病院で活躍するママナースも増えている。背中を押したのは人手不足。せっかく育った看護師が働き続けられるようあの手この手で支援する。

「看護師850人のうち、毎年約60人が産休・育休を取っている。最近目立つのは2、3人目の出産。少子化なんてどこの国の話という感じです」。笑いながら話すのは、浜松市の聖隷三方原病院、吉村浩美総看護部長だ。

仲山さんは二人の男の子を育てながらホスピス病棟で働いている(静岡県浜松市の聖隷三方原病院)

仲山理奈さん(33)は3歳と5歳の男の子のお母さん。大学卒業後、三方原病院に就職、内科勤務などを経て1年前からホスピス病棟で働く。現在は午前8時半から午後3時半までの勤務を基本に、午後4時半から午前1時までの準夜勤を月3~4回こなす。

「仕事が長引いても午後5時までに子どもを保育園に迎えにいける。準夜勤は夫が休みの土・日曜日にして世話を頼む。先輩や同僚も子どものいる人が多く気を使ってくれる。看護師の仕事は好きだしやりがいがある。出来ればもう1人産みたい」と話す。

石戸谷恵子さん(35)も5歳と1歳の女の子を育てている。外来で内視鏡などの検査介助を担当する。午前9時から午後4時の日勤が基本で、月2回は午後5時から翌朝8時半までの夜勤に入る。

「夫婦とも両親は近くにおらず、核家族でやれるか不安もあった。上司から制度の説明を受け、復帰セミナーなどで先輩の話を聞くうちに前向きになれた」と言う。

三方原病院がワークライフバランス(仕事と生活の調和)に取り組んだのは2007年。生死に関わる重篤な患者を診る超急性期病院ということもあり仕事はハード。離職率の高さが悩みだった。人材確保のため目指したのが、子どもを産んでも働き続けるのが当然の職場環境だ。

06年に開設した院内保育所は、08年から夜間対応も始めた。09年にはワークシェア制度を導入。6歳までの子を持つ看護師は、短時間勤務が可能で夜勤も月3回程度に抑えられる。シングルマザーなど夜勤が難しい場合は免除も可能だ。

一方で夜勤専門看護師を配置、仕事の合理化も図った。ベッド準備や清掃などは外部業者に委託し、看護補助者を増やして療養の世話などは任せた。

吉村総看護部長は「管理職の意識改革が一番難しかった」と振り返る。夜勤をこなし緊急時にいつでも対応できるのが「いい看護師」。それを子育てなどの制約があってもできる範囲で力を発揮してくれる看護師を一人前と認めるよう変える。「課長30人で徹底的に話し合い、時には個別に呼んで説得した」

この結果、15%近かった離職率は、13年度には7.9%に低下。子どもを持つ看護師は04年度の32%から、13年度は41%になった。しかも2人が14%から17%に、3人以上が6%から8%に増えた。

大阪府枚方市の急性期病院の佐藤病院は、看護師約150人の8割弱が子どもを持つ。約3割は6歳未満の子育て中だ。

10年にワークライフバランスの取り組みを始めた。最も力を入れたのが「定時に帰ろう運動」だ。高須久美子看護部長は「働く親が一番困るのは予期しない残業。約束も守れず不安になる。忙しくても定時に帰れれば子育てしやすい」と話す。

人員を標準より多く配置し、妊娠した看護師の急な体調の変化などにも対応する。時間帯や出勤日が選べる短時間正社員やフルタイムなど多様な働き方があり、配属先も選べる。1カ月前に申請すれば働き方の変更も可能だ。

「ママナースが大半だから子どもを言い訳にできない。24時間対応の院内保育所があり月2~3回は夜勤もこなしている。お互いさま精神で何かあれば助け合う。皆、忙しいと言っているけど明るいですよ」。高須部長は誇らしげに語る。1人当たりの残業は月1時間を切り、有給休暇取得率はほぼ100%だ。

日本看護協会は07年からワークライフバランスを推進している。松月みどり常任理事は「看護師は一人前になるのに3年はかかる。熟練したナースは経験知があり予測能力が高まる。患者や病院のためにもなる」と強調する。協会調査では子どものいる看護師は09年に51.9%だったが、13年は58.8%になった。

ただ、ママナースが活躍できるようワークライフバランスに取り組む病院はまだ少数。協会が09年に行った調査では、仕事と子育てを両立する上での困難として、時間のなさや体力的負担が上位を占めた。同じ悩みを抱える人はまだ多いと協会ではみる。

さらに、ママナースが増えるにつれて生じているのが夜勤問題。「当初は免除できても、数が増えるとママナース以外へしわ寄せが大きくなる。夜勤を月数回こなす代わりに、定時に帰れる体制を整えるなど先進病院の工夫を取り入れ、問題を大きくしない対策が必要」と松月常任理事。

看護職場の経験は、深刻な労働力不足が予想される一般企業でも参考になりそうだ。

(編集委員 岩田三代)