筋肉を鍛えれば「心配性」も改善する筋トレ最前線(2)

日経ヘルス

運動が心身の健康維持に必須であることはすでに常識だ。近年はその種類に関しても研究が進展。筋トレならではの効果が明らかに。「体」の若返り効果、生活習慣病の改善効果に加え、これまで有酸素運動の独壇場だった「心」すなわち「脳」の領域での効果も分かってきた。この記事では、筋トレの3大効果を2回に渡って紹介する。2回目の今回は慢性疾患の改善と脳の活性化を取り上げる。
【効果2】 慢性疾患を改善
腰痛の人の身体機能を改善コレステロールや血圧が低下

筋トレは慢性疾患の改善にも有効だ。

一つが慢性腰痛。43の試験結果をもとに各種運動療法の効果を分析した研究で、痛み緩和作用はストレッチなどに次ぐ第3位だったものの、身体機能の改善効果については最も優れると評価されている(図1)。

脂質代謝改善効果も明らかだ。“悪玉”のLDLコレステロール低下作用が、複数の研究で確認されている(図2)。

血圧低下にも効く。93の試験を分析した研究で、高血圧患者の血圧低下に関しては有酸素運動のほうに軍配が上がったが、高血圧“予備軍”に対してはアイソトニック運動(動的筋トレ)が最も効果があることが分かった。平均4mmHgの低下を見込めるという。

さらに筋肉への糖取り込みを増やしメタボの高血糖を改善する効果もある。ただし、糖尿病患者の血糖値改善には、有酸素運動と併用することが最も望ましいとされている。

図1 慢性腰痛に対する各種運動療法の効果の大きさを43の試験結果から分析。痛み緩和効果についてはストレッチが最も効果があったが、身体機能の改善効果は筋トレが最も大きく、次いでマッケンジー法などを含む「その他の運動療法」、ストレッチの順だった。(データ:Ann Intern Med,142,776-785,2005)
図2 肥満女性21人(平均年齢65.9歳)を、10種類の筋トレを8RMで3セット、週3回行う群と対照群に分けた。12週間後、筋トレ群は筋力が増強。BMIに変化はなかったものの、LDLコレステロールと、善玉のHDL以外のコレステロール濃度が低下した。(データ:Int J Sports Med;32,1,7-13,2011)

【効果3】 脳を活性化
抗不安作用で心配性を改善 高齢者の認知機能改善も

これまで有酸素運動がほぼ独占していた脳の領域に対する効果も、明らかになっている。

一つは、全般性不安障害(GAD)の改善効果。GADは日常のあらゆることを過剰に心配する不安障害で、女性に多い。筋トレによる寛解率は60%と、有酸素運動より高い効果があることが分かった(図3)。

筋トレには有酸素運動と同等の自尊感情を高める効果があり、これが不安緩和に役立っている可能性がある。筋トレ中は不安から注意がそれるとともに、運動後は筋緊張が緩む。これらも効果の一端を担うようだ。

高齢者にとってもメリットが大きい。認知機能の改善(図4)はじめ、抗うつ効果、不眠改善効果、転倒不安の緩和効果、気力を高める効果などを示す多くの研究が登場している。

高齢者は筋トレの継続により、筋力とともに脳の全体量も変化することから、筋トレ中に増える血中のIGF-1が脳に移行し、BDNF(脳由来神経栄養因子)などの成長因子を活性化する可能性が指摘されている。

図3 全般性不安障害の女性30人(18~37歳)を、筋トレ群、自転車こぎの有酸素運動群、対照群に分けた。週2回ペースで運動し、6週間後、症状の変化を調べた結果、運動群は両群とも心配性スコアが低下(グラフ)。寛解率は、筋トレ群60%、有酸素運動群40%だ。(データ:Psychother Psychosom,81,21-28,2012)
図4 65~75歳の女性155人を、週1回40分筋トレする群と週2回行う群、対照群に分け1年間継続。認知機能を調べた。画面に表示された色と、色の名前とが異なるケースを間違えずに回答するストループテストを行った結果、週1回群、週2回群とも同等に改善した。(データ:Arch Intern Med,170,2,170-178,2010)

(ライター 小林真美子)

[日経ヘルス2014年12月号の記事を基に再構成]

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