高級品を買うか手作りか お節、どうする
大枚が飛んでいく
マジか? 思わず耳を疑った。1セット3万~4万円する百貨店のお節を今年は2セット予約したと妻が言うからだ。すぐに飽きて毎年、残り物の処分に困ってたじゃないか。「だって子どもたちが結婚して、今度のお正月は2家族がそろうのよ」。妻の見栄(みえ)スイッチが入ったようだ。「10万~20万円の高級お節から売れていくんだって」
そう語る妻の横で、自分は「そんな無駄遣いを」と思いつつ怒りをのみ込む。結婚して30余年。「市販のお節は最低限にして、あとは普通の料理で」が暗黙のルールだったはず。だいたいお節は子どもがあまり手を付けないし、残飯処理係は私だし。百貨店・スーパーは正月も営業しているので、お節も本来の意味が薄れている。正月2日目の夕方あたりは、お茶漬けやカレーが恋しくなるじゃないか。
だが、この2年で子ども2人が相次ぎ結婚した。それは家族の結婚でもあり、途端に風向きが変わった。正月に実家に集う人数が増えるので、料理の量が増えるのはいい。しかしお節の格が明らかに上がっている。「あとはおいしいおすしとお鍋もいるわね」と妻は自然体を失い、暴走状態だ。おいおい、俺のカネだぜ。ついでに高級な胃薬も忘れずにな。
■ダンナに頼むか……
「黒豆はマメに暮らせるようにでしょう? じゃあレンコンはなんであるの?」。子どもにお節の由来を聞かれて思わず考える。「えっと、穴が開いててほら、先の見通しが明るい、だったよね?」。自分の答えに自信がなく、質問に質問で返す。
我が家では元日の朝はお雑煮だけ自宅で食べる。お昼はスープの冷めない距離にある実家に移動し、お節を食べさせてもらう。専業主婦の母は私が物心ついたころから、年末は通常の家事や大掃除と並行して徹夜をするかの勢いで、大量のお節を作る。
その様子を見ていたので、お節のいわれは一応知っている。だが私は一度も作ったことがない。12月下旬はクリスマス関連のイベントがあり、28~30日あたりも仕事だったりしてヘトヘト。職場と自宅の大掃除で時間切れだ。
しかも私も子どもも、お節がさほど好きではないから、作る意欲がわかない。子どもたちに日本の風習を教えるのはもっぱら私の母だ。
でも母も年齢を重ね、お節を作るのが大変になってきた。私が受け継ぐべきかと気持ちが重くなったが、年越しや正月の準備は一家の家長が取り仕切るのが古来からのいわれらしい。今年は夫にやってもらおうかしら。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。