スタバがないのは何区、ツタヤは? 23区面白データ
知っているようで知らない東京23区。カフェやファミリーレストラン、ファストフード店が多いのはどこの区か。今回はサービス業中心に、具体的なデータをみていこう。
そば・うどん店多い港区 バーは中央区
まずは全体像から。総務省「経済センサス」(2012年)によると、23区の中で会社(事業所)の数が最も多いのは中央区。その3年前の前回調査(09年)で1位だった港区を抜いた。東京都によると、勝どきや晴海などのオフィス開発が影響したという。3位には新宿区が入り、初めて都心3区(中央・港・千代田)の牙城を崩した。
中身をみると、どの区にどんな業種が集まっているかはっきり色分けできる。製造業が多いのが大田・足立・墨田区。卸・小売業が多いのが中央・台東・千代田区だ。
飲食店はどうか。そば・うどん店は港・千代田・新宿区の順に多かった。すし店は築地のある中央区と港区が群を抜く。
酒場・ビアホールは新宿・港・中央区と続いたが、これがバー・キャバレー・ナイトクラブになると中央区が1位に躍り出た。やはり銀座のバーは強いのか。
スタバは港区、ドトールは千代田区が断トツ
では、個別の店でみてみよう。各社のホームページに載っている情報を基に、ランキングを作成してみた。データは8月11日時点。
まずはカフェから。スターバックス(スタバ)は港区と千代田区が多い。タリーズは港区が頭1つ抜け、新宿区、千代田区が続いた。価格帯やイメージが近いせいか、上位には同じような顔ぶれが並んだ。
出店戦略の違いがやや目立つのが文京区と目黒区。スタバではどちらも7店あるが、タリーズは文京区に1店、目黒区には店がない。スタバは文京区では東京ドーム周辺と東京大学周辺に集中的に出店している。目黒区では自由が丘や中目黒など東急線沿線に多い。
一方、ドトールコーヒーの場合は港区が4位に後退し、千代田区が断トツ。ドトールは「昔からのオフィス街」に多い印象があるが、データからも裏付けられた。
表は載せていないが、喫茶室ルノアールは新宿区が21店と最も多く、2位が中央区で10店、3位が港・千代田区で8店だった。
ちなみにドトールは23区全てに店があるが、スタバは荒川区と江戸川区に店がない。タリーズは江戸川区など5区にない。立地からもチェーンの性格が透けて見える。
スタバ空白地帯といえば鳥取県が有名で、47都道府県中、唯一スタバが存在しない。県知事が「スタバはないが砂場はある」などと発言したことでも話題となった。スタバは来年にも鳥取県内への出店を検討中と伝えられており、都道府県レベルでは空白が解消される。23区内の空白はどうだろうか。
マクドナルドは足立区に多い モスは板橋
次はファストフードチェーン。やはり繁華街に多いのか、と予想していたらそうでもなかった。マクドナルドは足立区が最多で21店舗、世田谷・新宿・江戸川区が17店舗で2位と続いた。最も少ないのは目黒区で5店舗だった。
なぜ足立区が1位なのか。東京23区研究所(東京都渋谷区)は「人口が多いから」と分析する。同研究所が今から4年前(10年2月)に調べた際、マクドナルドの店舗が最も多かったのは新宿区で、2位が足立・大田・世田谷区だった。新宿区を除き、人口ランキングで5位に入る区が軒並み上位にきている。新宿区は人口は23区のちょうど真ん中ぐらいだが、昼間人口は5位内に入る。
モスバーガーはどうか。1位は板橋区だった。品川・新宿区が2位で続く。こちらもどうして板橋区? 実は、板橋区はモスバーガー創業の地でもあるのだ。
モスバーガーが生まれたのは1972年。板橋区成増に1号店を構えた。現在、成増店がある場所だ。でもなぜ成増だったのか。
板橋区成増には東京・池袋と埼玉県の和光市、川越市などを結ぶ東武東上線の駅がある。創業者の桜田慧氏は当時和光市に住んでいた。証券会社を辞めて起業した桜田氏がたまたま見つけた物件が、成増駅近くにあるショッピングセンターの地下だったという。成増に店を構えたのは全くの偶然だった。このあたりの事情は、「マクドナルドに幻の1号店 外食発祥の地を歩く」に詳しく書いた。
牛丼チェーンは創業地に多い傾向 荒川区には少ない
牛丼店の場合は、チェーンによって大きく分かれた。松屋が多いのは新宿・豊島・世田谷区。すき家は大田・江東・品川区、吉野家は中央・港・足立区と、全く重ならなかった。不思議といえば不思議だ。荒川区だけは3社とも共通して少なかった。
創業の地と関係があるのだろうか。松屋の1号店は練馬区の江古田駅(西武池袋線)北側にある。1位の新宿区と近いことは近い。練馬区はすき家と吉野家では23区中下位に位置しているが、松屋では5位と健闘していることからも、松屋にとって練馬区が「特別な区」だと推察できる。
一方、すき家の1号店は横浜市の生麦(鶴見区)。すき家が最も多い大田区と近いといえなくもない。吉野家は日本橋の魚市場の中で誕生した。現在、築地市場内にある店舗にその面影が残る。吉野家も、一番多いのは創業の地を含む中央区だった。
ファミレスは足立・世田谷・新宿区に多い
ファミリーレストランは各チェーンともおおむね同じような傾向となった。中でも目立つのは足立区の多さ。マクドナルドと同様、人口の多さが影響したのだろうか。世田谷区や新宿区も多い。表は載せていないがロイヤルホストも最多は世田谷区で2位が新宿区だった。
意外だったのは、各社とも空白区が少ないこと。サイゼリヤとデニーズは23区すべてに店を構え、ガストは品川区だけ店がなかった。ただし小型店「Sガスト」は品川区にもあった。23区内の店舗数が少ないロイヤルホストも、ないのは北・品川・荒川区だけだった。カフェチェーンでは空白区がかなりみられたが、ファミレスはまんべんなく出店していることがわかる。
理容店は足立区、美容店は世田谷区
そのほかのチェーンも調べてみた。ツタヤのレンタルショップは世田谷区が最多。最も少なかったのは千代田区で、書店「ツタヤブックストア」が有楽町マルイ(有楽町)にあるが、レンタルショップはない。ブックオフも世田谷区に多い。下位に中央区や千代田区が並ぶのをみると、やはり人口が大きく影響しているようだ。
ユニクロは大田区が7店舗とトップ。渋谷・新宿・世田谷・豊島区が6店舗で続く。最も少ないのは荒川・中野・文京区で1店舗だ。23区すべてに店舗があった。
ヤマダ電機は練馬区が4店舗で最多となり、江東区の3店が続いた。
個別の店ではないが、学習塾は練馬区が最も多く、世田谷区、杉並区と続いた。理容店は足立・江戸川・大田区の順。これに対して美容店は世田谷・渋谷・大田区となった。病院は足立・板橋・大田区に多く、歯科診療所は世田谷・大田・港区が上位となった。
細かくみていくと、意外に違いが浮き彫りとなるチェーン店の出店戦略。そこには店舗の歴史と地域の事情が色濃く反映されている。(河尻定)
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