
一方、CDのセールスからは、ストリーミングとは異なるヒット現象が見えてくる。まず、CDシングルでは、20年7月に急逝した三浦春馬のダンスチューン『Night Diver』が26万枚で1位に。2位と3位には、17万枚の米津玄師『Pale Blue』と、13万枚の星野源『不思議/創造』が入った。星野源は、10年のソロデビュー後、俳優業と並行して音楽活動を行っており、大ヒット曲『恋』を収録したアルバム『POP VIRUS』(18年)は累計40万枚以上を売り上げる。
また、声優が演じるアニメキャラクターの男性シンガーもランクイン。ゲームやアニメなどを展開する『うたの☆プリンスさまっ♪』の登場人物である、男子アイドルグループ・QUARTET NIGHTのメンバーのソロ作品が16位、17位、20位に入った。
藤井風はCDでも強さ

CDアルバムでは、米津玄師に続き、2位木村拓哉、3位宮本浩次、4位福山雅治らトップスターが並ぶなかで、デビュー2年目の藤井風が5位に入った。
独自のグルーヴを持つピアノの弾き語りカバー動画が話題となり、ミュージシャンや音楽プロデューサーなどが絶賛。アルバム『HELP EVER HURT NEVER』は1年以上のロングヒットを重ねて12万枚に到達した。これは、前述のストリーミングが突出している他の若手男性シンガーには見られない現象だ。今年に入って、ドラマ主題歌『旅路』や、CMソング『きらり』がストリーミングでヒットし始め、お茶の間にも知られる存在となっている。
なお、7位にころん、14位にジェルと、6人組のエンタメユニット!すとぷりのメンバーのソロアルバムがランクイン。動画配信サイトから活動を始めた彼らは、現在も頻繁に生配信を行うなど、ファンとのエンゲージメントが高く、CDセールスが突出している。
以上のように、現在の音楽界ではTikTokをきっかけに多くの男性シンガーの曲がストリーミングでヒットする流れが生まれていることが分かる。今後は彼ら自身にも人気が根付くために、ライブやCDといった他のヒット要素がどう関わってくるかに注目だ。
(ライター 臼井孝)
[日経エンタテインメント! 2021年9月号の記事を再構成]