こんなはずでは…40代「心の危機」への正しい対処法

日経ウーマンオンライン

「ミッドライフクライシス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本語に訳すと「中年の危機」です。これは、さまざまなきっかけでそれまでの価値観がひっくり返り、その後の生き方を問い直すことになる、人生の分岐点です。その分岐点に立った時、どんな風景が見え、どう心が動くのか――。中年まで時間がある人にこそ知って欲しいミッドライフクライシスについて、その乗り越え方を含めてナビゲートします。

40歳は、見えていなかった人生の影が見える時期

自分の歩いてきた道を振り返り、「こんなはずではなかった」「これでよかったのだろうか」……そんなふうに感じたことはありませんか。

今まさにそう感じている人は、ミッドライフクライシスを迎えつつあるのかもしれません。

一般的に、40歳から60歳くらいまでを中年期と呼びます。心理学者のユングは、中年期を「人生の正午」と名付けました。つまり、人生のちょうど真ん中、折り返し地点というわけです。

40歳といえば、職場ではベテランとして能力を発揮したり、管理職として部下や後輩を指導する立場です。仕事人としてまさに「脂が乗った」年代と言えるでしょう。

プライベートでも恋愛や結婚、出産などを経験し、「大人」とみなされる年頃です。人は、こうして仕事やプライベートでさまざまな経験を積むことで、自分なりの価値観や生き方を確立していくもの。しかし、悩みがまったくないわけではありません。

大人の発達臨床心理学を専門に研究する広島大学教授の岡本祐子さんは、「中年から先は、それまでとまったく違う地平が広がっている」と言います。

「分別をわきまえ、成熟した大人とみなされる中年期ですが、その内面には、深刻な問題が潜んでいる可能性があります。それらと向き合わざるを得ないのが、ミッドライフクライシスなのです。ユングも言っているように、人生の前半は午前中の勢いある太陽の光のような、強い光に目がいきがち。しかし、正午を過ぎ、太陽が傾き始めると日の光は弱まり、影の部分に目がいくようになります。つまり、中年期にはそれまで見えていなかった部分が見えるようになり、アイデンティティが揺らぎ始めるのです」

アイデンティティとは、「これが自分である」と感じるもののこと。例えば、「仕事をしている私が一番私らしい」と感じる人なら「仕事人としての私」が、「子どものためにおいしい料理を作っているのが私らしい」という人なら、「母親としての私」がアイデンティティと言えるでしょう。

ただし、アイデンティティは一つではなく、「△△社の社員としての私」「趣味のスキーに没頭しているスキーヤーとしての私」「母親・妻・娘としての私」と、人の中にはさまざまなアイデンティティがあります。つまり、アイデンティティは、その人の価値観そのもの。そうした「これが私」と信じていた自己像や価値観が揺らぐのが、ミッドライフクライシスだと岡本さんは言います。