――アルマーニのものづくりの哲学にも引かれるのですね。
「『ジャンフランコ・フェレ』や『ヴェルサーチェ』など他の著名ブランドが次世代のデザイナーに引き継がれていくなかで、アルマーニはいまだに現役です。その彼が1990年代にインタビューで『PRはしない、広告しか出さない』と言った。しびれました。この言葉で僕はアルマーニが好きになったんです」

「当時の日本ではマーケティングブームが起こり、(メディアを媒介として情報発信する)PRが称賛されていました。低コストで第三者が宣伝をしてくれる、広告効果が高いものだというわけです。でも、アルマーニは(自らが直接、情報発信する)広告に徹した。なぜなら『自分の世界は自分でしか表現できない』から。なるほど、ブランドは人にこびないんだな。おもねらないんだな。その服を着る行為は、アルマーニが提案する世界の一員になることなんだ、と分かったんです。僕の考えと一致しました」
服づくりの「目線」に関心
――ブランドの背景にあるストーリーを知ると、愛着がわくだけでなく、多くの気づきも得られますね。
「アンダーアーマーのコンセプトは実は、シャネルと似ているんです」
――シャネルにも、ご興味があるのですか。
「服を着ることはできませんが、大好きなブランドです。ココ・シャネルが世に出る前、デザイナーといえばほとんどが男性で、男目線で女性の服をデザインしていました。シャネルはそうした『男性が女性に着てほしい服』から女性を解放しました。水兵のセーターに使われていたジャージーを女性の服に取り入れて、動きやすい、新しいエレガンスを生み出しました。女性のためのスポーツウエアを最初に作ったのもシャネルです。シャネルは女性目線で女性の望みをかなえる服を明確に作っています。ツイードジャケットは腕を動かしやすい。機能美もあるところが興味深いです」

「アンダーアーマーの創業者で会長のケビン・プランクはアメリカンフットボールの選手でした。彼はアスリートの目線でアスリートにとって快適なウエア、パフォーマンスが上がるウエアを追究しています。そこがシャネルと共鳴するんです。僕も学生時代にアメフトをやり、ケビンとライフスタイルや価値観がよく似ています。アンダーアーマーに魅せられてからはケビンの代弁者として、このブランドをきちんと日本に根付かせたいと奮闘しているわけです」

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