2021/9/11
蛍光色素で染色したTriantha occidentalisの毛のクローズアップ写真。この粘着性のある毛で小さな虫を捕らえて殺す(PHOTOGRAPH BY QIANSHI LIN)

食虫植物のわなは花のそばにあることが多いが、今回のTriantha occidentalisのように、違う場合もある。そう述べるのは、オーストラリアのカーティン大学で食虫植物を研究する生態学者、アダム・クロス氏だ。なお、同氏は今回の論文には関わっていない。リン氏が言うには、花粉媒介者になりうる昆虫を捕食することは非生産的に思えるかもしれないが、Triantha occidentalisが捕らえるのはハチのような大きな花粉媒介者ではなく、小さなアリやハエがほとんどだということが今回の研究でわかった。

ドイツの植物標本室・研究センター「Botanische Staatssammlung Munchen」の科学者アンドレアス・フライシュマン氏は、この植物を単に「肉食」とみなすだけでは、潜在的な性質を見落とす可能性があると言う。棒状の毛には花粉を媒介しない昆虫が花の中に入るのを防ぐ機能もあるようなので、「防御的な殺し」と表現する方が適切かもしれないと、同氏は話す。

「私の考えでは、植物の食虫性については、昆虫を消化するかどうかよりも、獲物を引き付けることが重要な基準です」。同氏は、Triantha occidentalisの毛が昆虫を引き付けているかどうかについては、確信を持てないと言う。なお、同氏は今回の論文には関わっていない。

植物の秘密に迫る

植物が食虫性を持つことを証明するのは想像以上に難しい。リン氏はまず、飼育しているミバエ150匹に、窒素15を含む培地を与えて取り込ませた。窒素15は窒素の安定同位体で、これを使えば動物から植物への栄養分の移動を追跡できる。

その後、ブリティッシュ・コロンビア州の沼地に自生する25本のTriantha occidentalisの花茎にミバエを付着させた。数週間後、これらのTriantha occidentalisを収穫し、化学物質を分析した。その結果、葉の中に窒素15が含まれていること、つまりハエからの栄養分が植物に吸収されていることが判明した。正確には、この植物の窒素の64%がハエからのものだった。

また、粘着性のある毛を調べたところ、他の食虫植物に見られる酵素であるホスファターゼが分泌されていることがわかった。ホスファターゼには、組織から植物にとって重要な栄養素であるリンを分解する働きがある。

今回の発見が示しているのは、よく知られている種についても、植物学者がまだ発見していないことが数多くあるということだ。

「このような隠れた食虫植物を発見するためには、鋭い観察力を備えた植物学者の存在が必要です」。マレーシア国立大学の植物研究者で、今回の論文には関与していないホーハン・ゴー氏はそう語る。

リン氏も同意見だ。「知られざる食虫植物が、世の中にはもっとあるということです」(文 DOUGLAS MAIN、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年8月19日付]

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